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HPVワクチン接種によるものとされた"24症状"とHPVワクチン接種には関連性がない

Papillomavirus Researchにアクセプトされた名古屋市子宮頸がん予防接種調査結果

2018年03月05日 11:15

2015年に7万人超を対象に実施された名古屋市子宮頸がん予防接種調査について、名古屋市立大学公衆衛生学分野教授の鈴木貞夫氏らがまとめた最終結果が、International Papillomavirus Societyの公式雑誌Papillomavirus Researchにアクセプトされ、論文原稿が2月23日から公開されている。それによると、HPVワクチン被害者連絡会や一部の医師から接種後症状であると指摘され、メディアでも報じられた"24症状"とHPVワクチン接種との間には関連性が認められなかったとのこと。以下に、同論文が示した主な解析結果を紹介する。

名古屋市在住の14〜21歳女性7万人超を対象にした大規模調査

調査の発端は、2015年1月9日、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会愛知支部が、名古屋市長にHPVワクチン接種後症状の調査を要望したことである。要望を受けて名古屋市および名古屋市立大学は、HPVワクチンと接種後症状の関連性を検討すべく、大規模な全例調査の実施に踏み切った。

対象は、2015年8月12日時点で名古屋市に住民票のある中学3年生から大学3年生相当(1994年4月2日〜2001年4月1日生まれ)の若年女性だ。

2015年9月1日に、調査対象に該当する7万1,177人に調査票を郵送。無記名で回答を求め、2015年11月2日までに返送されたものについて評価した。

調査項目は次の通り。

回答者(本人、本人が保護者に相談して記入、保護者)

次の24症状に関する経験の有無(小学校6年生から調査時点まで)

24症状:月経不順、月経量の異常、関節や身体が痛む、ひどく頭が痛い、身体がだるい、すぐ疲れる、集中できない、視野の異常(暗くなる・狭くなるなど)、光を異常にまぶしく感じる、視力が急に低下した、めまいがする、足が冷たい、なかなか眠れない、異常に長く寝てしまう、皮膚が荒れてきた(湿疹・イボなど)、過呼吸、物覚えが悪くなった、簡単な計算ができなくなった、簡単な漢字が思い出せなくなった、身体が自分の意思に反して動く、普通に歩けなくなった、杖や車いすが必要になった、突然力が抜ける、手や足に力が入らない

上記の症状を経験したと回答した人には、症状の発現時期、症状を理由とした病院受診の有無、症状の頻度(「いつもある」「ときどきある」「ほとんどない」「ない」の4段階)を問うとともに、学校での勉学への影響の有無(「ある」と回答した人には、欠席、遅刻、早退の頻度と原因となった症状)、勉学以外の活動への影響の有無と影響した症状、就職・就業への影響の有無を尋ねた。

また、小学校6年生以降におけるワクチン接種の有無(HPV、日本脳炎、ジフテリア・破傷風混合(DT)、麻しん、インフルエンザ)と接種時期、HPVワクチンを接種した人には、接種したワクチンが2価ワクチンか4価ワクチンかを尋ねた。HPVワクチンは3回の接種が必要だが、完遂できなかった場合にはその理由(「思っていたより注射が痛かったから」「受けた後に副反応が出たから」「副反応の報道を見て心配になったから」「その他」、複数回答可)を尋ねた。

※同調査の質問票(見本)は、名古屋市健康福祉局のホームページで閲覧可能(PDF

主要アウトカムは、HPVワクチン接種の有無と24症状発現リスクについて、年齢調整後のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)によって関連性を明らかにすること。

また、HPVワクチン接種との潜在的な関連性として、症状による病院の受診、調査時点における症状の状況(症状の頻度に「いつもある」と回答したもの)、学校生活や就業などへの影響についても検討がなされた。それに加えて、HPVワクチン接種により多様な症状が発現するとも言われたことから、複数の症状の発現リスクについても検討されている。

主解析、サブグループ解析ともHPVワクチン接種と24症状の発現に関連なし

全調査対象者7万1,177人に調査票が郵送され、このうち217通が不通で返送された。郵送済み7万960人のうち3万793人が回答、うち947人はHPVワクチン接種の有無や年齢に関するデータ欠損により除外、残る2万9,846件が解析対象とされた。

