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服薬情報提供書の返事が来ない なぜ!?

ハロー薬局薬局長 町田和敏

2018年09月27日 10:00

皆さんいかがお過ごしでしょうか。釜石の薬剤師、町田でございます。

このコラムでは、私が経験した事例の紹介を数回に分け、私がどのように考え、行動したのかを書いていきます。

今回紹介するのは、80代男性のAさん。当薬局をかかりつけにしてくれていましたが、入院後に外出を避けるようになりました。

図1_Aさん_180921.jpg

Aさんがどんな方だったかを忘れてしまった方は、前回のコラムをさらっとお読みください。今回は、この事例に対する私の対応を紹介します。

machidashi_4.JPG世界遺産である橋野高炉跡。
近代製鉄の父といわれる大島高任(おおしまたかとう)の技術指導により、1858年から翌6年にかけて建設された。
最古の洋式高炉跡として、国の文化財(史跡)に指定されている。入場無料!

患者さんとお話しするため、自宅へ訪問

奥様からAさんの状態を聞き、私はまず本人と話してみたいと思いました。

そこで、奥様から退院時処方が何日分あるのか確認し、処方箋受け付け日の翌日に、自宅を訪問がてら薬をお持ちすることにしました。

当薬局をかかりつけとしているものの、かかりつけ薬剤師の同意も、まして居宅療養指導の契約もしていません。しかし、苦しくて歩けなくなったAさんの様子を見に行くために、訪問しようと考えたのです。

そして、Aさん宅を訪問してまず目に飛び込んできたのは、苦悶の表情を浮かべるAさんの表情でした。Aさんに声をかけながら、フィジカルアセスメントをしていきます。

脈拍は80/分、呼吸数が32/分。

本人が来局していた3月以前の脈拍や呼吸数のデータはなかったので、流れを見ることはできませんでしたが、苦悶の表情や呼吸数のデータからは、吸入薬の中止は果たして妥当だったのか?と疑問に感じました。

その後、Aさんから、今抱いている気持ちを確認しました。

「吸入薬がなくなったのは、特に説明はなかった。薬を減らすとは言ってたけど、やっぱり吸入の薬がないと不安だ」

薬を減らした医師の意図は?

ここで、医師の意図を考えてみました。

入院していた病棟は総合診療科。その総合診療科の医師は、過去に他院で呼吸器内科を担当していました。Aさんの年齢を考慮し、ポリファーマシー状態が引き起こすリスクを重く考えての判断だったのではないか、と思いました。

しかし、その意図は分かるものの、現状Aさんが感じている苦しさや抱いている不安感を考えると、対処方法としては少し急だったのではないでしょうか。このまま歩行時の呼吸苦を抱えながら歩く時間が少なくなると、筋力低下も心配です。奥様も、その点については心配していました。

まずは服薬情報提供書を用いて、吸入薬だけでも再開することができないか、医師に問い合わせてみました。

ーーしかし、返事はありませんでした。

医師に対して、「なぜ返事がないんだ?患者さんは苦しんでいるのに...」と思うことは簡単です。全国の薬剤師仲間と話していると、そんな思いで日々仕事をしている方がたくさんいます。しかし、医師にも都合がありますので「そんなことを言っていても始まらない」と思うようにしています。そう考えている間にも、患者さんは苦しんでいるのです。

machinotrainn.jpg

さて、皆さんなら、どのように行動しますか?

今回の私の行動は、第2回で紹介したプライマリ・ケアの5つの理念から考えると、近接性と協調性といった要素があるのではないでしょうか。患者さん宅に訪問したという意味での時間的近接性、患者さんの気持ちを引き出そうとした精神的近接性、医師への情報提供は協調性に属します。自分の行動を紹介し、自己評価のような形でプライマリ・ケアの理念に当てはめるというのは、何とも恥ずかしいものではありますが。

この後の私の行動は、次回に紹介したいと思います。引き続きお付き合いいただければ幸いです。

【連載コンセプト】
私たち薬剤師は、その存在意義について、多くの国民から懐疑的な目で見られています。薬剤師の存在価値とは何なのか、そんなことを考えながら、日々実践している活動の数々を紹介していきます。

また、実際に私自身が経験した事例を紹介し、そのときに考えたことも述べていきます。そして、なるべく読者の皆さんと一緒に考える場所にしたいとの思いから、『皆さんならこの場面でどう考えますか?』と投げかけた上で、次の回に私の行動を紹介するという構成で展開するつもりです。

と、ここまでコンセプトを書きながら、とても陳腐な文章になってしまいそうな予感がしますが、「へぇ、こんなことを考えている薬剤師がいるんだ」くらいの軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。そして、読者の皆さんに何か少しでも感じていただければと思っています。

【プロフィール】

machidashi.jpg

大学入試4浪、国家試験1浪、と落ちこぼれ街道まっしぐら。昭和薬科大学へ入学し、サッカー部で自称監督として、七面鳥フォークソング部ではVocal&Bassとして、大学生活を謳歌する。卒業後、縁もゆかりもない釜石へ。浪人時代に思い描いた、ドイツに留学し、サッカーの指導者になる夢を叶えるため、保険薬局で働いて留学資金を貯めようと試み、有限会社中田薬局へ就職する。

東日本大震災を経験し、釜石でのさまざまな人々との出会いを経て、「この地域のために薬剤師として、人として、何ができるのか」と考え始めて今に至る。中田薬局・地域包括ケア担当者。ハロー薬局薬局長。ケアカフェかまいし支配人。有志の勉強会・釜石コンテント代表。

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