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薬剤師が女性の味方になるために ―ホルモンや避妊の正しい知識を身に付けよう―

2018年度 日本女性薬剤師会学術講演会

2018年07月11日 10:30

 性をテーマにした2018年度 日本女性薬剤師会学術講演会で、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院(港区)院長の安達知子氏が登壇した。望まない妊娠を避けるために、女性が主体的に避妊を行うことが重要であり、その方法の1つとして経口避妊薬(oral contraceptive; OC)がある。しかし、OCにはもともと性感染症(sexually transmitted infection; STI)を蔓延させる、風紀を乱す、といったイメージが付きまとい、さらに教育現場でも性教育が不十分なことから、日本では普及しているとは言い難い。同氏は「女性のQOL向上には、避妊や月経に関するトラブルや疾患に対しての適切なホルモン療法が重要で、特に若い女性にはOCやごく低用量のエストロゲンおよびプロゲスチン配合剤(low dose estrogen progestin; LEP)が有効だ」と述べ、日本の避妊の現状や、薬剤師の服薬指導の重要性および具体的な方法を解説した。

180624_adachi dr 0.jpg安達知子氏

【講演概要】

『性の健康―避妊とOC(Oral Contraceptives)の現状と薬剤師への期待―』
日時:2018年6月24日(日)11:30~12:40
会場:国際ファッションセンター(KFCビル)3階 KFC Hall・KFC Annex Hall
主催:一般社団法人日本女性薬剤師会

 性感染症(Sexually Transmitted Infections; STI)は、性行為によって感染する疾患の総称だ。多くは粘膜感染し、まれに飛沫感染や皮膚感染するものもある。感染した粘膜に炎症を来して、他の性感染症にかかりやすくなるという特徴もある。

そもそもOC/LEPとは?

 OCは通常、エストロゲン(卵胞ホルモン。OCに含まれるエストロゲンは合成)とプロゲスチン(黄体ホルモン作用を持つ合成物質)の合剤であり、黄体ホルモンの(1)排卵抑制作用(2)エストロゲン作用後の子宮内膜の分泌期像形成、内膜増殖の抑制(3)頸管粘液の組成変化(4)卵管の運動および卵輸送の影響、子宮筋収縮の抑制1)―などの作用を利用している。エストロゲンを加えることにより、プロゲスチンの排卵抑制作用が高まり、プロゲスチンの含有量を減らすことができる。1錠当たりのエストロゲン含有量が50μg未満のものを低用量OC、50μgのものを中用量OC、50μg以上のものを高用量OCという。避妊に有効なことに加え、月経困難症の軽減や過多月経の減少など、さまざまな副効用がある(表1)。

 表1 OCの避妊以外の副効用

180624_adachi dr 1.jpg(日本産科婦人科学会『低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)』より改編)

 特に月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的として、上記(1)、(2)の作用を利用したLEPも広い意味でOCに含まれる。国内に流通する低用量OCは、プロゲスチンの種類によって患者に合わせたタイプを使い分けることができる。OC、LEP共に基本的に21日間服用し、7日間休薬(一剤は24日間服用し、4日間休薬)するという、28日サイクルで使用する薬剤である。日本ではLEPは保険適用されるが、避妊を目的にしてOCを服用する場合は自由診療になる。

 米国においてOCは1960年から広く使用されているが、日本では副作用への懸念や、STDが蔓延する、風紀が乱れるといった意見があり、1999年にようやく承認された。2005年と2010年には、より処方しやすいようにガイドラインが改訂された。なお、2008年にLEPが保険適用された。多くの若年女性が安全に利用できるようになった一方、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism; VTE)や心筋梗塞といった副作用や禁忌事項もあり、的確な服薬指導が求められている。

日本の中絶の実態とOCの必要性

 日本の学校現場では、性行為や避妊、人工妊娠中絶といった性教育はほとんど行われていないにもかかわらず、性的同意年齢は多くの欧米諸国より低い13歳である。さらに、2016年度の20歳未満の出産数(A)は1万1,095件2)、中絶数(B)は1万4,666件であった。中絶選択率〔B/(A+B)%〕にすると57%になる3)。安達氏によると、同年度の15歳以下の出産は189件、中絶選択率は82%で、13歳未満の中絶は12件あったという(表2)。

表2 10歳代の出産数および中絶数と中絶選択率(2016年度)

