カナダと日本での経験から薬剤師業務を考えてみた by青山慎平

【読者の質問】カナダのMedication Review Serviceと日本のかかりつけ薬剤師

  •  2018年03月27日 12:00

 こんにちは。カナダの薬剤師事情を紹介している青山です。

 今回も、「カナダでの調剤報酬はどうなっている」の記事に読者からの質問がありましたので、それに答えてみようと思います。

Q.カナダのMedication Review Serviceと、日本のかかりつけ薬剤師との違いは?

Medication Review Service・・・患者の薬物療法を最適化するために、薬剤師が患者と薬について話し合い、患者の現在の服用薬(OTCを含む)、その目的、用法用量や注意点、副作用の有無などを確認すること

 ご質問、ありがとうございました。

 カナダでMedication Review Serviceが最初に行われたのは2007年であり、オンタリオ州から始まりました。私の滞在するBC州では2011年に始まり、2018年の現在も継続しています1)

 私自身、日本のかかりつけ薬剤師として仕事をした経験がないので、下記のカナダのMedication Review Serviceの算定要件と比較してみます。日本のかかりつけ薬剤師の算定要件を確認したところ、カナダの薬剤師のMedication Review Serviceと実施している内容は変わらないと思いました。むしろ日本の方が幅広く実施されていると感じました。Medication Review Serviceの概要を記載します。

Medication Review Serviceの概要

  1. Medication Review Serviceの条件(継続薬が5剤以上かつ前回から6カ月以上空いている)を満たしている患者を対象とする
  2. 対象患者の情報収集を行う(現在服用中の薬剤の名称・規格・剤形について、またその目的や適応、使用方法、注意点など)
  3. 情報収集内容について患者の理解度を確認
  4. NESAによる薬物療法の評価と問題点の発見、必要に応じて医師への処方提案
  5. 収集した情報等について情報提供用紙として患者に渡す

 この概要と日本のかかりつけ薬剤師の算定要件1)と比較すると、カナダの薬剤師のMedication Review Serviceと実施している内容はほぼ同じと考えられます。違うと考えられる項目は、以下の3つです。

  • かかりつけ薬剤師の24時間体制や残薬調整のためのブラウンバッグ運動は、実施していない
    →カナダでは患者が希望する薬剤を、希望する日数やタイミングで、調剤できるため、患者は薬が必要になるまで来局しません。そのため、残薬の管理が簡便な環境と言えます。

  • ファーマネットで患者情報を一元的に管理
    →カナダにはお薬手帳はなく、BC州では全ての薬局がファーマネットという州全体に広がるネットワークでつながっています。このファーマネットを介し、他の薬局で調剤された薬剤について知ることができ、情報の一元化に役立っています。

  • レビューの内容を紙面で提供
    →処方箋薬、OTCや健康食品を含めた全ての服用薬や注意事項等を記載して患者に提供します。

Q.Medication Review Serviceを実施するのは難しいか。断る患者はいないか?

 Medication Review Serviceの患者負担額はありませんので、比較的スムーズに勧めることができます。

 逆に問題となっているのは、薬剤師が多忙であり十分な時間が取れないことです。中には、薬剤師にMedication Review Serviceの月々ノルマを課す薬局もあり、その結果、形式的に実施しているケースもあるそうです。

Q.Medication Review Serviceが必要な患者はどの程度?

 2012~13年のデータですが、BC州の薬局の数が1,133軒、Medication Review Serviceの数が年間約30万件といわれています。したがって、平均1薬局あたり3,000件/年、つまり10件/日弱と考えられます。BC州全体では、上位25%にあたる薬局がMedication Review Service全75%を占めており、実際には薬局ごとの実施率にばらつきがあるようです2,3)

 働く薬局によってさまざまですが、私の感覚では処方箋応需数の多い薬局で1日5~10件、少ない薬局では数日に1件というところでしょうか。

Q.Medication Review Serviceの意義は?

 大きく2つに分けて『薬物療法の最適化』と、『患者の薬物療法に対する理解度の向上』であると考えています。

 普段から実施しているNESAによる薬物療法の評価を再度実施することで、これまで見落としていたDrug Related Problemを発見し、より最適な薬物療法を患者に提供することができます。また、現在服用中の薬について患者がどこまで理解しているかを一緒に確認することで、患者の理解度が向上し、アドヒアランスが改善されると考えます。

 日本のかかりつけ薬剤師、カナダのMedication Review Serviceと方法は多少違っても、目指すことは共に『より最適な薬物療法を患者に提供すること』であり、その責任は『常に薬剤師にある』と私は思います。またこの業務を通して、薬剤師としての職能を生かす良いチャンスであるとも考えています。

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

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