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COPDガイドラインの改訂で薬物療法に変化

2018年08月30日 15:55

「健康日本21(第二次)」において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)はがん、循環器疾患、糖尿病と並んで対策を必要とする主要な生活習慣病として位置付けられている。しかし、2011年にGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)日本委員会が行った調査では、日本におけるCOPDの認知度はわずか25%であり、健康日本21では2022年における認知度を80%まで向上させることを目標としている。東北大学大学院呼吸器内科学分野教授の一ノ瀬正和氏は、日本ベーリンガーインゲルハイムが開催したメディアラウンドテーブルにおいて、2018年4月に改訂された「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第5版」の改訂ポイントおよび国際共同試験における日本人データの特徴について解説した。

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LAMAが第一選択薬となり、ICS投与は喘息病態合併例に限定

 COPDは呼吸機能の低下により身体活動性の低下や運動耐容能の低下を来してQOLを悪化させる。また、活動性の低下は慢性的な全身性の炎症状態の要因となり、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病/パーキンソン病、がんなどの併存症を惹起するため、COPDの早期の診断と早期の治療介入が求められる。

 ガイドラインにおける管理目標は、現状の改善として「症状およびQOLの改善」「運動耐容能と身体活動性の向上および維持」、将来のリスクの低減として「増悪の予防」「全身併存症および肺合併症の予防・診断・治療」が掲げられている。管理目標の達成は進行抑制や生命予後改善につながることが期待されている。

 安定期における具体的な管理方法はの通りである。重症度については呼吸機能検査における1秒量(FEV1)、運動耐容能、身体活動性に加え、息切れの程度や増悪の頻度も考慮して総合的に判断するとしている。

図. 安定期COPDの重症度に応じた管理

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〔日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版作成委員会(編), COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版, メディカルレビュー社, 東京, 2018.4〕

 非薬物療法については、禁煙指導、インフルエンザあるいは肺炎球菌ワクチン接種による増悪の抑制、生活指導による活動性の向上と維持、呼吸リハビリテーションが推奨される。進行した症例では酸素療法、換気補助療法、外科療法を考慮する。

 治療の中心となる薬物療法については、長時間作用性気管支拡張薬の投与による気流制限の解除が基本となる。一ノ瀬氏は「この考え方は2004年に改訂された第2版から最新の第5版まで継続して推奨されている」と述べ、具体的には長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)を投与すると解説した。

 なお、両剤の気管支拡張作用は同等とされており、第4版ではLAMAとLABAの推奨度は同等であったが、POET-COPD試験(N Engl J Med 2011; 364: 1093-1103)やINVIGORATE試験(Lancet Respir Med 2013; 1: 524-533)により、増悪の抑制についてはLAMAの方が優れていることが示されたことから、今回の改訂によりLAMAが優先されることになった。

 吸入ステロイド薬(ICS)については、第4版では閉塞性障害が高度で増悪頻回症例に対して上乗せするという位置付けであったが、LAMA(チオトロピウム)、LABA(サルメテロール)、ICS(フルチカゾン)の3剤を投与する群と3剤のうちICSのみを漸減する群を比較したWISDOM試験の結果、増悪の発生率に差は認められなかった(N Engl J Med 2014; 371: 1285-1294)。これらを踏まえ、ICSの投与は変動性のある呼吸器症状や40歳以前の喘息の既往、IgE陽性や好酸球数の増加といった、喘息病態の合併が疑われる場合に考慮すると変更された。

LAMA/LABA配合剤の効果は日本人においてより顕著

 続いて一ノ瀬氏は、国際共同試験における日本人データについて解説した。LAMA単剤(チオトロピウム)とLAMA/LABA配合剤(チオトロピウム/オロダテロール配合剤)を比較したTONADO試験(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2016; 11: 2017-2027)、DYNAGITO試験(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018; 13: 2147-2156)では、いずれも全体集団と比べて日本人集団では男性が多く、年齢が高く、BMIが低く、現喫煙者が少なく、重症度はやや軽度で、LAMAの使用頻度が高く、ICSの使用頻度が低かった。

 治療効果については全体集団、日本人集団ともにLAMA/LABA配合剤投与群の方が優れていたが、全体集団と比べて日本人集団では効果の差が大きかった。この結果について同氏は「前治療におけるLAMA使用の頻度が高く、ICS使用の頻度が低く、現喫煙者が少ないという日本人集団の特性によるものではないか」と推測した。

(Medical Tribune Webより転載)

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