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がん患者の「すがりたい気持ち」をどう受け止める?

2018年08月24日 08:00

がん患者の「すがりたい気持ち」をどう受け止める?

協力 ◎ 福井繁雄

このシリーズは、

byouin ICON.png薬局での外来ケモ対応に関する病院とのやり取り(記事:内服抗がん剤を院外対応する重圧
患者 アイコン.png薬局でのがん患者さんへの対応の2本立てでお届けします。
 

患者 アイコン.png牛車腎気丸の在庫がピンチになった理由

波山さんは40代。大腸がんの術後化学療法中で、 XELOX〈内服:ゼローダ® 点滴:オキサリプラチン(エルプラット®)〉+アバスチン®(ベバシズマブ)を受けている患者さんだ。うちの薬局には半年くらい前から来ている。その処方監査をしていたときのこと。

あれっ? 牛車腎気丸が出てる。牛車腎気丸って、しびれと下肢痛で透析患者さんに出てたよなぁ。排尿困難で泌尿器科から処方されたこともあった。いままで波山さんに出たことないよな。確認してみるか。

僕:波山さーん。お待たせしました。今日はいつものお薬の他に牛車腎気丸が出てますね。先生はなんとおっしゃってましたか?
患者:牛車腎気丸がしびれに効くってネットの記事に書いてあったから、先生に聞いてみたんだよ
僕:そうなんですね。
患者:役立つ情報は携帯で常にチェックしてるからな!

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波山さんは、携帯電話で病気に関する情報を収集し、研究を重ねている。
手足症候群に対して処方されたケラチナミン®の軟膏にレモンやはちみつなどを加えたオリジナルの軟膏を作り、毎日ケアしているという。「今は、レモンのかわりにグレープフルーツを入れて試してるんだよ」などと、配合を変えたときも逐一報告してくれる。オリジナル軟膏のおかげか、色素沈着していた指先の黒さが少し白くなってきているのが見てわかるほどだ。

外来ケモの患者さんが来るようになって強く感じるのは、患者さんやそのご家族のいろんなものにすがりたいという気持ち。OTC薬やサプリメントはその代表だけど、医療用医薬品との相互作用で何が起きるかわからない。何も起きないかもしれないし、起きるかもしれない。なにかをよりどころにしたいと考える患者さんの気持ちをどう受け止めて、どこまで許容し、行き過ぎたときにどうやってストップさせるか...。考えてはいるけれど、明確な線引きは難しすぎる。

波山さんの服薬指導が終わって次の監査にかかると、別の患者さんにも牛車腎気丸が出ていた。
珍しいこともあるな...と思っていたら、牛車腎気丸の処方箋が続けざまに舞い込んできて、あっと言う間に在庫がなくなってしまった!
あわてて後輩に発注を指示する。外科の先生が牛車腎気丸の効果を思い出したのかもしれない。
患者さんの気持ちに思いを馳せている場合ではなかった...。

※手足症候群(handfoot-syndrome)
抗がん剤によって手や足の皮膚細胞が障害されることで起こる副作用のこと。症状は、掌や足の裏の感覚が鈍くなったり過敏になる、ヒリヒリ、チクチクする、赤く腫れ上がる、皮膚にひび割れや水ぶくれが生じて痛みが出る、色素沈着や爪の変色や変形が生じるなど。

【福井繁雄氏プロフィール】

薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。

【研修会】

日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センタ0受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)

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