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この服薬指導はAIにはできない

国際薬剤師・薬学連合社会管理薬学部門主催 無料webセミナー「エビデンスに基づく実践」を受講して

2018年04月05日 10:00

【国際薬剤師・薬学連合 社会管理薬学部門主催 無料ウェブセミナー】
FIP-Social and Administrative Pharmacy Section(SAPS) Webinar
日時:2018年1月25日
演者:Timothy F Chen(FIP-SAPSプレジデント、シドニー大学教授)、熊本拓也(広島大学教授)、串田一樹(昭和薬科大学特任教授)、岡田浩(FIP-SAPS執行委員、アルバータ大学博士研究員)、藤田健二(シドニー大学博士課程後期)
レポーター:アサヒ薬局 山崎 麻利子 さん

今回私は、国際薬剤師・薬学連合社会管理薬学部門主催の無料ウェブセミナー「エビデンスに基づく実践」を聴講した。

セミナーで学んだ・感じたこと

  1. FIPは、世界の薬学がどうあるべきかを議論する国際的な組織である。
  2. 薬剤師の積極的な服薬指導が、糖尿病や高血圧といった生活習慣病のアウトカムの改善につながる。
  3. 私も薬剤師であるかぎり、心を込めて、患者への介入を行っていきたい。

特に、項目2、3を実務に照らし合わせてみると、薬剤師には、AIには行えない服薬指導ができることが分かり、薬剤師が介入する意義を改めて感じた。

セミナーの概要と、最も印象的であった項目を記したいと思う。

1時間のセミナーのうち、前半30分はFIP(国際薬学連合)とは?と題してTimothy F Chen氏が講演し、組織の目的、具体的な活動を紹介した。後半30分は、岡田浩氏が登壇し、エビデンスに基づく実践(Evidence Based Practice/EBP)の解説や、薬局の介入研究(薬局薬剤師の生活習慣改善支援による血圧改善効果の検証、血糖値改善効果の検証)について、具体的なデータを示しつつ、解説した。

FIP(国際薬剤師・薬学連合)の働き

FIPは、世界の薬学がどうあるべきかを議論する国際的な組織である。WHOやユネスコと連携を取りながら世界の動向を見極めつつ、薬に関わる立場に基づいて、国や地域を越えた情報共有と交流の場を提供している。このような組織があることは、世界の健康を促進する大きな力となると感じた。

薬剤師の積極的な服薬指導が生活習慣病の治療に貢献

特に印象的だったのは、岡田浩氏が発表した、COPMPASS Project(糖尿病患者に対する調剤薬局薬剤師の介入研究)、COMPASS BP(高血圧患者に対する調剤薬局薬剤師の介入研究)の結果である(研究目的などの詳細はhttp://www.yobouigaku-kyoto.jp/compass/index.htmlをご覧いただきたい)。

COMPASS Project

【対象】血糖コントロール不良の2型糖尿病患者 

【メインアウトカム】介入後6ヵ月におけるHcA1cの変化

【対照群】通常の服薬指導(HcA1cを確認するだけ)

【介入群】薬剤師が積極的に服薬指導(薬剤師が作成した資料を用いて3分程度の情報提供を行う、歩数計を貸与する)。薬剤師は介入開始前に、「薬局版動機付け面接」に関する5時間の研修を受講した。

【結果】開始時に8.7%であったHbA1は、6ヵ月後に対照群で8.4%へ、介入群では8.0%へと推移していた。両群におけるベースラインから6か月後のHbA1cの変化の差は、0.4%(介入群の変化の値が対照群の変化の値に対して-0.4%)であった。

※2011〜2013年実施

COMPASS BP

【対象】血圧コントロール不良の高血圧患者  

【メインアウトカム】介入後3ヶ月における起床時収縮期血圧の変化

【対照群】通常の服薬指導(血圧・歩数の測定のみ)

【介入群】通常の服薬指導+資料を用いた情報提供(減塩、食事、運動、減量、節酒のいずれかの情報を患者が選択する)。薬剤師は介入開始前に、「薬局版動機付け面接」に関する5時間の研修を受講した。

【結果】起床時の収縮機血圧値は、対照群で開始時に132mmHgであったが6ヵ月後に137mmHgへ上昇、介入群では135.5mmHgから135mmHgへと推移していた。両群におけるベースラインから6か月後の血圧の変化の差は、約6mmHgであった(介入群の変化の値が-0.5mmHg、対照群の変化の値が+5.5mmHgであったため)。

※2011~2015年実施

ちょっとした会話がコンプライアンスに影響した!

私は4月に薬剤師3年目を迎えようとしている。たった2年ではあるが、臨床経験を経て、薬剤師の職能は多岐に渡ると感じている。先日、『薬剤師はAIにも務まる職業である』という記事を読んだ。しかし私は、薬剤師こそ人間にしかできない職業ではないかと考える。

慢性疾患の患者さんが、きちんと薬を飲む習慣をつける。定期的に通院する前向きな姿勢を保つ。そのサポートができるのは、心を持つ人間の薬剤師である。

コンプライアンスがやや不良の患者さんが久々に来局した。「最近お忙しいですか?」と問えば、「仕事に精を出していて、通院は後回しになっている」と話してくれた。「仕事ができるのも、元気じゃなきゃだめですよね」と言いながら帰ったが、なんと次の来局は、薬がなくなる前であった。たった一言の声かけが、コンプライアンスに大きく影響すると感じた瞬間だ。人間にしかできない、心をこめた会話だから効果があったのだと思う。

Compass Projectの結果のように、薬剤師が介入する目的を果たしていきたいと感じている。

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