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子供の12人に1人が薬物相互作用リスク

 米国の小児期・思春期における薬剤使用の実態は明らかでなく、米・University of Illinois at Chicago准教授のDima M. Qato氏らは2万例を超える規模の調査に乗り出した。その結果、小児期・思春期の約12人に1人は併用による薬物相互作用のリスクがあると判明、Pediatrics (2018; 142: e20181042)に報告した。同国では、薬剤による有害事象が小児期および青年期の死因の1つとなっているが、併用療法に関する最新情報の不足が改善されれば薬剤を安全に使用することができるという。

この記事のポイント

  • 対象はNHANESに登録された患児
  • 薬物相互作用は医薬品情報データベースMicromedexで特定
  • 急性期の処方では特に抗菌薬が減少
  • 156の薬剤に「薬物相互作用の可能性あり」
  • データベース上、薬物相互作用として「自殺」が把握されていない

対象はNHANESに登録された患児

 米国では小児期の一般的な疾患や青年期の慢性疾患(うつ病や注意欠陥多動性障害など)、急性期疾患(呼吸器や性感染症など)に対して、しばしば治療薬が処方される。いずれも有効性が示されている一方、まれではあるがセロトニン症候群、自殺念慮、突然死といった重篤な副作用の報告もある。薬剤の有害事象は、米国の小児期および青年期における死因の1つでもある。

 Qato氏らは、小児期・青年期の薬物治療に関するこれまでの研究課題として、①急性期および慢性期における薬剤併用に関する記載がない②小児期と青年期、男女別に分けた処方情報がない③薬物の併用に伴う相互作用を検討していない―を挙げている。

 そこで同氏らは今回、米国民保健栄養調査(NHANES)に参加した小児期・青年期男女のデータを用いて処方薬の安全性を評価した。

薬物相互作用は医薬品情報データベースMicromedexで特定

 対象は、2003~14年のNHANESに参加した0~19歳の男女2万3,152例。急性期は処方期間が30日以内、併用療法は2剤以上の処方と定義し、対象の保護者が処方に関する調査に回答する形式で行った。なおデータは、期間(2003~04年、2005~06年、2007~08年、2009~10年、2011~12年、2013~14年)、年齢(0~5歳、6~12歳、13~19歳)、男女で層別化し、併用禁忌または薬物相互作用の発生率を評価した。薬物相互作用は、世界で使用されている医薬品情報のデータベースであるMicromedexを用いて特定した。

急性期の処方では特に抗菌薬が減少

 直近の2013~14年のデータを解析した結果、小児および青年の19.8%(786例)が30日以内に最低1回、定期的に薬剤が処方されていた。慢性的な薬剤使用は13.9%(528例)、急性期の使用は7.1%(299例)であった。

 薬剤処方率は、5歳未満の14.7%に対し13~19歳では22.8%と、年齢とともに増加していた。主な処方薬は、気管支拡張薬やロイコトリエン受容体拮抗薬を含む呼吸器系薬、中枢神経刺激薬や抗うつ薬などの向精神薬であった。その他に使用されていたのは抗菌薬、外用薬、副腎皮質ステロイド薬、避妊薬、消化器系薬、アドレナリン受容体作動薬、鎮痛薬、制吐薬、糖尿病治療薬であった。

 Qato氏らによると、2003~04年に比べて、2013~14年における急性期の薬剤処方率は有意に減少し(10.9% vs. 7.1%、P<0.01)、特に抗菌薬で減少が顕著(7.9% vs. 4.8%、P<0.01)であったという。

156の薬剤に「薬物相互作用の可能性あり」

 併用率は2003~04年の9.9%に比べ、2013~14年では7.5%と有意な減少が見られた(P<0.01)。併用率を年齢と性で層別化したところ、最も高かったのは6~12歳の男児(11.9% vs. 6~12歳の女児4.7%、P<0.01)であった。

 併用薬の内訳を見ると、中枢神経刺激薬と向精神薬の併用率は6~12歳の男児では23.7%で、13~19歳の男子では57.6%に認められた。一方、女性では13~19歳における両薬併用率が51.2%と、最も高かった。

 処方薬剤のうち、156種類で826例(禁忌29例、潜在的な重篤性797例)が薬物相互作用の可能性があると判定された。2009~14年の993例における併用療法のデータに基づき、薬物相互作用の発生率を算出したところ、8.2%(12人に1人)であることが示された。そのほとんどが抗うつ薬との併用であり、主に急性期に処方されていた。抗うつ薬併用による主な相互作用はQT延長である。

 さらに併用による薬物相互作用の発生率は、思春期の男性に比べ女性で有意に高いことも分かった(6.6% vs. 18.1%、P<0.05)。

データベース上、薬物相互作用として「自殺」が把握されていない

 薬物相互作用の発生が思春期の女性で顕著であった要因について、Qato氏らは「三環系抗うつ薬を投与中の思春期の女性では、急性期の治療薬としてマクロライド系薬、制吐薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用する割合が思春期の男性より高いためである」としている。また、自殺リスクの上昇が報告されている薬剤の併用例が認められ、抗うつ薬が処方されている思春期の女性の半数以上が向精神薬またはホルモン避妊薬を併用していた。

 同氏らは、今回は併用による自殺例は認められなかったとした上で、Micromedexを含む既存のデータベースでは薬物相互作用として自殺が把握されていないと指摘。「精神科医を含む医師は、うつ症状を呈する思春期の患者に薬剤を処方する際に、併用による薬物相互作用としての自殺リスクを十分に考慮していない可能性がある」と考察している。

(Medical Tribune Webより転載)

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