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小笠原でもインフルエンザ流行!

2018年02月20日 10:00

 早いもので2018年も2月になりました。先月は私が小笠原諸島へ来て5回目の正月、時間が経つのがとても早く感じます。10月に一度上京したとき、地元の友人と「小笠原を引き上げた後の3月末に、五島列島の福江島へ釣りに行こう」と話していました。その時はだいぶ先のことだと思っていたのですが、このぶんだと3月なんてすぐ来てしまいそうです。今年最初の記事、ということで今回はこの時期特有の業務や感染症動向などを紹介したいと思います。

目次

  1. 新年早々に発注業務に悩まされる
  2. インフルエンザの大流行

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新春特別企画!伊豆諸島から先、小笠原諸島までの間にはいくつか島や岩があるので、今回はそれらを紹介。通常なら、おがさわら丸は夜間に近海を通りこれらの島を見ることはできないので、かなり貴重な写真。なお、撮影は全て2016年5月。まずこの写真の岩はベヨネース列岩。八丈島の南に青ヶ島があり、そのさらに南にあるのがこれ。一見ただの岩だが、しっかりと日本地図にも載っている。周囲には海底火山が多く、この岩も海底火山の一部なのだそう。

新年早々に発注業務に悩まされる

 小笠原村は元旦が海開き。年末年始は多数の観光客が来島しました。正月が終わると、島はドック期間が近づくために準備で忙しくなります。ドック期間は、3週間に渡りおがさわら丸がやってこないので、食品など生活物資や医薬品などは、普段より多めに確保しておかねばなりません。このあたりの事情は昨年の記事『「忙しい年末年始」? 否、やばいのは「ドック期間」』を見ていただければ理解できるかと思います。ただ、今年は少々勝手が異なります。次回の私の休暇は、おがさわら丸ドック期間中と重なってしまったのです。この間の発注業務などはできない、言い換えればドック期間がさらに1週間余分にあるようなものなのです。

 今年のドック期間は、1月19日のおがさわら丸父島入港から、2月8日父島入港までの3週間になります。また、この期間に貨物船共勝丸が一回小笠原へやってきて、この期間に限り郵便物も運んでくれます。しかしながら共勝丸はチルド品は載らないし、海況不良(冬場は海が荒れることが多い)で予定通りに運航できない場合も多いです。父島着が遅れて、共勝丸入港の次の日がドック期間を終えたおがさわら丸の入港日、ということもありました。この共勝丸に載せるように発注するには、私が東京へ出発する日に発注していけばよいのですが、2月8日のおがさわら丸入港で入荷するように発注することはできません。

 もちろん今回に限らず、私の不在中は調剤担当の看護師さんが業務をしてくれていて、緊急に足りなくなったものは発注してもらうようにしています。しかし本来の看護師さんの業務ではないため、あまり高度な在庫管理を要求することはできません。よって基本的には1月19日から(2月8日の次に入港する)2月14日まで、納品無しで乗り切る前提で在庫計画を立てる必要があります。ところが、カレンダーを見ればわかるとおり、間の悪いことに2月12日が祝日(つまり卸さんは休み)です。おがさわら丸が2月8日の午前11時に父島入港したら、船旅の疲れをとる暇もなく、私は診療所へ行って早急に発注業務をこなさないといけません。でないと、14日の入荷にすら間に合わなくなります。

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ベヨネース列岩の50kmほど南にあるのが須美寿島。これも海底火山のカルデラの外縁部にあたるそう。標高は130mほど。西から見ると一見大きな島に見えるのだが、実は南北方向に細長い「ハリボテ」である。船が難破したり座礁したりして海に投げ出されて、たどり着いた陸地がこの島だったとしたら、生きていける気がしない。

インフルエンザの大流行

 この冬、もう1つ厄介な問題があります。年末あたりから島内でインフルエンザが大流行しています。年明けから定期受診に加え、風邪などの受診者が急増、連日外来は1時間以上延長です。インフルエンザや風邪の場合、感染防止の観点から、待合室とは別の場所で患者さんに待ってもらいます。そこへ薬局担当者が薬を持っていくと同時に会計もして、イナビルが処方された場合はその場で吸ってもらうことになるので、どうしても時間がかかります。イナビルは120人分くらい備蓄していたのですが、1月前半でほぼ半減しました。風邪などの場合にも処方される、メジコン錠やムコダイン錠などは、年明け後1週間あたり処方数は平時の4~5倍、毎週1,000錠を大きく超えています。

