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禁止薬の代名詞 ステロイド

そのクスリ、禁止薬です!

2018年04月18日 16:00

 近年、市民やジュニア選手が出場するスポーツ大会でも導入されるようになったドーピング検査。アンチ・ドーピングの知識はオリンピック選手に限らず、全てのアスリートにとって必須のものになっています。スポーツファーマシストではないけれどアスリートの役に立ちたいと考える薬剤師T子を中心に、実務で押さえておきたいアンチ・ドーピングに関する情報をお伝えします。

登場人物.PNG

今回学ぶこと

  1. スポーツ関係者の指す"ステロイド"は蛋白同化薬(S1)

  2. 体内で生合成したステロイド?それとも合成?見分け方は?

  3. 糖質コルチコイドは投与経路に注意(S9)

  4. おさらい:蛋白同化薬(S1)

  5. おさらい:糖質コルチコイド(S9)

スポーツ関係者の指す"ステロイド"は蛋白同化薬(S1)

T子.PNG

禁止表のそれぞれの項目にどんな薬があり、なぜ禁止されているのかを知りたいな。ドーピングといえば、まずステロイドを思い浮かべるけれど...?

S男.PNG

ごもっとも!アンチ・ドーピング規則違反で最も多い物質がステロイド。ステロイドとは、ステロイド骨格(ステラン骨格)を持つ化合物の総称だね。

02ステロイド骨格.PNG

ここで注意してほしいのは、"ステロイド"は医療現場では治療に使われる副腎皮質ホルモンの糖質コルチコイドを指すことが多いけれど、スポーツ関係者は蛋白同化ホルモンの男性ホルモンを指す場合が多いということ【表2】

02表2.PNG
T子.PNG

薬局で「これは皮膚の炎症を抑えるステロイドのお薬です」と説明すると、スポーツ関係者には誤解を与えてしまいかねないわね。

S男.PNG

そうだね。注目すべきは、糖質コルチコイド蛋白同化薬も禁止物質に指定されているけれど規制の強さが違う点。

糖質コルチコイド特定物質で、競技会(時)のみ禁止経口、経直腸、静脈注射、筋肉注射の全身投与のみ禁止で、それ以外(吸入、耳、目、鼻、皮膚など)の投与経路での使用は可能だよ。

一方、蛋白同化薬は常に禁止。さらに、全ての投与経路で使用が禁止されているんだ。

体内で生合成したステロイド?それとも合成?見分け方は?

T子.PNG

でも、ステロイドは体内で生合成されるのよね。検出されたとしても、それが内因性か外因性か区別できるのかなぁ?

S男.PNG

いい質問!内因性と外因性を区別する分析方法が定められていて、尿中のテストステロン(T)と内因性ステロイドのエピテストステロン(E)との比(T/E比)や、炭素の同位体比質量分析法(IRMS)がある。

さらに、禁止物質を直接検出するのではなく、アスリートの血液検査や尿検査の数値をデータベース化して長期間追跡するアスリート・バイオロジカルパスポート(ABP)も始まっている。各アスリートの変動範囲が予測できるから、その範囲を逸脱することを利用してドーピングを検出するんだ。検査方法は日々進化しているよ。

※IRMS:植物ステロールを原料とする合成ステロイドの炭素同位体13Cと、動物性コレステロールに由来する内因性ステロイドの炭素同位体12Cの含量比に着目して、体外から摂取した合成ステロイドを検出する方法。

糖質コルチコイドは投与経路に注意(S9)
...痔の治療薬は使える?

T子.PNG

糖質コルチコイドを含む痔の外用薬には「注入軟膏」「坐剤」「軟膏」の剤形があるけれど、「坐剤」は「経直腸使用」だから禁止よね。「注入軟膏」と「軟膏」はどうなんだろう?

S男.PNG

肛門に塗布する「軟膏」は禁止されないけれど、「注入軟膏」は経直腸使用として禁止されているんだ。OTC薬として多くの製品が販売されているからうっかりドーピングにならないように気をつけないといけないね。

おさらい.png

蛋白同化薬(S1)

生理・薬理作用

テストステロンはステロイド骨格を持つ性ホルモンで、 主に精巣で作られ5α-還元酵素によって大部分がジ ヒドロテストステロン(DHT)に変換される。どちらも アンドロゲン受容体に作用して男性化作用(生殖器官 の発達)および蛋白同化作用(筋肉の発達)を示す。 この男性化作用を弱めて蛋白同化作用を強めた化合物が蛋白同化ステロイドである。

有害作用

ドーピングに使用される場合、長期に渡り、しかも 臨床用量をはるかに超えて使われることがある。その ため、より深刻な有害な作用が起こる可能性がある。

  • 男性の副作用:精巣の萎縮,勃起不全(ED),女性化乳房など
  • 女性の副作用:多毛,嗄声,胎児の男性化など
  • 共通の副作用:肝障害,精神障害,攻撃性の増大など

ドーピング物質として禁止される理由

蛋白同化作用による筋力の強化,筋肉量の増加に伴 う運動能力の向上や攻撃性の発現による。

その他の蛋白同化薬

蛋白同化男性化ステロイド薬以外にも蛋白同化作用 を持つ物質は禁止される。クレンブテロール(ベータ 2作用薬)や選択的アンドロゲン受容体調節薬など がある。

糖質コルチコイド(S9)

生理・薬理作用

糖質コルチコイドは副腎皮質において生成されるステロイドホルモン。主な作用に、抗炎症作用、免疫抑制作用、代謝作用(肝臓での糖新生促進,筋肉の蛋白分解促進など)、中枢作用がある。体内の標的組織に存在する細胞質の糖質コルチコイド受容体に作用し、蛋白合成を介して作用を発現する。そのため作用の発現には時間がかかる。

ドーピング物質として禁止される理由

  • 機序は不明だが,中枢神経系に作用して高揚感・陶酔感等をもたらすため。
  • 糖質,たんぱく質,脂質の代謝などのエネルギー代謝に影響するため。
  • 強力な抗炎症作用により,ケガをしていても競技を継続できてしまう場合があり,ケガをより悪化させてしまう可能性があるため。
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