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小さな町の理想的な薬剤師のあり方

2018年08月29日 11:30

葉っぱのアイコン (1).png小さな町の薬局での新しい出会い

ジョージ:『ヘイ、シンペイ、うちの薬局を継いでみないかい?』

 ジョージは、Fraser Lakeにある薬局のオーナーかつマネージャーで、今年70歳を迎えます。

 Fraser Lakeは、ブリティッシュコロンビア州北部にある人口1,000人前後の小さな町です。 バンクーバーから車で10時間程度離れた、良く言えばカナダの大自然の中、悪く言えば過疎地に位置しています。

 今回、知り合いの薬剤師からここで働いてみないかとオファーを受け、ジョージと知り合いました。オーナーのジョージは皆にとても優しく、カナダでは新人薬剤師である私にも優しく接してくれます。

 これまでにバンクーバー内の幾つかの薬局を見てきましたが、ここは特に患者もスタッフも皆とても思いやりがあります。

私はここの薬局の実践の方法がとても気に入っているので、今回の記事でぜひ紹介したいと思いました。

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Fraser Lake
山と湖が非常に美しく、ハイキングやフィッシング、カヌーなどが楽しめるキャンピングエリア。
都市部から多くの観光客がバケーション時に訪れる。

葉っぱのアイコン (1).png大型チェーン薬局での薬剤師の働き方

 少し話は遡りますが、私が薬剤師インターンだったとき、いわゆる大型チェーンの薬局で働いていました。しかし、その頃からカナダの薬剤師の働き方に関して、徐々に疑問を感じるようになっていました。

 都市部に多くある大型チェーンの薬局では、最小限の薬剤師とテクニシャンの配置、最低レベルの給料しか払われていないところも少なくありません。結果として、利益重視型の環境下で、薬剤師も必要最小限の時間しか患者と関わることができていないのが現状です。

 あれだけ大学で勉強してきた、『モニタリング』『充実した服薬指導』が十分にされていないのです。

 単純に医師からの処方箋をただ調剤するだけのカタチにとどまっており、実は日本もカナダも薬剤師が抱えている悩みはそんなに大きく変わらないのではないか、と感じるようになってきました。

aoyama13_2.pngFraser Lake Medicine Centre Pharmacy
村の中心部に位置し、住民のお薬相談やその他、医療についての相談を請け負っている。

葉っぱのアイコン (1).png再び認識したコミュニケーションの重要さ

 カナダの薬剤師の働き方に疑問を感じている折、Fraser Lakeでジョージと出会いました。そして、ここの薬局の実践の仕方が、私が理想としているものに非常に近いものだと気づいたのです。

 では、ここの薬局の実践は一体、何が違うのでしょうか。

 それは、まずコミュニケーションの量です。薬剤師が一人の患者に使うことのできる時間が非常に多いのです。コミュニケーションを取ることで、次のアクションを取ることができます。

今日はどうされましたか?』

 ここから、疾患を知ることができます。疾患が分かれば、正しい薬が処方されたかどうかが分かり、その疾患についての標準治療を頭から引っ張ってくることができます。それがFirst lineなのか2nd lineなのか、費用の安価な治療なのか。そこから患者との対話を始めることが可能です。まさに、薬剤師が活躍できるところです。

 これまで、『モニタリング』など難しいことを書いてきましたが、結局、一番大事なことはコミュニケーションを取ることだと再度認識しました。コミュニケーションは全ての始まりだと思います。

 ジョージはいつも言っています。

『薬剤師は自分たちの価値を低く見過ぎている、自分たちのやっている事に自信を持てば良い。そうしたら自然に、私達は患者や医者ともコミュニケーションを取るようになる』

 確かに、医師に疑義照会をすることや、自分の分からないことを患者に聞くことには躊躇してしまうかもしれません。私自身、勉強不足で未だに毎日新しい発見があり、患者から、『この薬は「●●●」のために使っているのですよ』と言われて、「なるほど!」と思うことも多々あります。

 しかし、自分のやっていることが正しいと自信を持てるならば、分からないことを分からないままにしておくより、患者を一番に考え、『聞く』という行動に移るのではないでしょうか。

 これからの記事では、実際に出会った症例について紹介していきたいと思います。

【コラムコンセプト】

薬剤師を取り巻く環境は日本と海外で違う。しかし、やっていることは本質的には同じ。患者のために薬を調剤し、鑑査し、投薬 (服薬指導) する。そして、その薬物療法を評価し、医師や他の医療従事者とより良い治療方法を再考していくこと。カナダの薬剤師事情を紹介しながら、日本での業務に取り入れられる方法を考えるコラム。

【プロフィール】プロフィール写真.jpg

1986年生まれ。名城大学薬学部卒。日本の病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストアで勤務した後、カナダへ留学。スプラットショーカレッジの薬剤師アシスタントプログラムを介し、Loblow pharmacyでインターン研修。2015年ブリティッシュコロンビア大学(UBC) CP3コース終了後、2016年カナダ薬剤師免許の取得。

blog: SHAWN'S WORLD
Twitter:@shinshinskysky

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