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自分の血液もドーピング対象に!?

2018年06月26日 14:00

自分の血液もドーピング対象に!?

 近年、市民やジュニア選手が出場するスポーツ大会でも導入されるようになったドーピング検査。アンチ・ドーピングの知識はオリンピック選手に限らず、全てのアスリートにとって必須のものになっています。スポーツファーマシストではないけれどアスリートの役に立ちたいと考える薬剤師T子を中心に、実務で押さえておきたいアンチ・ドーピングに関する情報をお伝えします。

登場人物.PNG

今回学ぶこと

  1. 自分の血液の輸血もダメ?(M1)
  2. 高地トレーニングや酸素カプセルは?(M1)
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前回は、持久力を上げる目的でドーピングにエリスロポエチン(EPO)製剤が使われているということを教えてもらったわ。持久力を上げるためには心肺機能を強化すればよくて、その方法がいくつかあるというクイズの答え合わせだったわね...。

S男.PNG

そう、下のクイズだね。〈c〉EPO製剤のほかにどれが禁止だったか覚えている?

クイズ:禁止されている物質・方法は次のうちどれ?

〈a〉自己血輸血
〈b〉高地トレーニング
〈c〉エリスロポエチン(EPO)製剤
〈d〉酸素カプセル
〈e〉血液クレンジング(オゾン療法)

T子.PNG

〈c〉のほかは〈a〉〈e〉が禁止だったわね。薬だけが使用禁止というわけではなかったわ。

S男.PNG

そうそう。禁止表【表1】の「M1. 血液および血液成分の操作」に該当するよ。

04表1.JPG

自分の血液の輸血もダメ?(M1)

T子.PNG

〈a〉自己血輸血も禁止(M1.1.)ということだけど...。自分の血を輸血してドーピングになるってどういうことなの?

S男.PNG

輸血は血液ドーピングとも言われ、自分の血液を採血して保管し、大会前に戻す方法なんだよ。

T子.PNG

いったん抜いた自分の血液を戻す...。検出が難しいんじゃないの?

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その通り。摘発はかなり難しい。アテネオリンピック(2004年)自転車競技の金メダリスト、タイラー・ハミルトンは、血液ドーピングの常習犯だったという。たまたま、医師が他の選手の血液を輸血してしまい、血液検査の異常で発覚したけれど。医師などの専門家を巻き込んだ不正の手口は、年々巧妙になっているのが現実なんだよ。

T子.PNG

悪質化しているのね。

高地トレーニングや酸素カプセルは?(M1)

T子.PNG

あとは、〈e〉血液クレンジング(オゾン療法)が禁止されているのね。〈b〉高地トレーニングと〈d〉酸素カプセルは問題なしと...。

S男.PNG

高地トレーニングは、通常のトレーニングと同じとみなされて禁止されない。酸素カプセルは議論が分かれたけれど、WADAから「競技能力向上の根拠はない」との見解が示されて、禁止にはならなかった。禁止表でも、「但し、吸入による酸素自体の補給は除く」(M1.2.)と書かれているでしょ? 高圧酸素カプセル、高圧酸素室などによる酸素吸入はドーピングにはならないんだ。でも、血液を操作する血液クレンジング※1は禁止だ(M1.3.)

T子.PNG

酸素運搬能を上げる目的は同じでも、トレーニングは問題なくて、投薬や血液を操作する方法は禁止されているのね。

※1 小量の血液を採取してオゾンガスを混合し、オゾン化した血液を体の中に戻す療法。赤血球の酸素運搬能が改善する。欧州などでは、虚血性心疾患に対して保険適用になっている。

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