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「便と一緒に出てきた!」

くすりが溶けてない!?

2018年09月28日 14:47

「便と一緒に出てきた!」

協力 ◎ 福井繁雄

このシリーズは、

byouin ICON.png薬局での外来ケモ対応に関する病院とのやり取り
患者 アイコン.png薬局でのがん患者さんへの対応の2本立てでお届けします。

 


患者 アイコン.png
くすりが溶けてない!

うちは麻薬処方箋を10年以上前から受けている。外来ケモ対応を始めてから、がんの痛みに対しての麻薬処方箋も受け取るようになった。麻薬が出ている患者さんは、「がんを告知されている」と隠さずに言ってくれる人が多い。

ある日のこと。調剤室の電話が鳴った。後輩の汐見くんが受話器を取った。

汐見くん:はい、白菊薬局です。

岩松さん:もしもし、岩松やけど、便と一緒に薬が出てきちゃったんだよ!

汐見くん:岩松さんですね。ちょっとお調べしますので、お待ちください。
 ......福井さん!岩松さんからお電話で、薬が便と一緒に出てきたって言っています。どうしたらいいですか!?

後輩の汐見君が薬歴を手に、慌てて駆け寄ってきた。岩松さんは大腸がんの患者さんで、1年半前頃からうちに来ている。

僕:こんなことは初めてだけど......。便と一緒に出てきたってことは、オキシコンチン®のゴーストピル※1かも!でも、岩松さん人工肛門なんだね......。ってことは、他の薬の可能性もないとはいえないかもしれないな。とりあえず、「薬の形がそのまま出てきても、成分自体は吸収されているはずだから問題ない」って答えておいて大丈夫(なハズ......)。念のために病院にも聞いてみるよ。

汐見君は、納得した様子で岩松さんに大丈夫だと伝えて電話を切り、僕は患者さんの波が落ち着いた頃を見計らって、病院に電話をして薬剤部の南さんに岩松さんの件を確認してみた。

南さん:岩松さんの処方内容だと、福井さんが考えた通りオキシコンチン®のゴーストピルだと思いますよ。人工肛門といっても、他の薬は胃で普通に溶けてしまうと思います。岩松さんは、結構神経質な方なので、次の受診のときに訴えてくるかもしれないですね。主治医に伝えておきます。情報ありがとうございます。

僕:いえ、そんな!岩松さんって神経質な方なんですね。気をつけて対応する必要がありそうですね......。

いつもは一方的に僕が情報をもらうばかりだが、今回は南さんに役立つ情報になったらしい。連携がうまくいっている手ごたえを感じて嬉しくなってしまった。

さて、その数日後。岩松さんが処方箋を持って薬局にやってきた。

処方内容をみると、オキシコンチン®が10mgから15mgに変更になっていて、1回5mg、1日3回(7時、15時、22時)になっている。オキシコンチン®は1日量を2分割して12時間毎に投与だから、適応外だ。

急いで疑義照会してみると、主治医は手術中でつかまらず、南さんも会議で不在。それならば、と製薬メーカーに確認してみると、副作用が発現しないように配慮した用量調節の可能性はあるとのこと。保険適用上は、10mgの次は20mgだが、実際には1.5倍量にして様子を見る先生もいるとの返答だった。そういうこともあるのかと調剤済みの薬を持って服薬カウンターに向かった。

僕:岩松さん、お待たせしました。今日は前回よりお薬が増えていますね。先生はなんて?

岩松さん:いやいや、ちっと前に電話したことやけどな。装具を交換するときにいつも便の状態を確認しているんやけど、あの時は下痢が続いていてなぁ。薬がきちんと溶けてないんじゃないかと心配でな......

僕:薬がそのまま出てきても、必要な成分はきちんと溶けているから大丈夫ですよ。また薬が出てくることもあるかもしれないので、心配ならまた電話してくださいね。ところで、お薬が1日3回になっていますね。

岩松さん:あぁ、それか。飲む時間が決められてるみたいやけど、俺は寝る前にテレビ見るからその時間に合わせてもらったんや。

僕:そうなんですね。飲み忘れないことが重要ですからね。じゃあ、このお薬は朝7時と3時と夜10時に飲んでくださいね。

確かに、岩松さんの処方はきっちり8時間ごとにはなっていない。でも、つい最近、オキシコドンは服用間隔をそれほど厳格にしなくてもいいと書いてある本を読んだばかりだった。岩松さんは、納得した様子で帰っていった。

南さんの会議が終わるころ、岩松さんの処方について問い合わせてみると、主治医は20mgにしたいが岩松さんの性格を考えて15mgにしたという。今後段階的に増量するか、オキノーム®散などのレスキュー※2を使っていく方針だそうだ。南さんの話ぶりから、岩松さんの納得を得るのに苦労した様子が伺えた。岩松さんの神経質ぶりは今のところ薬局では発揮されていないが、これからあるかもしれない......。

※1 ゴーストピル
薬の抜け殻のこと。しばしば便中に認められるが,有効成分の含有量は極めて微量で,臨床的には問題にならない。オキシコンチン®,ピーガード®でゴーストピルが報告されている。PharmaTribune 2010年12月(通巻24)号 p.57参照

※2 レスキュー
定期的に服用する医療用麻薬で痛みが十分緩和されていないときに使用する頓服の医療用麻薬のこと。がん疼痛治療には不可欠で,通常オピオイド速報性製剤を用いる。

【福井繁雄氏プロフィール】

薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。

【研修会】

日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センタ0受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)

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難しいがんの専門用語を学んでみよう→【いまさら聞けないがん治療関連用語】

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