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「地域を支える薬剤師」第1歩は学校薬剤師から!

2018年09月06日 08:00

「地域を支える薬剤師」第1歩は学校薬剤師から!

 みどりや薬局 清水雅之

 みなさま、こんにちは。みどりや薬局の清水です。 098599.png

 私が所属している島田薬剤師会の域内には小中学校が20校と高校が4校あり、各校の学校薬剤師として、島田薬剤師会会員が活動をしています。他地域の薬剤師と話をしていると、「どうしたら学校薬剤師になれるの?」と聞かれることが度々ありますが、島田市では学校薬剤師に挙手する薬局は決して多くなく、市内の会員薬局に「1薬局で1校は受け持ちましょう」と割り振られているような状態です。

 私の担当校は、島田市中心部を学区とする島田第二中学校。生徒数616人(2017年度)の中学校で、私の母校でもあります。もちろん私の自宅周辺は学区に含まれるので、街で私を見かけた生徒が声をかけてくれたり、患者として薬局に来ることがしばしばあります。

098599.png 門前の薬学生、習わぬ検査をこなす 

 学校薬剤師を始めたのは、薬剤師免許を取得してまだ3年目くらいだったと思います。実は、その時には学校薬剤師が行う空気検査やプール水検査などの業務について、ある程度のノウハウを持っていました。というのも薬学生時代、当時学校薬剤師をしていた母の業務に同行し、受け持ちの中学校で検査の補助を何度か経験していたためです。おかげで、学校薬剤師を委嘱された当初から、検査手順などでの苦労は少なくて済みました。

プール水検査.JPGプール水の検査は苦労なく行えるようになりました

098599.png 大量発生するコバエとのバトル、軍配は......

 学校での衛生検査は、薬学生時代のちょっとした経験と、県薬の資料やテキストなどのおかげで比較的良い滑り出しでしたが、学校薬剤師の仕事はそれだけではありません。

 健康サポート薬局での業務と同様に、学校からいろいろな相談や質問を受けます。その内容は、熱中症の相談、インフルエンザについて、それからプール浄化装置、水道、給食室の消毒に関する質問など、さまざまです。

 ある日学校から薬局に相談の電話がありました。

「学校でコバエが大量発生しているのですが、なんとかなりませんか?」

ーーコバエ?大量発生??

 状況を確認するために車で学校に向かったところ、駐車場に着いた段階で異常に気が付きました。回りに停まっている車の窓やドアに、多くのコバエが確認できました。付近を見回り、養護教諭に詳しい話を聞くと、2~3日前から急にコバエが増え出し、今では油断すると、授業中の生徒の口に入ってくるほどまでに増えたそうです。

 とりあえず、「排水溝などのコバエがわきそうな場所を消毒する」といったアドバイスを行うとともに、業務用のコバエ誘引殺虫剤の設置と窓用虫除けスプレーを手配しました。

 状況を確認するために車で学校に向かったところ、駐車場に着いた段階で異常に気が付きました。回りに停まっている車の窓やドアに、多くのコバエが確認できました。付近を見回り、養護教諭に詳しい話を聞くと、2~3日前から急にコバエが増え出し、今では油断すると、授業中の生徒の口に入ってくるほどまでに増えたそうです。

 とりあえず、「排水溝などのコバエがわきそうな場所を消毒する」といったアドバイスを行うとともに、業務用のコバエ誘引殺虫剤の設置と窓用虫除けスプレーを手配しました。

 2日経ってもあまり状況が改善しないので、次の対応を考えていると、学校の近所に住んでいる患者さんからコバエは学校だけでなく、付近一帯で発生しているとの情報をいただきました。

 学校内だけの発生であれば発生源への防虫対策で対処できたかもしれませんが、付近一帯となると、行政を含めた対応が必要になります。そこで、市教育委員会に相談を持ちかけたのですが、コバエの発生率は自然に下がり、いつの間にか騒動は沈静化していきました。

 予想外の事態への対処という意味ではいい経験になりましたが、人為の及ばないところで、ある出来事が発生し、収束するという自然の力を見せつけられた一件でした。

※学校薬剤師のための虎の巻(学校環境衛生Q&A)2010
http://www.shizuyaku.or.jp/gakuyaku/shiryo.html#a

お茶アイコン.png 薬学講座は今の活動の原点 

 学校薬剤師の仕事の中で、特に力が入るのが薬学講座です。薬学講座では、学年などにあわせて「薬の適正使用」「酒・たばこ」「薬物乱用」などをメインに講義します。私は、これらに加えて「アンチ・ドーピング」についても話しています。

 学校薬剤師を始めたころは、県薬剤師会作成のスライド(静岡県薬剤師会のウェブサイトからダウンロードできる)などを使用していました。しかし、学校の要望や社会的背景などを考慮して話そうとすると、既存のスライドでは補いきれず、途中からオリジナルのスライド構成を用いた講座になっていきました。

 今では、学校に限らずさまざまな場所で人前に立って話すようになりましたが、最初に大勢の前で自分の知識や経験を話す機会を得たのが、学校薬剤師としての薬学講座でした。ある意味、この経験はスポーツファーマシスト活動や健康サポート薬局としての活動の原点といえるかもしれません。

