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医師の魔術をみたような

2018年06月18日 13:58

医師の魔術をみたような

つぼみ薬局居宅介護支援事業所 
角山 美穂

在宅患者さんのお役に立ちたくて、在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして、24時間体制で頑張っています!

【PharmaTribune2011年10月号掲載】

在宅の現場は日々勉強

 ケアマネ兼、訪問薬剤師の依頼はいつも突然やってきます。

 ちょうど1年くらい前のある日、膵臓がん末期の方の依頼がありました。同じ患者さんですが、依頼は同時に2箇所から。

  1. 某病院の地域連携室→地域包括支援センター→つぼみ薬局
  2. 在宅診療クリニック→つぼみ薬局

 翌日朝一番に、地域包括支援センターの相談員さんと介護保険の申請、そして居宅委託のご挨拶のためにご自宅を訪問しました。ご本人は前の晩は痛みで眠れず、数分前に漸く眠りに就いたばかりでした。その場で、介護保険の申請が未だ行われていないことをご家族から確認しました。

 余命が1週間。そのようにお聞きしていたため、初回のインテーク(面接)はいつもより緊張しました。

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 午後には、医師・訪問看護師と、私が訪問薬剤師兼ケアマネとして、この日2度目の訪問です。医師の診察を廊下から拝見しつつ、残薬の確認・報告...。これは私のいつものスタイルです。

  • オキシコンチン®錠5mg
  • ガスター®錠D20mg
  • オプソ®内服液5mg
  • ナゼア®錠OD0.1mg
  • セレコックス®錠100mg
  • ロキソニン®カプセル
  • ロペミン®カプセル
  • エクセラーゼ®配合錠

 ...錠数を数え、介護者に服薬状況を確認します。

 ご家族によると、患者さんが麻薬に恐怖心を抱いており、指示どおりの服薬ができていないとのこと。その旨、医師へ報告します。一方、患者さんはぐったりとして、医師が問いかけても目を開くことすらできません。医師は、残薬のオプソ5mgを2包服用するよう指示しました。

 訪問看護師さんの介助で内服すると、患者さんは、まるで魔法がかかったように目を開け、ポカリスエットをひと口、ふた口...。しばらくすると「トイレに行ってみるわ」と立ち上がり、介助を受けながら歩行したのです...。

 ご家族をはじめ一同が、医師の魔術を見たような、何とも言えない空気に包まれました。

 この診察を受けて処方された分の麻薬を持参したのが、この日3度目の訪問。さらに追加処方があり、結局は1日4度の訪問になりました。処方内容は、

  • デュロテップ®MTパッチ2.1mg 1枚/3日
  • アンペック®坐剤10mg 1個 痛い時(手持ちのオプソ5mg 2包でも可,ご本人の良い方で)
  • ノバミン®錠5mg
  • マグミット®錠330mg
  • グリセリン浣腸60mL

でスタートとなりました。

 治療方針を医師に伺うと、『この後、嘔気がなければノバミン®の中止。点滴により脱水が改善されれば、ステロイドによる緩和。膵臓疾患のため、ステロイドにより血糖が上昇するようならインスリンを追加し』とのこと。そのときに医師が発した「少しでも家で痛みなく安楽に過ごせるようにみんなで支援して行きましょう」との言葉に、「頑張るぞ!!!」と奮い立ちました。

 その後は、医師が連日の往診で様子を見ておられましたが徐々に血圧が低下していきました。2日後には急に激痛が生じ、塩モヒ(塩酸モルヒネ)の点滴、デュロテップ®MTパッチの増量を行い、さらに塩モヒの持続点滴での見守り。意識レベルが低下して呼吸が弱くなり、ご家族みんなに看取られて静かに逝かれたそうです。

 このような最期の激痛は、「肝動脈への腫瘍塞栓か、腫瘍による肝動脈の破裂でないか」と医師より教えていただきました。

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 このケースには、薬剤師として、そして、ケアマネとして関わらせていただきました。

 薬剤の手配に使用法の説明、薬の保管法や訪問看護師との連携...という薬剤師業務。そして、週単位での在宅での介護に対して余分なサービスが入らないように気をつけながらのアセスメント、ケアプラン作成...というケアマネ業務

 介護保険の利用にあたっては必ず行わなければいけない「重要事項の説明」「契約書」という必須の作業を行うタイミングすら見つけることができないほどのバタバタに、管理料なども算定できずトホホでしたが、とてもいい勉強をさせていただいた症例でした。

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 その後、「四十九日が無事終わりました」と、ご家族がわざわざ薬局まで挨拶に来てくださいました。ご家族を支えきれなかった、何もできなかった...と消化不良の想いのまま日々の業務に追われていた私には、とてもありがたかったです。

 まだまだつぼみ、毎日の患者様との出逢いの中で教えていただくことばかりのに日々です。こんな私に何ができるのかしら...と折れそうになることもありますが、「望まれれば寄り添わせていただきたい!」この想いは強くなるばかりです。

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