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無菌設備はないけれど

2018年07月23日 11:40

無菌設備はないけれど

つぼみ薬局居宅介護支援事業所 
角山 美穂

 在宅患者さんのお役に立ちたくて、在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして、24時間体制で頑張っています!

 今回は、無菌調剤のお話です。

 2012年度の調剤報酬改定で「無菌製剤処理加算」の施設基準が見直され(「5平方メートル以上の専用の部屋を有していること」の要件を削除)、無菌製剤処理を行う十分な施設または設備を有している場合は算定可となりました。今まで無菌設備を導入したくとも物理的に導入できなかった薬局にとっては、嬉しい後押しになりました。

【PharmaTribune2012年4月号掲載】

無菌設備はなくても在宅活動はできる!

 つぼみ薬局には無菌調剤設備はありません。起業にあたり、私の一番の想いとしては「自宅で最期まで自分らしく」でした。その中で、「もしも自分が終末期を迎えて自宅で過ごすとしたら、沢山の管に繋がれた状態は嫌だな!」という気持ちもありました。なので、起業当初「無菌調剤」は頭の中の検討項目にも入っておりませんでした...。

 しかし...。開局して一度目の夏、それまで在宅で関わっていた患者さんが次々に入院されました。仕事がなくて、会社の預金口座の残高も減っていき、「このままでは潰れてしまう!!!」という焦りから、往診をしている医師に「どなたか、患者さんをご紹介いただけないでしょうか?」とお願いをしたことがありました。

 その際、医師からいただいたお返事は、「がん末期の患者はどうしても塩モヒの注射が必要になったり、TPN(中心静脈栄養法)輸液が必要になってくるので依頼が難しい」塩モヒの持続点滴の注射剤が作れないと在宅緩和のお役に立てないのかと、悔しい気持ちになりました。一方で、「実際に設備を作っても、その後も仕事があるのだろうか」とも考え...そんな問答をするうちに日々の仕事に追われるようになり、無菌設備について考えることもなくなりました。

 その頃から「つぼみ流」ができあがっていったのかも知れません。

 つぼみ流とは...。とにかく患者様についてしっかりアセスメントを行うこと。その結果、患者さんの薬の管理・服薬上の問題点が抽出され、背景にある介護サービスとの連携がとりやすくなると思っています。

 在宅の患者さんが安心して療養できるような環境は、薬剤師が1人で奮闘しても作れません。医師をはじめ、ケアマネ、訪問看護師、介護サービス事業者とお話しして、薬剤師として求められている仕事や自分の立ち位置をしっかり見極めなければ、かえって患者さんを混乱させてしまうことにもなりかねないとも思います。これは、在宅患者さんのみでなく、薬局にみえる患者さんや入院中の患者さんへも当てはまりますね。

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 例えば、実際にお宅を訪問すると分かることですが、「薬カレンダー」の一元的な管理は難しいものです。

 今回関わり始めた、じき百歳を迎える患者様の話をしましょうか。この患者さんの主介護者は認知症。まずは、医師の指示通り服薬できることを目標に、環境の整備から始めました。

 日にちの見当識が低下しているので、一包化包装に日付を入れてみる。しかし、うまくいかないので傍にカレンダーを置く。何度も繰り返し同じ質問をされるので、答えをメモ書きにして、よく目に付く薬カレンダーへ貼り付けてみる...。医師の指示通りの服薬ができるように、患者さんと一緒に「ああでもない」「こうでもない」と試してみます。しかし、よかれと思って行ったのに、訪問看護師さんからお電話で「おくすりBOXがかえって混乱を招いてるわよ!」なんて叱られたこともありました(~_~;)

 こんな私に何ができるのか...。そう思って不安が募ることもありましたが、今は胸を張って「薬剤師がね、家に行くと皆さんとても喜んでくださるんです♪」と言えるようになりました。がん末期のような点滴での治療が必要な患者さんばかりでなく、認知症、老々介護などの患者さんも、薬剤師が在宅へ出向くととても喜んでくださいます。

 しかし、私たち薬剤師の仕事を、他の介護職の方々は、まだまだ遠くから凝視しておられます(笑)。薬剤師1人ひとりが今できることを1つずつ行えば、「困っているのだけれど、どうしたらよい?」と声をかけていただける!そう信じて日々猛進中です(^^ゞ

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 そんな毎日の中で、時折思い浮かべる患者さんがいます。開局当初より関わっている2人です。ひとりは74歳,卵巣癌摘出術後ケモ施行から3年経った昨年末,膵臓に転移が見つかった方。もうひとりは73歳,昨年子宮頸癌摘出後ケモ4クール終了時に骨転移がわかり、その後は放射線照射と抗がん剤を併用。今回PET検査を行ったところがんが消えておらず、抗がん剤の治療を終了された方です。

 このお2人とのこれからの関わりの中で、在宅療養を一緒に模索するうちに、無菌設備についても違った考え方が見えてくるのかも知れないな...とも思っています。

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