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薬剤師がスポーツの世界に踏み込むための5つのアイデア

フィットネス、体力測定、理学療法的アプローチ、学校薬剤師、女性の健康

2018年08月23日 09:50

 

2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年。「ホスト国の薬剤師として何かしたい!でもスポーツの世界とは縁がないし...」と、諦めていませんか?国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Science; JISS)に勤務するスポーツファーマシストの上東悦子氏が、トップアスリートに触れる日々の業務の中で見えてきた、地域薬局ならではの役割について教えてくれました。

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 上東悦子氏(国立スポーツ科学センター

薬剤師がスポーツの世界に踏み込むための5つのアイデア

  1. 地域薬局がスポーツを介して健康サポートを
  2. 薬剤師がスポーツの世界に踏み込むための5つのアイデア
    ◆フィットネスクラブと組んでみる
    ◆薬局で体力測定・ロコモテスト
    ◆アライメントの指導など理学療法的アドバイス
    ◆学校薬剤師として踏み込む
    ◆女性アスリートへの介入
  3. スポーツファーマシストとして真のサポートを

地域薬局がスポーツを介して健康サポートを!

 アンチ・ドーピング活動だけが薬剤師とスポーツの接点ではない。アスリートと日々接する上東氏は、地域薬局だからこそできる、スポーツ(運動)との関わりがあるという。

「日頃運動しない人が薬局に気軽に立ち寄って、健康チェックをしてもらう。簡単な体操を教えてもらう。つまり、自分の今の身体の状態を知ってセルフケアにつなげていく。薬局が、そんなきっかけを作る場所になれたらと思うんです。それが健康増進や生活習慣病の予防・改善になり、将来的には医療費の削減につながるのではないでしょうか」。

 同氏は、地域薬局が、健康ステーションの拠点になるための具体的なアイディアを示してくれた。

フィットネスクラブと組んでみる

薬局とスポーツジムが連携を図りながら運動を推奨していく。もしくは、薬局にトレーナーを招いて、健康増進につながる運動指導を行う。実際にスポーツジムと共同でサービスを行う薬局もある。

<参考>

薬局で体力測定・ロコモテスト

 薬局の待ち合いスペースで体力チェックをする手もある。片足立ち、長座体前屈、上体起こしなどを測定し、平均値と比較して自分の体力が何歳相当か分かる。

 ロコモティブシンドロームもチェックシート(ロコチェック)を使えば、薬局で手軽に運動器の機能を確認できる。ロコモティブシンドロームの予防には、毎日の運動習慣とバランスの良い食生活が大切。

 体力測定やロコモテストをきっかけに、自宅でできる運動や食事・栄養の話につなげることができる。

図1.jpg

<参考>

アライメントの指導など理学療法的アドバイス

 姿勢を評価するアライメントチェックを取り入れても面白い。アライメントチェックスクリーンがあると、薬剤師でもアドバイスが可能だ。「このままでは膝・腰が悪くなりますよ」、「閉経後は関節が硬くなります」「日常生活でのこういう運動が予防につながります」とアドバイスをし、健康増進に役立てる。

 「家に人が住まなくなるとその家は使い物にならなくなるのと同様に、人も動かなくなると体の色々なところがサビ付いてきます。まずはサビそうなところをチェックして、そこを日常の生活で使うような具体的な提案ができればいいですね」と上東氏は語る。

<参考>

学校薬剤師として踏み込む

 平成25年度から、高等学校学習指導要領の体育理論に「オリンピックムーブメントとドーピング」が盛り込まれ、学校教育において「スポーツの価値」「アンチ・ドーピング」に関する教育が始まった。学校薬剤師が、養護や保健体育の先生と上手くコミュニケーションをとり、授業をさせてもらうのも1つのきっかけになる。高校生は医薬品に関する知識が乏しいので、難しい話は必要なく、ネタはたくさんあるはずだと上東氏は言う。

<参考>

◆女性アスリートへの介入

女性アスリートの三主徴

女性アスリートの健康管理上の問題点として、「low energy availability(利用可能エネルギー不足)」「無月経」「骨粗鬆症」があり、「女性アスリートの三主徴」と呼ばれている。JISSが国内トップレベルの女性アスリート683名を対象に実施したアンケートで、無月経を含む月経周期異常のある人は約40%を占めることがわかった。アスリートに限らず、中高生のダイエットでも低エネルギーとなり、月経が止まることはある(3ヶ月以上月経がない場合や15歳でも初経が来ない場合は、産婦人科を受診することを勧める)。

成長期の女性に対しては、「女性アスリートの三主徴」の予防について啓発し、トレーニング強度・頻度などの調整や体重コントロールを心がけるよう指導してはどうだろうか。バランスのとれた食事や、運動によるエネルギー消費量に見合ったエネルギー摂取量の維持についての助言も重要だ。

月経困難症の相談窓口として

 女性アスリートに限らず、婦人科疾患の悩みを抱えつつも婦人科を受診するのは敷居が高く、どこで悩みを相談してよいかわからない女性は多いと思われる。「ピルを使ってみたい」「生理痛がひどい」「経血が非常に多い」「生理前の症状がつらい」など悩みは幅広い。

 幸い薬剤師は女性が多い職種。薬局に、「生理前の症状・生理がつらい、ピルを服用してみたい、などのお悩みは気軽に薬剤師にご相談ください。女性薬剤師がご対応いたします」といった張り紙などでアナウンスをして、女性特有の悩みに寄り添い、解決する窓口になるとよい。もちろん薬剤師は、月経困難症や月経コントロールのためのホルモン療法について、服薬方法、副作用、飲み忘れの対応等を服薬指導できるよう知識を得ておくことが必要だ。

 こうした女性アスリート特有の悩みに対応できる産婦人科医はどこにいるのか?女性アスリート支援委員会は、一定の講習を受講した医師をウェブで公開しているという。

<参考>

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「薬局にアスリートが来たら、禁止物質かどうかだけではなく、いかにしてベストなコンディションに持っていくかを提案できる知識を身に付けることが、真の意味のサポートに繋がっていきます」

スポーツファーマシストとして真のサポートを

 スポーツファーマシストは、組織としての活動の場がない。たった1人でスポーツという違う世界へ足を踏みいれることに躊躇してしまうのは当然かもしれない。国体、インカレ、インターハイなど、より身近な地元のイベントをきっかけに、地域の体育協会やスポーツ団体との関係性を築く努力が必要だとなる。

 「スポーツは全くの別世界で、ルールや文化も違います。何かの小さなチャンスを見つけて、自分は何ができるかを伝えつつ入っていく。別の世界に入るには困難が伴いますが、コミュニケーション力を磨いてぜひ開拓者になってほしいですね」と、上東氏は語る。

 さらに、「地域薬局で取り組める小さな行動から始めることで、将来的に健康増進、そして医療費削減につなげることができると思います。運動を勧める場所、地域のコミュニケーションの場として気軽に立ち寄れる薬局が理想ではないでしょうか」と、運動指導という取り組みを取り入れた、新たな薬局の在り方に期待を寄せた。

【取材日2018年6月19日】

上東氏がJASSで行っている業務はこちらの記事で紹介。
トップアスリートを世界に送る薬剤師

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