HPVワクチン接種の有無と24症状の発現状況によると、HPVワクチン接種の有無にかかわらず発現頻度が高かった症状は「月経不順(接種あり26.5%、接種なし25.6%、合計26.3%)」、次いで「足が冷たい(同順に12.2%、12.7%、12.3%)」であった。「ひどい頭痛」「身体がだるい」「すぐ疲れる」「めまいがする」「異常に長く寝てしまう」「皮膚が荒れてきた」の6症状は全解析対象者の10%強に見られる一方、「単純な計算ができなくなった」「身体が自分の意思に反して動く」「普通に歩けなくなった」「杖や車いすが必要になった」の4症状が見られたのは1.0%未満であった。

主要アウトカムである年齢調整後の24症状の発現ならびにHPVワクチン接種と潜在的な関連性が考えられる病院の受診、持続的な症状に関する結果はの通り。

HPVワクチン接種によって、被害者連絡会や一部の医師が指摘し、メディアを介して流布された"24症状"の発現リスクが高まるといったエビデンスは示されなかった。病院の受診については、「月経不順」「月経量の異常」「ひどい頭痛」が有意なものとして抽出された。また、調査回答時点での持続的かつ一定の症状としては「月経量の異常」が有意であった。

表. HPVワクチン接種と症状の発現(主要アウトカム)、病院受診、持続的かつ一定の症状の関連性(年齢調整後のオッズ比、Table.3)

HPV_nagoya.jpg

(Suzuki S, et al. Papillomavirus Res 2018. in press)

学校活動や就職・就業への影響に関して、学校での勉学への影響のORは0.82(95%CI:0.74〜0.91)、勉学以外の活動への影響のORは1.02(95%CI:0.89〜1.15)、就職・就学への影響のORは0.71(95%CI:0.53〜0.97)であった。

また、ワクチン接種と複数の症状発現リスクのORは、1症状が0.83(95%CI:0.78〜0.88)、2症状超が0.81(95%CI:0.76〜0.87)、3症状超が0.80(95%CI:0.75〜0.86)、4症状超が0.79(95%CI:0.73〜0.86)、5症状超が0.77(95%CI:0.70〜0.84)、10症状超が0.76(95%CI:0.63〜0.93)であった。

今回の検討の対象となったHPVワクチンには2価と4価の2種類があった。2価ワクチンは4価ワクチンより2年先行して承認されたので、2010〜11年は2価ワクチン接種の割合が87.8%、2012〜13年は4価ワクチン接種の割合が80.0%であった。4価ワクチン接種後の「身体が自分の意思に反して動く」ORは1.54(95%CI:1.04〜2.29)と有意に高かったが、病院の受診のORは1.19(95%CI:0.50〜2.84)、持続的で一定の症状のORは0.52(95%CI:0.11〜2.44)と有意な関連は認められなかった。その他の症状にはこうした関連は認められなかったという。

鈴木氏らは、HPVワクチン初回接種時期や年齢(サブグループ解析1)、HPVワクチン接種前に症状を発現した対象の除外後(サブグループ解析Ⅱ)も実施しているが、主解析および2つのサブグループ解析において一貫してHPVワクチンとの関連性を示した症状はなかったという。

非常にまれな症状の調査には異なる試験デザインが必要か

この研究は、同一集団内のHPVワクチン接種者と非接種者を対象としている点、HPVワクチン接種状況と症状発現の情報が揃っている点で大きな価値がある。鈴木氏らは、HPVワクチン接種経験と経時的な症状の発現状況を調査しえたことで、因果関係を明確に示すことが可能になったとしている。

同氏はこの研究の限界の1つとして、重篤な有害事象を含むごくまれな症状を調査するためには、症例対照研究またはモニタリングシステムといった異なる試験デザインが必要であると述べている。

同氏らは以上の結果から、接種後症状と言われた24症状の発現とHPVワクチンに有意な関連はない。したがって、こうした症状や有害事象とHPVワクチンに因果関係はないことが示唆されると結論した。

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