新規登録

男性ホルモンだけが禁止ではない!

そのクスリ、禁止薬です!

2018年04月19日 08:00

 近年、市民やジュニア選手が出場するスポーツ大会でも導入されるようになったドーピング検査。アンチ・ドーピングの知識はオリンピック選手に限らず、全てのアスリートにとって必須のものになっています。スポーツファーマシストではないけれどアスリートの役に立ちたいと考える薬剤師T子を中心に、実務で押さえておきたいアンチ・ドーピングに関する情報をお伝えします。

登場人物.PNG

今回学ぶこと

  1. 禁止は男性ホルモンだけではないホルモン調節薬(S4)

  2. 乳癌治療薬、骨粗鬆症治療薬も禁止

  3. おさらい:ホルモン調節薬(S4)

禁止は男性ホルモンだけではないホルモン調節薬(S4)

T子.PNG

前回は、蛋白同化薬は男性ホルモン作用により筋肉量や筋肉の増加を促すから禁止物質に分類されていることを学んだわね。ところで、男性、女性は、それぞれの性ホルモンのバランスによって生理作用がコントロールされていることはよく知られているけれど、スポーツで禁止されているのは男性ホルモン(蛋白同化薬)だけなの?

S男.PNG

男性ホルモンだけではないんだ。ホルモンの量・バランスを変化させる物質も禁止されているよ。それが「S4.ホルモン調節薬と代謝調節薬」。アロマターゼ阻害薬、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs)、抗エストロゲン薬などがあるよ。

乳癌治療薬、骨粗鬆症治療薬も禁止

T子.PNG

えっ、アロマターゼ阻害薬は、閉経後乳癌のホルモン療法で使われる薬よね?

S男.PNG

そう。アロマターゼ阻害薬は、アンドロゲンをエストロゲンへ変換するアロマターゼを阻害して、アンドロゲンの量を増やす【図】。

02図.PNG

つまり、蛋白同化作用を増強させるから禁止されているんだ。さらに、この薬はエストロゲンの生成を抑えるから、蛋白同化薬による女性化の副作用(女性化乳房)を防止する作用もある。それで、ドーピングの際に蛋白同化薬と併用される場合もみられるみたいだよ。

他にもタモキシフェン(乳癌治療薬)やラロキシフェン(閉経後骨粗鬆症治療薬)、クロミフェン(排卵誘発薬)なども、抗エストロゲン作用のため禁止されているよ。

T子.PNG

抗エストロゲン作用が競技能力向上につながるの?

S男.PNG

抗エストロゲン薬は、視床下部のエストロゲン受容体と結合してエストロゲンのネガティブフィードバックを抑制し、FSH/LHの放出を促進する。その結果、アンドロゲンの生成も増加するため禁止されているよ。タモキシフェンとラロキシフェンは、蛋白同化薬と併用して、変換されたエストロゲンによる女性化の副作用を防ぐ目的で使われることもあるんだ。

T子.PNG

ふう~。普段取り扱う薬の効能・効果は薬の作用の一部分でしかないのね。

※排卵誘発に適応を持つクロミフェンも乳癌の治療を目的に開発された薬であるが、中枢に対する抗エストロゲン作用が強いため、内因性エストロゲンレベルが保たれている性成熟期の排卵誘発に用いられている。

おさらい.png

ホルモン調節薬(S4)

アロマターゼ阻害薬の作用

アンドロゲンからエストロゲンへの変換に関与す る酵素(アロマターゼ)を阻害し、アンドロゲン の量を増やすことにより蛋白同化作用を増強さ せる。一方、アロマターゼ阻害薬はエストロゲン の生成を抑えるため、蛋白同化ステロイド薬によ る女性化作用(女性化乳房)の副作用を防止する 作用もあり、ドーピングの際に蛋白同化薬と併 用される場合もあるという。

抗エストロゲン薬の作用

エストロゲン受容体はおもに女性・男性の生殖 臓器に分布し、それぞれの性機能や生殖生理、 女らしさ、男らしさの形成・維持に働いているが、 抗エストロゲン薬は生殖臓器の受容体に結合し、 エストロゲンの作用を阻害する。

ドーピング物質として禁止される理由

女性ホルモンであるエストロゲンの働きや生成を抑え、ホルモンバランスを相対的に男性ホルモン側に傾けて男性ホルモン作用(蛋白同化作用)を高める

注)2018年4月26日
ホルモン調節薬(S4)とすべき所をP1と表記していた箇所があり、訂正しました。一部表記を修正しました。

トップに戻る