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はじめに 「なぜ、ここにいるのか?」

田舎の薬剤師 地域医療への貢献を模索中!〜故郷を薬剤師として支えたい〜#1

2018年06月13日 08:00

 はじめまして。福井県にあるJCHO若狭高浜病院に勤務する薬剤師の野田学と申します。連載を開始するに当たって、まずはこの病院に勤めた経緯をお伝えしようかと、就職が決まった頃に書きためていたものを掘り起こしてみました。

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fugu_icon_green.jpg湧いてきた1つの疑問

 私は福井県出身、大阪にある大学の薬学部を卒業後、国家試験に合格して薬剤師となりました。大手調剤薬局に就職し、山口県の店舗に配属されました。配属先は別にどこでもよかったです。田舎の地元に戻りたいなんて思ったことはありませんでした。縁もゆかりもない地で、およそ2年に1度の異動を繰り返しながら働いておりました。働き始めて何年かすると、1つの疑問が湧いてきました。

「自分はなぜ山口にいて、どこの誰なのか分からない人に薬を渡しているのだろうか?」

 4年目からは管理薬剤師、5年目には大規模店舗に異動、エリアの教育研修担当者となり、大切な仕事を任されるようになっていきました(新卒で就職後、本当にたくさんの経験をさせていただきました。おかけした迷惑は数知れず...たいへん感謝しております)。

 それからいろいろありまして、6年目に入り退職する決意は固めたものの、これから何をしようかと考えていました。

kani_icon_orange.jpg「がっちゃんも帰ってきなよ!」

 もやもやしながら正月を迎え、実家に帰省した時のことでした。山口県から福井県までの電車での帰省には長時間を要します。さらに、実家の最寄り駅は1〜2時間に1本しか電車が走っていません。隣町の駅から最寄り駅までの乗り継ぎに1時間以上空いたため、弟に隣町まで車で迎えに来てもらいました。実家に向けての車窓、トンネルを抜けて地元の町に入った瞬間の光景を、今でも忘れられません。

 いつの間に、こんなに寂れてしまったんだ...そのうち、この町はなくなるんじゃないか?

 私の故郷は、いわゆる「過疎」の地域です。原発と海水浴くらいしか取り柄がなかったのに、原発は停止中。最盛期には120万人を誇った海水浴客も年々減少し、今や20万人程度に激減しています。

 そして祖父が入院している、町で唯一の病院に立ち寄りました。ここでも衝撃を受けました。

 なんと入院患者の多いこと...このまま高齢化が進んだら、この町は一体誰が守っていくのだろう...

 その夜、久しぶりに同級生たちと居酒屋に集まりました。

 京都で消防士になった友人が「俺は地元の海が好き、もっとこの海をみんなに広めたい!だから、この海が見えるところに店を開きたい」と夢を語りました。なんと彼は、仕事を辞めてきたと言うのです(実際、その年の4月に店をオープンさせました)。

「がっちゃん(私のこと)も帰ってきなよ!薬局やったらええやん!漢方作ってよ!冷えに効く漢方ないの?」と女友達から促されました。

「そんな簡単に薬局なんかできないよ。しかも漢方の知識は薄すぎて今の力じゃ無理!」と受け流しながらも、それもありだな、と感じました。変わり果てた今の町の状況を見てしまったために、帰ってきなよという言葉がやけに心に響いたのです。

takahama_beach.jpg彼ご自慢の海がこちら!ビーチの国際環境認証『ブルーフラッグ』を日本(アジア)で初めて取得した「若狭和田ビーチ」です。約10年ぶりに戻ってきてこの海を見て、「あれ、こんなに綺麗やったっけ!?」と、驚いてしまいました。もうすぐ海水浴シーズンですね!もしよろしければ足をお運びください♪

kamome_icon_blue.jpg『医療の本質とは町づくり』

 それまで私は薬剤師という仕事に誇りを持てていませんでした。薬を早く、正確に渡すのが主体の業務、薬局は医師の指示通りに薬を渡す施設というイメージだったのです。

 一方で、それだけなのはおかしい、まだまだできることはあると感じていました。でも、それを口に出すことはありませんでした。自分の考え方に自信が持てなかったし、自分と同じような疑問を抱えている人はいないのではないかとも感じていたのです。