 このような状況の上、さらに手違いで1月7日入港で入荷予定の医薬品が次回入港まで受け取れなかったため、年末から1月15日まで納品なしで乗り切るはめになってしまうなど、年明け以降は、例年になく忙しい上にバタバタしていて気付けば夕方、という毎日が続いています。

 それでも、常日頃から「3週間無補給で乗り切れる程度」の量を在庫目安と考えていたため、また、年末年始は外来休診なこともあって、これだけ風邪やインフルエンザが流行しても、今回は医薬品の在庫管理面で問題は発生しませんでした。これがもし、まだ私が小笠原へ来たばかりで勝手がわからない状態だったとしたら、欠品続出で大変なことになっていたのは確実です。

 イナビルは先ほども書いた通り、目安は120人分ということにしていますが、昨年も一昨年もインフルエンザは流行せず、備蓄されているイナビルの箱を見るたび、正直「こんなにも備蓄する必要があったのか?」と疑問に思い始めていました。しかしこれだけの備蓄があったからこそ、年末から1月前半をうまく乗り切れたわけで、備えあれば憂いなしというのを実感しました。例年は2月上旬、おがさわら丸のドック期間が終わった頃から島内でインフルエンザが流行しはじめます。インフルエンザとの戦いは、まだまだ続きそうです。

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須美寿島のさらに110kmほど南にあるのが鳥島。現在は無人島だが、明治時代には居住者がいたこともある。島は火山島でこれまでに何度も噴火しているが、アホウドリの島としても有名である。島の外観を見ると、大自然のすごさが実感できる。写真左側、島の中腹にある建物が気象観測所跡。ちょうどこの島が竹芝と父島の中間地点にあたり、朝におがさわら丸の船内で「中間地点にあたる鳥島沖を何時に通過し、この後何時に目的地の父島(あるいは竹芝桟橋)到着予定です」といった放送が入る。このようにおがさわら丸に乗る人はみんな知っている鳥島だが、実際見たことある人は意外と少ないのではないだろうか。

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鳥島のさらに76km南にあるのが孀婦岩。こちらも海底火山の一部となっている。(写真では比較するものが無く実感しにくいが)高さ100mもある。周囲に何もないところに、いきなりこのような岩が存在することは、神秘的ですらある。見る角度によっては女性像に見えるため、孀婦岩という名前になっているとのことである。
これらを撮影したときは、先代おがさわら丸引退記念で、特別に竹芝を夜に出発し、これらの島々の沖を昼間に通過して翌日早朝に父島に着く便が設定された。私はこれらの島を見るためだけに「逆1航海」で上京した(25時間かけて行って、都内滞在は午後4時ごろから翌日午後9時ごろまで)。かなりの強行軍だったが、今思えば無理してでも見に行って良かった。

【コラムコンセプト】
僻地や離島の薬剤師業務って、給料は高いだろうけど、周りに何にもない不便な所で大変そうなイメージがある。それに不便な地で「生活」もしていかなければいけないから結構な覚悟が必要そうだ。......けど実際のところはどうなの?そんな興味と疑問を併せ持つ薬剤師のために、日本で最も行きにくい離島で働く薬剤師が送るコラム連載。良い面悪い面全てを含め、離島におけるありのままの薬剤師業務や生活を、面白おかしくお伝えしていけたらと考える。堅苦しい薬の記事の合間にここを読めば、「私は都会でないと無理だ...」と思っている人も、(保証はできないが)案外すんなり僻地でもやっていけるかもしれない。

【小西良典氏 プロフィール】cfe16ed4007e8fd8d26248d6a2afad043c7a3e9f.jpg
大学卒業後薬学部ではなく理学部の大学院に進学。博士課程を中退。その後、ドラッグストアなどで働きながら全国を旅する生活を続けて8年あまりのある日、旅行先の小笠原村が薬剤師を募集していることを知り、勢いで出願。見事採用され、以後、父島の診療所に勤務。旅行経験から、全国どこの街でも道に迷わない自信がある。趣味は工作、パソコン、料理、ロシア語など多数。最近は、毎日録画をしている昼の映画や海外ドラマを片付けるだけで週末が終わっていく。

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