薬学講座02.JPG
生徒の前で講義する。現在のスポーツファーマシストや健康サポート薬局としての活動の原点は、学校薬剤師だ。

お茶アイコン.png薬学講座のクライマックスは、やっぱり実験

 薬学講座ではスライドを使った講義のほか、薬物相互作用などを視覚的に理解してもらうための実験を行います。薬学講座の中で、一番盛り上がる場面です。

 今年行った実験は、「お茶と鉄剤(フェルム、フェロミア)」、「炭酸水とアンブロキソールドライシロップ」と、おまけで「炭酸水とメントス」。

 「お茶と鉄剤(フェルム、フェロミア)」については皆さんご存知の通り。かつては鉄分とタンニン酸が結合しキレートを形成するため、吸収が阻害される可能性が示唆されていましたが、現在は吸収に問題はないと言われています。しかし、お茶に鉄剤をいれると黒くなる視覚的な説得力は大きく、薬物相互作用を説明しやすいため、私の薬学講座では定番の実験です。鉄剤を他のお薬に置き換えて話すことも可能です。

 さらにフェルムカプセルとフェロミアでは、それぞれの製剤的な特徴により、相互作用の発現時間に差があります。このような現象について、生徒が自ら結果を予想し、実験をして、結果を考察することにより、正しいお薬の使い方、さらには科学や薬学に興味を持つきっかけになってくれたらいいと思います。

薬学講座実験お茶と鉄剤03.JPGお茶と鉄剤の実験をする中学生

 

 「炭酸水とアンブロキソールドライシロップ」と、おまけの「炭酸水とメントス」に関しては、もしやったことがないのであれば、ぜひとも実験をしてみることをお勧めします。その際は、雑巾の準備をお忘れなく。

薬学講座実験アンブロキソールDS炭酸水.JPG炭酸水とアンブロキソールドライシロップの実験、生徒の腰が引けるのもうなずける結果に...

薬学講座を楽しんでくれる積極的な生徒たち
098599.png

 薬学講座は、学校薬剤師の他の仕事とは違い、生徒たちと直接の交流ができます。そこで私が驚いたのは、彼らの積極性です。

 実験の手伝いや意見を求めれば、多くの生徒が"われ先に"と挙手してくれます。さらに、講座終了後にも寄ってきて質問をしたり、患者として薬局に来たときに薬学講座の話をする生徒もいます。

 正直、私が中学生だったころには、自分を含め、これほど積極的に薬学講座に取り組んでいた生徒はいなかった気がします。養護教諭にそうした話をすると、「以前は大きなニュースになった薬害や、麻薬覚せい剤などを取り上げていたが、生徒たちには現実味が感じられなかったのだろう。最近は、タミフルによる異常行動や危険ドラッグなど、実生活においても起こりうるような問題が増えているため、生徒にとっても薬について学ぶことの必要性が認識されるようになった印象だ」とのことでした。

098599.png"地域を支える薬剤師"としての第一歩を学校薬剤師から! 

 学校薬剤師活動は、薬剤師の持つ公衆衛生の知識や技能を活用することができ、薬物乱用や薬の適正使用、アンチ・ドーピングの知識を地域に還元できるよい機会です。

 公衆衛生の知識は、災害時に薬剤師に期待される能力の1つですが、平時において活用できる機会は限られています。災害医療などに関わる薬剤師は特に、日々の鍛錬の意味を込めて、積極的に学校薬剤師活動に関わっていくべきだと思います。

 また、学校薬剤師業務では生徒をはじめ、先生方や学校関係者などと交流を持つことができます。その結果、地域との繋がりが生まれ、薬局・薬剤師として、さまざまな地域活動に参加しやすくなります

 学校薬剤師は、今、社会から求められている"地域を支える薬剤師像"の基本となるものだと思います。もし、学校薬剤師に興味のある薬剤師や薬学生は、まず知り合いの学校薬剤師に補助として同行させてもらうのもよいかもしれませんね。

薬学講座.JPG

これからも奔走をつづけます!

【コラムコンセプト】

みどりや薬局はごくごく普通の家族経営の薬局。周りの薬局とちょっと違うのが、健康サポートに力を入れていること。特に最近はスポーツファーマシストとしての活動からの健康サポートに励んでいます。数多くの失敗を経験しながら、スポーツファーマシストとしての地域への貢献を試行錯誤する奔走気!

【清水雅之氏プロフィール】みどりや薬局様2枚目.jpg

1984年生まれ。お茶と大井川とSLのまち島田市で家族経営の薬局みどりや薬局を営む。生まれ育った島田市を健康サポート薬局として支えるため、日々奮闘中。少年時代に出場したレスリングの全国大会に多くのオリンピアンがいることを知り、アスリート支援に興味をもちJADA公認スポーツファーマシストを取得。スポーツファーマシストとして活動する中、発明&実験好きの血が暴走してしまいうっかりドーピング防止カードゲーム「ドーピングガーディアン」を開発。スポーツファーマシストや薬剤師の新たな可能性を探索しています。

みどりや薬局
 https://www.facebook.com/midoriya.m2020/

ドーピングガーディアン
 https://www.doping-guardian.com/

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