 しかし、勉強会や学会などに積極的に参加し、他の薬剤師との交流を深め、さまざまな議論に触れる中で、自分と似たようなことを考えている人は意外とたくさんいる、「本気」の薬剤師は日本中にいることを知りました。

 抱えていた疑問に対する自分なりの答えも見つかった気がしました。

 そして、私が考える医療の本質が見えてきました。私は『医療の本質とは町づくり』だと思います。

 また、最近、地域医療という言葉をよく耳にします。参加した多くの勉強会でも、しきりに地域医療についての話がされていました。

 ただ、地域医療を考えたとき、果たして医療関係者だけで成り立つのかどうかという疑問が生まれました。答えは『NO』です。家族、知人、近所の方々、行政など、たくさんのサポートが必要です。そういう意味で、私は医療の本質とは町づくりなのだと思います。

tai_icon_red.jpg自分は「どこで」「なにを」すべきか

 そして、町づくりを考えたときに、自分は、「どこで」「なにを」すべきかを改めて考えました。

 まず、「どこで」について。

 通りを歩けば知り合いに出会い、当たり前に挨拶を交わす...そんな小さな町である故郷に、自分が愛着を感じていることに気付きました。故郷の住民であるというだけで親近感が湧いてきます。この思いは、某先生がおっしゃっていた「全ての患者さんを家族のように愛すること」につながるのではないかと考えるようになりました。

 そんな故郷は過疎化が進み、廃れつつあります。高齢化が進む一方で、医療者は足りていない。それならば、自分が少しでも町づくりに貢献したいと思うに至りました。

 では「なにを」すべきか。

 病院薬剤師、薬局薬剤師、ドラッグストア、行政。薬剤師である自分にできる、さまざまな選択肢を考えました。

 最初に考えたのは自分で面分業の薬局を立ち上げることでした。いわゆる「まちの薬局」の再興が必要だと考えたからです。とはいえ、大学卒業後は他県にいたおかげで、地元の医療の現状を把握できていませんし、経営的な知識もありません。

 小さい町なので、病院は1つ、診療所は2つ(現在は3つ)、保険薬局は1つ、ドラッグストアは2つ(現在は3つですが、調剤をしているのは1つのみ)。私に必要なのは、地元でどのような医療が行われているのかを知ること、そのためには医療の中心である病院に勤めるのが最適だと考えました。

 幸い空きがあり(というよりは、常に人手不足)、首尾良く就職することができました。

 この病院には、私の同級生や知り合いが勤務しています。家族にとって馴染み深い病院でもあります。

 そんな病院に勤められることをうれしく思いながら、薬剤師となって戻った自分ができる医療の本質の追求、すなわち町づくりへの貢献を果たしていきたいと思います。

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 これは、私が転職をするときに書いたブログをギュッとまとめたものです。ご興味を持たれましたらコチラをご覧ください。全7回に分けて書いてあります。

 こうやって読み返してみるとたいへん恥ずかしいです。ところどころ勘違いしていたこともありますが、そのときの素直な気持ちってことでご容赦ください。

 今の病院での勤務も5年目を迎えました。次回以降、私が日々模索しながら取り組んでいることを紹介していきたいと思います。

【コラムコンセプト】

たくさんある薬剤師としての働き方の中から選んだ、地域に根ざして働く病院薬剤師。地域に対して何ができるのだろうかと日々考えながら業務をしています。田舎はたいへんなことも多いけど、田舎ならではのおもしろいこともすごく多いです。何か目立つことをするわけではなく、地味に細々と活動している薬剤師がたくさんいることを知っていただき、同じような境遇で働く薬剤師を少しでも勇気づけることができれば幸いです。

【野田学氏プロフィール】

NodaManabu.jpgJCHO若狭高浜病院薬剤科所属。薬学部卒業後、7年間の山口県でのチェーン調剤薬局勤務を経て、地元である福井県の病院に勤めだして5年目。生まれ育った人口1万人ほどの自然豊かな小さな町にある唯一の病院で、のほほーんと勤めながら、薬剤師・医療者・地域住民として自分に何ができるのかを日々模索中。ブログで地域での活動の様子や日々の業務で考えたことなどを書いています。

ブログ:リンコ's diary 田舎の地域医療を志す薬剤師

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