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化学療法中の発熱には要注意!

2018年09月07日 10:50

化学療法中の発熱には要注意!

協力 ◎ 福井繁雄

このシリーズは、

byouin ICON.png薬局での外来ケモ対応に関する病院とのやり取り「イヤな予感的中」
患者 アイコン.png薬局でのがん患者さんへの対応「ルル飲んでええかな」の2本立てでお届けします。
 ※実話をもとにしたフィクションであり、"僕"以外の登場人物の名前は仮名です。

患者 アイコン.png「ルル飲んでええかな」

今回は,外来ケモの患者対応を始めて間もない頃の苦々しい思い出を語ろう。

せわしなく監査をしていたある日のこと。悲劇は、突然鳴りだした電話から始まった...。

患者:もしもし、大灘ちゅうもんや。ちょっと風邪気味なんやけど、ルルのんでえぇかな。
僕:大灘さんですね。風邪気味?大丈夫ですか?
患者:あぁ、大したことないんじゃ。ちょっと熱が少しあるだけで。
僕:そうですか。えーっと、ルルは家の近くで買ったんですか?飲んでも構いませんが、つらくなったら夜でも病院の救急に行ってくださいね。銘柄はなんですか?
患者:新ルルエースじゃ。おぅ、わかってるわ、救急な。ほいじゃまた。

大灘さんは直腸がんの術後化学療法中の患者さん。なにかと電話をくれるちょっとした有名人だ(関連記事「ワカ末のんでもいい?」)。薬局での話を病院薬剤部や主治医に伝えたところ、治療に役立つということになり、連携のきっかけになった人でもある。

ルルはアセトアミノフェンが主成分だから、抗がん剤との相互作用はそんなに心配しなくても大丈夫だろう。病院薬剤部に電話をかけ、大灘さんとのやり取りを報告した。病院もいつもながら忙しい。「担当に伝えておきますね」と言われ電話を切ったが、一抹の不安がよぎった。




大灘さん、風邪だって言ってたけど、熱が少しあるんだよな。熱...。
00_p10_11_外来ケモ_150.jpg

ルルの成分は今飲んでる薬とは問題ないと思う。でも、抗がん剤の影響ってことは...?ルル飲んでいいって言ったけど、もしかしてまずかったかも。いまさら心配になってきた...!

とは言っても、目の前には監査待ちの薬がたまっている。とりあえず、仕事を片づけてから考えることにした。

byouin ICON.pngイヤな予感的中。やはり怒られてしまった...。

大灘さんのことは気になってはいたが、業務に追われてフォローできずにいた。電話から2日後、病院薬剤部との外来ケモミーティングの日になってしまった...。
ミーティングに行く直前、意を決して薬局長にモヤモヤしていたことを相談すると...。

「なんでまずいと思った時点で相談しないの。抗がん剤の影響で発熱することは知ってるでしょ」
怒られた...。となると、病院でも怒られるだろう。先行きに不安を抱えたまま、急いでミーティングに向かった。ミーティングの参加者は病院のがん専門薬剤師の南さんと僕の2人。早速、大灘さんとのやり取りを報告すると...。

「発熱があったんですか?!もし白血球数、特に好中球数が下がっていたら感染症になりやすいし、発熱は重要なポイントなんです。病院に来るようにちゃんと伝えてもらわないと...困ります」

「もちろん大灘さんには病院に行ってくださいとは伝えたんですけど...」
「もっと強く言ってください」
「ハイ...、以後気をつけます...」

南さんに怒られたということは,主治医と病院薬剤部長にも謝罪しなければならない。気が重い...。臍を固めた僕は、主治医を廊下でつかまえて事情を説明すると
「患者さんが思う症状がこちらの認識と違うことはよくあることなんだよ!発熱したときは必ず病院に来るように言ってな」
「ハイ...、以後気をつけます...」

次は薬剤部長。部長室で事情を説明すると「発熱ですか...。ケモの患者さんの熱は、今後の治療に関わる重要な情報ですからね。風邪とか喉が痛いとか言われたときは、熱があるかないか確認してください
「ハイ...、以後気をつけます...」

薬局長をはじめ、いろんな人に怒られた...。がっくり肩を落として薬局に帰る僕。いやいや、感傷に浸っているヒマはない。怒られた原因は...。『ルル』と言われて相互作用しか確認しなかったことだ。相互作用にばかりに気をとられて、抗がん剤が原因かもしれない発熱のことを見過ごしてしまった。それに、『とりあえず』目の前の仕事を優先してしまったことも良くない。疑問を感じたら、すぐに対処だ!

病院関係者に謝罪に回った翌日、大灘さんが処方箋を持ってきた。早く病院に行ってくれてよかった、とほっと一安心しつつ、よりによって翌日かよ!と、余裕ができた心の中でノリ突っ込みしながらカウンターに向かった。
「大灘さん、お待たせしました」苦笑いで服薬指導を始めたのは言うまでもない。

01_PT21_p40_41_外来ケモ.jpg

抗がん剤投与中の発熱

アルキル化剤や代謝拮抗薬のような抗がん剤は,細胞の増殖を阻害する作用を持つ。がん細胞は正常細胞に比べて細胞周期が短いため,これらの薬剤はがん細胞に特異的に作用することが期待されるが,骨髄や腸管粘膜,毛根などのように細胞周期の比較的短い正常細胞にも影響を及ぼすことになる。骨髄細胞がダメージを受けた結果が"骨髄抑制"で,赤血球,白血球,血小板などの産生機能が低下する。このうち,白血球(特に好中球)が減少した場合,細菌感染を防ぐことができなくなり,感染症発症の結果としてかぜ様症状が現れる。特に38℃以上の発熱は重要な指標であり,重篤化を防ぐために直ちに抗生剤等を投与する必要がある。

【福井繁雄氏プロフィール】

薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。

【研修会】

日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センタ0受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)

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