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僕がアツい理由とは?

アツい薬局をつくったる!#9 神田佳典 絵・ぺお

2018年08月07日 08:00

 まいど!薬局の管理薬剤師、無駄にアツいけいしゅけ(@keisyukeblog)です。

「けいしゅけって、松岡修造っぽいよなぁ、アツいとこが」と言われることがしばしばあります(編集者Hさんにも)。確かに、自己を振り返ると、変に前向きで情熱的なところ(暑苦しいとも言える)があると思います。夢を追うのが好きで、夢を具現化するために泥臭く努力することがメチャクチャ好きです。

 しかし、よくよく考えてみると、僕の根底にある欲望は「死んでもいいって思えるくらい生き抜きたい!」なのだと気付かずにはいられません。それは、僕が自らの死と否応なく向き合った経験に基づく願いだからです。

 今回は、僕がアツい変態ひとになったルーツをお話ししますね。

876320_fire.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像シンゾウの異変...食いたいが食えない!バーミヤンラーメン

 僕は、ある難病を抱えて生を授かりました。「ファロー四徴症」という心臓に4つの奇形を伴う疾患です。詳しい病態についてはググってみてください。2歳半で根治手術を受け、「なんか胸に手術痕があるけど、まぁいっか」と、自分を障碍者だなんて微塵も思うことなく育ちました。

 しかし、大学受験に失敗した19歳のことです。中華レストラン・バーミヤンで友人と食事をしていると、バーミヤンラーメンが一口だけで満腹になり、食べられなくなりました。実際に満腹になったわけではなく、食欲もあるのに...です(もったいない!)。

 その後も異変が続きます。階段を上ると気分が悪くなる、胃の辺りが猛烈に気持ち悪い、電車の振動ですら胸のあたりになんともいえない気持ち悪さを感じる。

 何かがオカシイ...そういえば、定期検診やったな、診てもらうか。

876320_fire.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像生きたい!男子トイレの個室に籠もった19歳の夏

蝉の声が騒がしい蒸し暑さ最高潮の8月、毎年定期検診を受けている東京女子医大に行きました。体調がひどく悪いので、親に付き添ってもらいながらの受診です。19歳の男子が親と病院に行くだなんて、気恥ずかしいものです。しかし、そんなの言っていられないレベルで調子が悪く、お願いだから一緒に来てほしいと伝えたのです。

 すると、診察室にはエンマ大王が...いや、よく見たら医師だったのですが。

「神田くん、君の心臓の状態はハッキリ言って非常に良くない。歩いているだけでもいつ意識を失うか分からんよ。最悪の場合は死んでしまうこともある。入院して精密検査をしよう。結果次第では手術が必要だ」

 子どものころから年に1度顔を合わせる医師の顔は、これまでに見たことのない真剣な表情でした。全身から血の気が引く思いとはこのことか...まさか歩いているだけで死ぬかもしれないような状態に?自分の心臓が健康な人のそれとは違っている事実を、人生で初めて認識した瞬間でした。

 診察室を出て、会計処理を待つ間に「ゴメン、ちょっとトイレ行ってくる」そう親に伝えて個室に籠もりました。いつもより元気がない声で「そうか、行っておいで」と母。隣で父はこわばった表情で座ったままでした。そんな両親の気持ちに気が付きつつも、張り裂けそうな思いを胸にトイレに足早に移動しました。当時、この病院のトイレは造りが古く、壁は青っぽい灰色のタイル張り。今の感情にベストマッチ...って笑えません。

 最悪の場合は死んでしまうこともある? 僕って19歳で死ぬのか。

 え?ちょっとまって、待ってよ!!

 まだ大学行ってないよ。車の免許取ってないし。もちろん就職だってしてない。今の僕って社会的には何者でもなくって、大人として自立できてないのだ。将来、当たり前にするんだろうと思っていた結婚だって...いつか、自分に顔が似ている子どもを育てたかったんだけどなぁ。

 ...おいおいマジかよ、なぁんもできてねぇじゃねぇか!生き抜けてねぇぞ!!

 コンビニなんかよりずっと近くに「死」が「ある」現実を叩きつけられた。誰かのではなく、自分自身の死を。呪文や魔法で蘇ることができる2Dの世界のフィクションなんかで見る死などではなく、正真正銘リアルな死がスグそこまで迫っているのだ。

 無性に怖くなって、無性に生きたくなった。でも、どうしていいかサッパリ分からない。ただ...ただ怖い。自分が「無」になるのが、怖い。怖いと感じたり、考えたりすることすらない「無」になるなんて。

 19歳の僕は、ただただ、声を殺して泣き続けました。永遠に続くような暗く重いブルーな気持ち。用を足す以外の理由で男子トイレの個室に籠もったのは初めてのことでした。たくさんの涙をトイレに流した後には、今まで生きてきた中で、最も生きたいと願う自分と出会いました。

...られるか。

死んでられるか!

