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No.4 検査値で分かる 減量・中止基準、 相互作用に注意!

2018年02月23日 16:45

京都大学医学部附属病院薬剤部
寺尾真琴

がんの治療は、今では外来化学療法が主流です。処方せんに記載された臨床検査値は、抗がん薬の投与量や減量・中止を考慮する上でも重要な情報源です。臨床検査値の読み解き方をお伝えするシリーズ第4弾は、人工弁置換術の既往があり、胃がん術後補助化学療法を開始した患者さんのお話です。それぞれの疾患に対する治療薬の相互作用にも注意が必要です!

No.4 検査値で分かる 減量・中止基準、 相互作用に注意!

弁膜症で人工弁置換術の既往がある胃がん術後の患者さん
胃がん術後補助化学療法中
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合OD錠(S-1)
今回は心臓血管外科からの処方せん〈70歳男性〉

心臓血管外科での定期処方薬と胃がん術後補助化学療法としてS-1を服用している患者さん。注目すべきポイントはなんでしょうか。

※検査項目、基準値、単位については、京都大学医学部附属病院薬剤部「院外処方せんに記載されている検査値一覧表」をご参照ください。

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この3人が登場します。(マンガ:英賀千尋)

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検査値で分かる減量・中止基準に注意

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S-1は体表面積毎に投与量が異なります。処方せんに体表面積が記載されていない場合は、処方せんを受け取る時に身長・体重を確認する必要があります。

S-1投与量

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前回処方薬との相互作用、確認を忘れずに

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腎機能低下患者においては、腎排泄型であるギメラシルのクリアランスが低下するため、血中5-FU濃度が上昇し、骨髄抑制などの副作用が強く現れる可能性があります。腎機能に基づく減量・中止基準に要注意です。

腎機能に基づくS-1適正使用の目安

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S-1とワルファリンの相互作用の機序は不明ですが、ワルファリンの作用を増強することがあるため、凝固能の変動に要注意です。

服薬中に注意を要する症状、確実なフォローを

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ワルファリンが効きすぎた場合の症状として、青あざや黒色便、歯ぐきからの出血などを認めることがあるため、これらの症状の有無を観察するように患者さんに説明する必要があります。

S-1は悪心嘔吐リスクが軽度に分類される薬剤ですが、S-1による悪心や食欲不振出現時においては、食事摂取量の低下によりワルファリンの効果が増強する可能性があります。抗がん薬治療中にワルファリンを併用する場合は、食事摂取量の確認も大切なポイントになります。

患者・処方医との情報共有を密にしてより良い治療を目指そう!

心臓血管外科の処方医は、これまでCさんの経過に問題がなかったため、前医での処方を継続していました。そして、CさんがS-1を開始していたことを把握できていませんでした。疑義照会の結果、ワルファリンを3mgから2.5mgに減量し、次回診察時の検査で改めて経過を観察することになりました。

Cさんは内心、胃がんの再発への不安で気持ちが沈んでしまって、胃がんの治療を受けていることを極力話さないように努めていたようです。後日、キョウコはCさんからの電話で相談に応じ、「もし気持ちの落ち込みが強いようなら、消化器外科の主治医に私からも相談できますから、遠慮なくおっしゃってくださいね」と伝えました。

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今回のおさらい

  • S-1は体表面積ごとに投与量が異なる上、腎機能に応じた用量調節が必要
  • 受診日が異なる他診療科からの処方せんは、薬歴を確認する際に既に処方されている薬との相互作用に要注意
  • 十分な注意を払う上では、患者さんに気を付けるべき症状を把握してもらい、経過をフォローすることが重要。気づいたことは処方医にフィードバックする
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