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「アスリートは使ってはいけない! 」

そのクスリ、禁止薬です!

2018年03月20日 08:00

 近年、市民やジュニア選手が出場するスポーツ大会でも導入されるようになったドーピング検査。アンチ・ドーピングの知識はオリンピック選手に限らず、全てのアスリートにとって必須のものになっています。スポーツファーマシストではないけれどアスリートの役に立ちたいと考える薬剤師T子を中心に、実務で押さえておきたいアンチ・ドーピングに関する情報をお伝えします。

登場人物.PNG

今回学ぶこと

  1. 国際基準の禁止表を理解しよう

  2. 禁止される期間により2つに分類される

  3. ベータ遮断薬(P1)は特定の競技においてのみ禁止

  4. 禁止表に掲載のない類似物質に注意!

国際基準の禁止表を理解しよう

S男.PNG

禁止物質は、「禁止表国際基準」で確認できる。この禁止表の読み方を理解したあと、禁止物質のポイントを学んで行こう。

禁止表は「常に禁止される物質と方法(競技会検査および競技外検査)」「競技会検査で 1 に加えて禁止される物質」「特定競技で禁止される物質」の3つに分類されているよ。

2018年禁止表国際基準

常に禁止される物質と方法
[競技会(時)および競技会外]

【禁止物質】
S0. 無承認物質
S1. 蛋白同化薬
S2. ペプチドホルモン、成長因子、関連物質、および模倣物質
S3. ベータ2作用薬
S4. ホルモン調節薬および代謝調節薬(1. 2. 3. 4. 5.)
S5. 利尿薬および隠蔽薬
[禁止方法]
M1. 血液および血液成分の操作
M2. 化学的および物理的操作
M3. 遺伝子ドーピング

競技会(時)に禁止される物質と方法
[禁止物質]
S6. 興奮薬 a. 特定物質でない興奮薬
      b. 特定物質である興奮薬
S7. 麻薬
S8. カンナビノイド
S9. 糖質コルチコイド

特定競技において禁止される物質
P1. ベータ遮断薬

S: Substance(物質) 、M: Method(方法)、P: Particular(特定競技)

特定物質(青字で記載):医薬品として広く市販されるなど不注意でドーピング違反を起こしやすい、あるいは比較的濫用されることが少ない薬としてWADAにより指定された物質のこと。競技力向上を目的としたものでないことを競技者が証明できれば、制裁措置は軽減されることがある。

S男.PNG

禁止する時間が常になのか、競技会(時)なのか、また特定競技において禁止なのかといった大きな分類があり、さらに、禁止する物質や方法によって細かく分類されているんだ。「S1」、「M2」などといった分類名の頭文字はそれぞれ、SがSubstance(物質) 、MがMethod(方法)、PがParticular(特定競技)を示している。

禁止される期間により2つに分類される

T子.PNG

「常に禁止される物質」は、蛋白同化薬やペプチドホルモン、ホルモン調節物質など長期的に使用することで効果があるような薬物よね。それじゃあ、「競技会(時)」とは?その競技をしている瞬間というわけではないよね?

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「競技会(時)」とは、国際競技連盟またはその他の関係するアンチ・ドーピング機関の規定に別段の定めがない限り、競技者が参加する予定の競技会の12時間前から、競技会に関係する検体採取過程の終了までの期間をいうよ。この期間にドーピング検査が行われるんだ。

T子.PNG

では、競技会の何日前に薬の使用を止めればいいのかなあ?

S男.PNG

よく受ける質問だけれど、ADMEや血中半減期には個人差があるので答えることはできないんだ。

T子.PNG

では、「競技会外検査」はいつ行われるの?

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競技海外検査とは、一定ランクの選手に対して行う抜き打ち検査のこと。だからトップレベル選手には居場所情報の提供が義務付けられているんだ。これに違反するとアンチ・ドーピング違反になる可能性がある。

ベータ遮断薬(P1)は特定の競技においてのみ禁止

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「特定競技」において禁止される物質とあるけれど、どういうことだろう?

S男.PNG

記載された特定の競技(アーチェリー、自動車、ビリヤード、ダーツなど)において競技会(時)に限って禁止されるんだ(指示がある場合は競技会外においても禁止される)。2018年からアルコールが削除されてベータ遮断薬だけになったよ。静穏作用、血圧・心拍数の低下作用で心身の動揺を抑えるため、特定競技に限定されて禁止されるよ。

禁止表に掲載のない類似物質に注意!

T子.PNG

禁止物質の下に「および類似の化学構造又は類似の生物学的効果を有するもの」と書かれているけれど...。

S男.PNG

禁止表に掲載されている物質はあくまでも代表例だ。類似の物質も禁止される場合には、注釈として書かれている。open listと呼ばれているよ。これは、検査機器で検知されないようにステロイドの構造を装飾して合成したデザイナードラッグなども禁止物質として含めることを意味しているんだ。獲得したメダルを全て返還、現役引退となった元陸上競技選手マリオン・ジョーンズが使用していたのがこの物質(テトラヒドロゲストリノン:現在は禁止物質に指定)。一方で、禁止される物質・方法を特定して掲載しているものをclose listと言う。

close list と open list

  • close list(禁止される物質・方法を特定して掲載)
     →対象が全て明示されているもの
  • open list(禁止される物質・方法の代表例の掲載)
     →代表例の提示とともに次の注釈つきのもの

T子.PNG

禁止表の物質は毎年更新されるから一般の人には紛らわしいし、open listみたいに実際に禁止表に載っていない物質にも気をつけなくちゃいけない。スポーツファーマシストが期待されるワケが分かってきたわ。

それじゃあ、次は、禁止表に掲載されている禁止物質をひとつひとつ学んでいきたいな!

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