まだ生きて、やりたいって思えることに命を燃やしたい!! 自分がやれることは何だ? それに向かってできることならなんでもやりたい!

 僕の中に、アツい欲望たちが芽生えた瞬間でした。外で命の限り精一杯鳴く、蝉の声がやけに大きく耳に響いていました。

 その後、幸い無事に手術を乗り切った僕は、術後のダメージで思うように動かない体のおかげで自動的に2浪になったものの、大学に無事合格し、薬剤師になりました。家族全員が笑顔で収まる大学の卒業式での写真は、今も実家の玄関に飾られています。そして現在、僕はすっかり元気になった体で、毎日忙しい業務を楽しんでいます。

 けど、忘れていません。僕のそばにはいつだって「死」があることを。そんな僕を取りまく家族も、僕と同様に、あるいは僕とはまた違った形で、悩み、苦しみ、嘆き、でも受け容れざるをえない現実と向き合いながら、僕の命を支えてくれていたことを(今だって支えてくれているのは家族です)。命は自分のためだけにあるものではない、その実感も、僕に強い影響を与えました。だから、これからは自分のためじゃなく、家族はもちろん、誰かのためにこの命を燃やしてみたい!!アツい欲望の芽が力強く成長したのです。

876320_fire.jpgのサムネイル画像目の前の患者さんを家族同然に支えたい!薬剤師になった僕

 僕が薬剤師として描く夢は、家族の死を前に、全力を尽くせるようになることです。目の前の患者さんも、僕の家族と同様に、誰かの家族なのですから。完全に自分の家族のようにはいかなくとも、どれだけ親身になれるか?これが医療従事者としての薬剤師けいしゅけの存在意義じゃないかなと思っています。

 それじゃ、薬剤師の僕にできることってなんだろう?きっとそれは「その場にいる人たちの意見を聞き、徹底的に悩むこと」なのではないだろうかと考えています。治療を受ける家族、治療に当たる医療従事者、そして自分や見守る家族たち。それぞれが治療について、とことん悩み切る。納得のいく死を迎えるために。死を迎えるまでの時間を生き抜くために。

 その考えを実行するために、僕は薬剤師として、医療人として、分野を問わずさまざまなことを学び続け、悩み続けたいと思います。学んだ知識やエビデンス、身につけたコミュニケーションスキルといった専門性に加えて、経験や感情といった、それぞれの人にとって多様な価値を持つその他モロモロ全てを総動員して、どれだけ深く共に悩むことができるか。医師や看護師、患者さんの家族と悩みながら、どのような話や提案ができるか。患者さん自身の考えや気持ちを汲み取れるか。

 避けられない死との対峙が非常に辛いものであることは(近いものを経験した者として)容易に想像できます。でも、絶対に訪れるのですよね。だからこそ、全ての人に等しく与えられた死という未来に向かって、今、自分にやれることをやりたいのです。くどいようですが、誰かのためにアツく自らの命を燃やせるだけ燃やしたいと僕は願うのです。

 あの日、東京女子医大の男性トイレ個室で、19歳の男子は思いました。「死んでもいいって思えるくらい生き抜いたぜ!なんてこと、何もしてないじゃんオレ!!」と。

 そして2018年、34歳になったオッサンは思います。「今やれることを躊躇なく全力でやろう。どうせなら、自分だけのためじゃなくって、誰かのために生きよう。『この人生、自分なりにやれるだけのことはやったんちゃうかな』って思いながら最期の日を迎えよう」

...アツい変態ひと、薬剤師けいしゅけはこうして誕生したのです。

【コラムコンセプト】

けいしゅけが仲間たちとつくる理想の薬局!そこに待ち受けるさまざまな困難とは?困難に真っ向から対峙しさらなるアツさをたぎらせるけいしゅけが繰り出す必殺技の数々、震えて待て!

【神田佳典氏プロフィール】

keisyuke_prof_white.jpg総合病院前の調剤薬局で薬局長として働く薬剤師。2度の心臓手術を乗り越えて与えてもらった人生。誰かのためにその時間をアツく生きると決めました。薬剤師として誰かの役に立つにはどうしたらいいのだろう?そこで出会ったのがEBMであり、所属しているAHEADMAPでした。Passion×EBM×仲間が生み出すエネルギーを武器に、アツい調剤薬局をつくると日々奮闘中です!

ブログ:けいしゅけのブログ薬局

Twitter:@keisyukeblog

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