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AGなのに変更調剤しなくてえー事情?!

2018年03月26日 08:00

 4月からの調剤報酬改定が目の前に迫った。

 基準調剤加算が廃止されるなど厳しい内容ではあるが、現場で対応できるのは、まずはジェネリックの推進だろうか。

 私の勤務する店舗では、現在の後発品調剤割合が73%。これまではかろうじて後発医薬品調剤体制加算1が算定できていたが、このままでは4月から加算が0になってしまう。

 管理薬剤師のEさんの指示で、在庫するジェネリックの種類を増やすことになった。

「タリオンのジェネリックが発売されたし、他にも変えられるものは患者さんに説明した上で、さらに変えていくようにしましょう」

「分かりました」

 その日、最初に処方せんを持ってきたのは高齢の男性で、新規の患者さんだった。早速、ジェネリックへの変更希望について聞いてみたが、その患者さんは私にこう答えた。

ようわからんから、先生の書いてある通りの薬でいいよ」

 思わず、(うっ...)と言葉に詰まる。

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 ーーさて、どう説明したものか...

 以前なら、処方せんはほぼ全て先発品の名前で記載されていたから、「先生の書いてある薬のままで」と言われれば先発品を調剤すればよかった。

 ところが、今は一般名処方だから、「先生の書いてある通りの薬」というのは存在しない。「先生にお任せします」ではなく、自分で選ばなければならないということを理解してもらう必要がある。

 でも、『一般名処方』などと言っても、患者さんには通じないだろうし...

「実はですね、この処方せんですと、先生の意図としては『ジェネリックに変えてもいいし、変えなくてもいいですよ、患者さんの希望する方を出してあげてください』って書き方になっているんですよ」

「ふーん...、それやったら、安い方でええかな?」

 なんとか通じたようで、ほっとする。

 次は小児の患者さんだ。もちろん、変更希望は保護者の方に聞くことになる。

「今日の薬ですけど、ジェネリックがあるので、そちらで調剤してもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい」処方せんを持ってきたお母さんが、お子さんを抱っこしたまま答える。

 それでは...、と調剤室へ戻ろうとする私を、お母さんの言葉が引き止めた。

同じ薬ですよね?

 ーーうっ!

 またしても、答えに詰まる。

 反射的に「同じです」と言いそうになってしまうのをグッとこらえる。

 ーー『同じ薬』...、『同じって』...。

 この場合、お母さんにとって『同じ薬』とは、『先発品と同じように飲ませることができる薬』のことだろう。散剤やドライシロップの味、色、粒子径の違い。錠剤の大きさも気になるはずだ。

再び、「どうしたものか」と思いつつ、処方せんと一緒に渡されたお薬手帳を開いてみる。以前に別の店舗で同じメーカーのジェネリックが調剤されているのが記録されていた。

「これと同じ薬ですね」

「じゃあそれでいいです」

 お母さんの答えにホッと胸を撫で下ろし、調剤に取りかかった。

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あなたにとって『同じ薬』とは、どういうことですか?

 そう尋ねてみたいと何度か思ったことがあるーーもちろん、本当に聞いたことはないが。

 薬剤師である私から見ると、ジェネリックは先発品と同じ成分の薬が同じ分量で入っていて、服用した後も同じように体内で効果をあらわす。だから、同じ薬として使うことができる。厚労省も、同じ薬として扱えると認めている。

 だが、それ以外の部分ではーー薬効に関わりのない部分では、『同じ』とは限らない。

 一番厄介なのは、見た目の違いだ。

 例えばアルファカルシドールカプセルは、メーカーによって外見が全然違うものがある。赤や黄色や白だったり、カプセルが妙に大きかったり、楕円形のものまであって、薬剤師でも驚いてしまう。

 何も知らない患者さんからすれば、「同じ薬です」と言われても、にわかには信じられないだろう。あらかじめきちんと説明しておかなければ調剤過誤を疑われかねない。

 もっとも、錠剤が小さくなったり、味が飲みやすくなったりしているジェネリックもあるから、一概に「同じだからいい」というものでもないだろう。

 しかし、患者さんは「同じ薬ですよ」と聞かされて、そんなイメージを持つことが可能だろうか?

「同じ薬」という言葉を、薬剤師が発する時と、患者さんが発する時とでは、その中身はおそらく全く違っているはずだ。そのことに、お互いが気付かないまま、「同じ薬なのかどうか」という話をしていても、互いにすれ違うばかりだろう。

 何が同じで、何が違っていて、それでも同じ薬として使える。

 薬剤師は、そのことを誤解のないように説明して、患者さんに理解してもらえる『言葉』を持っていなければならないのだ。

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 その点、オーソライズドジェネリック(AG)なら、見た目も添加物も製法も同じだから、胸を張って患者さんに「同じ薬です」と説明できる。

 タリオンのジェネリックも、本社で検討した結果、AGが採用になった。

 Eさんがあらかじめ、タリオンをよく処方する耳鼻科のM先生にそのことを報告に行ったところ、「AGなら安心ですね」とおっしゃったとのことだった。

 実際に入荷したタリオンのAGを見てみると、当然ながらほとんど変わらない外観だった。花粉症シーズンにも間に合ったし、これで後発品調剤割合も上がるだろう...と思っていると、EさんがタリオンのAGの引き出しに小さなシールをぺたりと貼った。

『15歳以上』

「え? それ、どういうことですか?」

「実は、僕もさっき知ったんですけど、ジェネリックには小児の適応がないので15歳未満の方には変更調剤できないんです」

「ええーっ!」

 慌てて添付文書を見てみると、確かにジェネリックの方には成人の用法用量しか記載されていない。

「M先生は15歳未満でもタリオンをよく出すから、後発品調剤割合はそれほど上がりそうにないですね...」心なしか、Eさんの声は気落ちしているように聞こえた。

「適応がないから使えない」というのは制度としては理解できる。しかし、まさかAGが先発品と同じものとして調剤できないというのは、完全に想定外だった。

 やっぱり、「同じ薬ですか?」というのは、簡単に答えられる質問ではないようだ...。

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【コラムコンセプト】
仕事に家事に育児と、目まぐるしい日々を送る母親薬剤師。新薬や疾病の勉強もしなきゃいけないが、家のことだっておろそかにできない。追い立てられるように慌ただしい毎日だ。そんな中で、ふと立ち止まり、考える。「働く母親って、どうしてこんなにいろんなものを抱え込んでしまっているんだろう?」「薬剤師の業務って、どうしてこんなふうなんだろう?」忙しさに紛れて気付けずにいる感情に気付いたら、働く母親に見える景色はきっといくらか変わるだろう。日常の業務に埋もれたままの何かを言葉にできたなら、薬剤師を取り巻く世界も少しずつ変えていけるだろうか。


【へたれ薬剤師Kiko プロフィール】Hetare_kiko_columm.png

卒後9年間病院勤務ののち、結婚を機に夫の地元で調剤薬局に転職。産休育休を経て、現在は中規模チェーン薬局にフルタイムで勤務。アラフォー。9歳の息子、夫(not薬剤師)と3人暮らし。食事は手抜き。洗濯は週3回。掃除はルンバにおまかせ。どういうわけだか「コトバ」に異様にこだわる。座右の銘は「モノも言いようで門松が立つ」。(Twitter:@hetareyakiko)

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