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小笠原のクリスマス

2017年12月29日 15:00

 気づけばもう12月も後半、私の小笠原生活もあと3カ月ほどとなりました。そして次回の上京休暇はおがさわら丸のドック期間(1月下旬から2月上旬にかけてで、この間3週間、おがさわら丸は小笠原諸島にやってこない)に取れることになりました。そのため、そろそろ「診療所で私と会うのはこれが最後」な方も出てきていると思います。例えば11月下旬から12月上旬に60日分の処方が出た患者さんは、次はドック期間(私が上京中)に受診となり、そこでまた60日処方が出たとすると、その次の受診は私が小笠原を引き揚げた後の、3月末から4月はじめ頃になるからです。

目次

  1. 水難続きだった2017年の小笠原
  2. 欠品が続いた10月
  3. 小笠原のクリスマス

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今年もいろいろありました。個人的に最も「衝撃的な大事件」はこれ。ある日、普段車を貸している人から、「ドアの取っ手が取れたんだけど!」という電話が...。取っ手が取れるなんて、今まで私は経験したこともないし、本当に衝撃だった。ところが取っ手が取れたのは車検通った後で、取っ手が取れてもなんとかドアは開けられる、3月で私は小笠原から出ていく、3月に車はこの普段貸している人に譲ることが決まっている、修理代が高い、単に面倒などの理由で今も修理せずそのまま。仕事は完璧主義を自称する私も、私生活は所詮こんなものである。

水難続きだった2017年の小笠原

 過ぎ行く2017年を、少し振り返ってみたいと思います。小笠原村では、2017年のニュースと言えば、やはり「記録的な水不足」でした。2016年の10月以降にまとまった雨が降らず、ダムの貯水率が日に日に低下、一番少ないときで20%を割り込みました。毎朝防災無線で島全体に「ダムの貯水率と昨日の水の使用量」が放送されます。診療所にも「節水」の紙が貼られ、嫌でも節水を意識させられます。毎日1%ずつダムの貯水率が減っていくのは、もはや恐怖以外の何物でもありません。風呂に入るのも、洗濯をするのにも気を使います。水不足といっても周囲は海で、いくらでも水がありそうなものですが、海水を真水に変える装置というのは、台数が限られるし稼働させるのはコストがかかるようで、この島での水の需要すべてを賄うのは到底無理なのです。

 幸いにして5月末ごろから梅雨入りし、50年に1度と言われる深刻な水不足は解消されました。すると今度はゲリラ豪雨のような大雨がやってきて、さらには8月と9月に台風が小笠原諸島を直撃、2017年の小笠原は水難続きだったと言えます。

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3年ぶりくらいに、島に居ながらにして朝から終日年休を取った。天気が良いと気持ちいい。宅急便を運送会社へ持って行って、そのまま少しドライブに出かけてみた。よく小笠原のガイドブックに載っている長崎展望台から、12月22日に撮影。展望台には珍しく誰もいなかった。荷物を担いで車に積んだりすると少々汗をかく。風は涼しいが、長袖と半袖の二枚を着てると、日中は少し動けばすぐ暑くなってくる。都内で言えば10月上旬くらいのイメージだろうか。全く12月という気がしない。

欠品が続いた10月

 診療所業務においては、アセトアミノフェンの供給不安などありましたが、今のところ風邪などの大きな流行はなく、年内は乗り切れそうです。以前少し紹介しましたが、診療所では自動在庫管理システムなど存在せず、補充時に出た空箱の数と「私が個別にやっている集計と予想」だけを頼りに発注しています。しかも納品は一週間に1回しかありません。

 このような状況で、2017年内に欠品を起こして「患者さんに後日診療所に薬を取りに来てもらうことになってしまった」のは7品目。不意の大量処方を予想できなかったり、また10月は専門診療と自分の上京が重なったり、在庫の減少を不注意で見逃したり。4年働いていても、まだまだ在庫管理には苦労させられ、患者さんに迷惑をかけてしまうことは、少々情けなくもあります。

 さすがに10月に立て続けに欠品を出したことを反省し、急いで過去1年分の処方箋を全て見直しました。もう一度「処方数の少ない薬」について、服用している患者を調べると、自分が知らない(把握していなかった)患者さんが数名出てくるわけです。さらに在庫目安も訂正しこれで大丈夫、と言いたいところですが、軟膏や点眼などの外用薬は予測が難しく、安心はできません。また、私が退職後に在庫管理をどうやって引き継いでいくか、問題は残っています。

小笠原のクリスマス

 さて、12月末と言うことで、クリスマスの話題を少し。この時期、おそらく世間の街はきれいなイルミネーションに彩られていることでしょう。小笠原でのクリスマスと言えば、サンタが(そりではなくおがさわら丸に乗って)クリスマスイブ前の入港で小笠原にやってきて、未就学の子供たちにプレゼントを配るイベントがあります。このイベントはもうかなり長く続いていて、小笠原のクリスマスの風物詩になっています。ちなみに過去2回、私の帰島時の便がサンタと同じだったことがあるのですが、船内では「誰がサンタなのか」はわかりませんでした。

 世間はクリスマスとはいえ、小笠原は晴れていれば日中はやや暑いし、昼間の気温は20度前後。なんだかあまりクリスマスや正月という気がしません。とはいえ、私の記事を一年間読んでいただいた読者の皆様、どうもありがとうございました。来年も引き上げまでの3カ月ですが、引き続きよろしくお願いいたします。

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こちらも12月22日の、二見湾の様子。生協や農協などの裏は公園になっていて、公園の隣はすぐにビーチとなっている。町の真ん中にあるこのビーチにも、ウミガメが産卵にやってくることがある。いくら町に近いとはいえ、さすがに平日の昼間、おがさわら丸が出航中ということもあってか、この日ビーチの人影はまばらだった。ちなみにクリスマスが近づくと、二見港近くのガジュマルの木がライトアップされる。とはいえ日中はこの通りであり、全く12月という気がしない。さらにクリスマス頃には、職員住宅の自治会費後期6カ月分の支払いと職員住宅周辺の草刈りという、逃亡が許されない「二大イベント」が待ち構えているのである。

【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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