180624_adachi dr 2.jpg(厚生労働省『平成28年衛生行政報告例』と『平成28年人口動態調査』より作図)

 思春期の望まない妊娠は、中絶や学業の中断などにつながりやすく、出産した場合、生まれてきた子供への虐待のリスクが高まる。同氏は「虐待を防ぐためには、望まない妊娠を予防し、避妊や家族計画を若いときから考えることが必要だ」とした。

 OCはコンドームなどに比べて避妊効果は非常に高いが、日本人女性の避妊法は世代を問わず8割超がコンドームであり、OCは4.2%程度にとどまる4) ※。フランスでは全体の40.6%、20~24歳に至っては65.7%がOCを利用しているというデータがあり5)※※、年齢やその人の状況に合わせた避妊法が選択されている。特に若年女性には、(1)簡便で避妊効果が高く(2)再び妊娠でき(3)女性が主体的に行える避妊法が望ましく、「服用終了後3カ月以内で、約90%の患者の排卵が再開するOCが適している」と同氏は指摘した。

「いつも避妊している」「避妊をしたりしなかったりしている」人の現在の主な避妊法(2つまで選択:女性16~49歳) 2016年はピルなど女性ホルモン剤についての質問 調査規模3,000人

※※Sources: Fecond survey(2013), INSERM-INED.

もしものときは緊急避妊の検討を

 OC/LEPを服薬しておらず、排卵期に予期せぬ性行為があった場合、妊娠を防ぐ方法として緊急避妊がある。1つは緊急避妊薬の服用、もう1つは銅付加IUD(Intrauterine device:子宮内避妊器具)の子宮内への挿入である。緊急避妊薬はプロゲスチン単剤で、性交後72時間以内に1.5mgを服用する。確実に服用したことを確認するため、患者が目の前で内服することが勧められる。しかし、服用しても2%程度が妊娠継続する可能性がある。

 銅付加IUDは、性交後72時間以上120時間以内に有効な処置で、妊娠阻止率は99%といわれる。しかし妊娠経験がない場合は挿入時に痛みがある。感染症のリスクがあるため、抗菌薬も投与する。

OC/LEPは服薬中のスクリーニングが重要

 日本ではまだ浸透しているとはいえないOCやLEPを、安全かつ適正に普及させるためには、薬剤師の服薬指導が非常に重要である。処方前はもちろん、服薬中のスクリーニングも欠かせない。特に重篤な副作用として、VTEがあり、服薬中はVTEの初期症状(ACHES、エイクス)(表3)の有無を患者に確認する必要がある。

表3 VTE発症の際の症状:ACHES

180624_adachi dr 3_0.jpg(日本産科婦人科学会 編集・監修『OC・LEPガイドライン 2015年度版』p.74より)

 また、月経から5日以内に服用を開始し、毎日決まった時間に飲むといった、正しい服薬法と飲み忘れた場合の対応、服用についての注意事項などの説明や資料の提供も、薬剤師の仕事だという。

 閉経周辺期の女性で、子宮内膜症などの症状改善を希望してホルモン治療に入る場合は、OC/LEPよりもプロゲスチン単剤やホルモン補充療法(hormone replacement therapy; HRT)が勧められる。運動量の低下や加齢などにより、VTEや発がんのリスクが上昇しやすいためである。

 安達氏は、「ホルモン療法中は、不正出血の有無の確認や、脱水や過労の予防、睡眠前の水分補給の指導などに、薬剤師の力を発揮してほしい」と述べた。OC/LEPの種類と、HRTの違いについて理解しておくと、さらに安全で適切なホルモン治療が可能になるとした。

参考文献

1. Benno Runnebaum, et al. Am J Obstet Gynecol 1987; 157,Issue 4, Part 2: 1059-1063.
2. 厚生労働省. "平成28年(2016)人口動態統計(確定数)の概況 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数".
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei16/dl/08_h4.pdf
3. 厚生労働省. "平成28年度衛生行政報告例の概況 母体保護関係".
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka6.pdf
4. 一般社団法人日本家族計画協会. 第8回男女の生活と意識に関する調査報告書 2016年〜日本人の性意識・性行動〜. 一般社団法人日本家族計画協会, 2017
5. Nathalie Bajos, et al. Population & Societies 2014; 511: 1-4.

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