新規登録

膨らむ薬剤費、削減の鍵は食事指導や処方調整

第63回日本透析医学会学術集会・総会

2018年07月30日 14:10

 日本の国民医療費は2013年度から40兆円を超えており、医療費高騰への対応が大きな課題となっている。特に医療費の伸び率は高いとされるが、とりわけ多様な合併症を示す透析患者は多剤処方になりやすく、残薬を抱える例が少なくない。そして処方された薬が活用されず、症状が改善されないために、さらに処方錠数や残薬が増えるという悪循環に陥ることもある。第63回日本透析医学会(6月29日~7月1日)では、透析患者の薬剤費や残薬の実態と、その対処法としての処方調整などについて、薬剤師らの講演が行われた。

医療費は血液透析患者で高く、薬剤費は腹膜透析患者で高い

 医療法人あかね会土谷総合病院(広島県)薬剤部の鎌田直博氏は、同院の透析患者について、医療費に占める薬剤費の割合と実態を報告した。

 検討の対象は外来の腹膜透析患者60人、血液透析患者491人、腹膜透析と血液透析の併用患者52人で、3カ月の医療費と、その中の薬剤費の割合が調査された。1人当たりの月間医療費は、血液透析患者:38万2,084円、腹膜透析患者:34万8,127円、併用患者:40万2,748円で、腹膜透析患者の医療費がやや安価だった。そのうちの薬剤費は、順に8万9,829円(約24%)、20万5,872円(約59%)、20万7,571円(約52%)と、腹膜透析患者で血液透析患者の倍以上になることが明らかになった。そこで、薬剤費の内訳を見ると、腹膜透析患者と併用患者では人工透析用薬(透析液)の比率が高く、これを除くと薬剤費は7万~8万円程度と大きな差はなくなった(図1)。また、エリスロポエチン製剤、リン吸着剤、シナカルセトの比率が高かった。

図1. 透析患者1人当たりの薬剤費の比較

180730_fig1.png

(医療法人あかね会土谷総合病院のデータを基に編集部作成)

 同氏は「透析患者の薬剤費は高額で、特に透析液の比重が大きい」と述べ、「透析液以外では、エリスロポエチン製剤、リン吸着剤、シナカルセトなどが目立つが、これらは透析効率の向上や食事指導の徹底などにより使用量を削減できる」と考察した。

処方調整で高リン血症治療薬16億円以上節減の可能性

 医療法人順天会放射線第一病院(愛媛県)透析室臨床工学技士の渡部優作氏は、同院の外来透析患者58人の残薬実態調査について述べた。約60%の患者は薬が多いと感じており、飲み忘れることがある人は45%だった。余った薬を「家に置いている」「捨てている」と回答した41人から残薬を回収したところ、1万1,899錠、薬価換算にして86万3,351円にも上ったという。多かったのは、錠数では高リン血症治療薬(3,280錠)、次いで便秘治療薬(3,224錠)で(図2)、金額では瘙痒症治療薬(34万8,691円)、高リン血症治療薬(22万1,895円)だった(図3)。

図2. 残薬の錠数の内訳

1807030_fig2.png

図3. 残薬を薬価換算した金額

1807030_fig3.png

(図2、3とも医療法人順天会放射線第一病院のデータを基に編集部作成)

 そこで、便秘が解消している患者には、便秘治療薬を頓服または休薬したり、患者の病態やライフスタイルなどに合わせて、高リン血症治療薬の薬剤変更をするといった処方調整を行った。その結果、残薬があった群は、高リン血症治療薬の内服錠数と1日の総内服錠数が減少し、それでも血清リン酸値も次第に低下したという。

 なお、今回の残薬実態調査では処方日数の調整もされ、1年間で節減された薬剤は18種、5,232錠に上った。当初、残薬錠数が最も多かった高リン血症治療薬は3,498錠、薬価換算で28万9,048円削減された。これを全国の透析患者数33万人に当てはめると、16億4,455万5,000円となり、大幅な医療費削減につながる可能性が示された。

 同氏は、残薬実態調査は患者のライフスタイルやパーソナリティーの把握に有効であり、それに基づいて処方調整を行えば、患者の予後向上と医療費抑制の両方を実現できると結んだ。

トップに戻る