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第14回 薬剤師、知ってる!

島々の住民と共に生きる〜長崎県五島市・薬剤師奮戦記 ゆうとく薬局 平山匡彦

2018年10月01日 08:00

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医師や看護師は知ってるけど

 平成23(2011)年に実施した薬剤師による「二次離島訪問調査」の際に、二次離島には薬剤師を知らないという人たちがとてもたくさんいたという事実に、正直驚き、悲しく感じました。私たち薬剤師は、今まで何をやっていたのだろうと真剣に悩みました。

 五島の多くの島には医師や看護師が常駐し、あるいは定期的に診療に行き、とても頼りにされています。つまり、二次離島という閉ざされた地域の中で、薬剤師がいなくとも、一応、医療が完結できているのです。

 医薬分業が進んだ現在も、いまだに「薬剤師不要論」「医薬分業不要論」を唱える人たちは絶えません。そして実際に、薬剤師に会ったことがない人たちもたくさんいます。

 私たちは、この二次離島の人たちに薬剤師の存在を知ってもらい、島にも薬剤師は必要なんだ、薬を使用するときには薬剤師に相談した方がいいんだ、薬剤師は役に立つ存在なんだ、ということを理解してほしいと考えました。もしこの閉ざされた地域でそれができないとしたら、日本中に薬剤師がいなくても医療は完結できると言われるように私には思えたのです。

 そこで思い立ったのが、二次離島住民を対象とした「お薬説明会・相談会」です。今回は、この「お薬説明会・相談会」をすることで、どのような変化が見られたのか紹介したいと思います。

薬剤師、知ってる?

 この調査では、お薬説明会に初めて参加した人たちに、説明会の前に「事前アンケート調査」を。そして、説明会終了後に「説明会終了後アンケート」に回答してもらいました。といっても、自分で書ける人はなかなかいないので、横について、読み上げながらのアンケート調査になります。

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調査票の質問を読み上げ、回答を聞き取りながら記入

 まず初年度の事前アンケート調査の結果では「薬剤師という職業を初めて知った」とする人が10.4%でした。なんと1割以上です。そして「仕事の内容についてはわからない」とする人が26.9%と、合計で37.3%の住民の方が薬剤師という職業を認識できていなかったことが判明しました。

 訪問調査で、かなりの頻度で「薬剤師?なんかそら」と言われていたので、ある程度の数字にはなるとは思っていましたが、まさか4割近くの人が、薬剤師の職業を認識できていないとは。もしかすると、気を遣って薬剤師さんを知っていると回答してくれた方もいたかもしれませんので、もっと多いのかもしれません。

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薬剤師がどんな仕事をする職業か、知っていますか?

 ちなみに、薬剤師の仕事として知っているのは「医師が指示した薬を患者に渡す」で53.7%、「医師が指示した薬に間違いがないか確認する」が35.8%、「薬と薬の飲み合わせを確認する」が32.8%、「一般用医薬品の相談・販売」に関しては13.4%しかいませんでした。学校薬剤師については、誰一人として認識していませんでした。これは、学校がない島がほとんどですので仕方がないのでしょうか。

薬剤師、知ってる!

 これが、お薬説明会を継続的に開催したことで変化が生じました。「医師が指示した薬を患者に渡す」については、1年目で79.6%となり、6年目では92.2%になっていました。

 「医師が指示した薬が問題ないか確認する」「薬と薬の飲み合わせを確認する」がともに62.2%でした。「一般用医薬品の販売・相談」については38.9%と伸び悩みましたが、二次離島の皆さんは、あまり市販の薬を使用していませんし、配置薬を使用する人も多いので仕方がないのかもしれません。

 「定期的なお薬説明会や相談会を行う」については、事前調査での11.7%から63.3%へとかなり増えてきました。お薬説明会・相談会が浸透してきたのかもしれません。

 そして「薬剤師という職業を初めて知った」は1.1%となり、「薬剤師という職業は知っているが仕事の内容はよくわからない」は3.3%となっていました。つまり、薬剤師という職業を認識できない人は5%未満になったというわけです。

 当初はお薬説明会での説明内容の中に、薬剤師の職業紹介のようなものも入れていましたが、3年目くらいからそれは省きました。参加する住民も入れ替わり立ち替わりなので、薬剤師を知らないという方も、なかなかゼロとは行きませんが、薬剤師の職業を認識してもらうということに関しては、それなりの成果ではないでしょうか。

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お薬説明会の中で、薬剤師はどんな仕事をしているかを紹介しました

 次回も「お薬説明会・相談会」を開催して見えてきたことについて、もう少しだけ紹介させていただきます。

五島曳船詩・福江島 城岳

トンビの目線でのんびりと遠くを眺めるのも悪くない。

 福江島の北部に位置する岐宿町に、スッとそびえる小高い山がある。城岳である。後に五島家となる宇久家の八代目、覚公が宇久島より南下し、福江島で最初に城を築いたことからこの名がついたとされている。

goto14_shitodakeroad.jpg城岳の登山道

 頂上付近には展望台があり、岐宿一円のほか、海の向こうには、奈留島や中通島など五島列島の島々を見渡すことができる。五島を統一した武将にとっては、これまでの戦ってきた道のりを眺めるのに最高の景色であっただろう。標高は216メートルと決して高くはないが、まっすぐそびえ立つその形状は、敵からの防御にはうってつけであっただろう。頂上に立ち、眼下に広がる景色の中に、船団を伴い北の方から攻めてきた者たちと、それを待ち受ける土地の勢力との激しい戦を想像するのも面白い。

goto14_observatory.jpg展望台からの眺め

 春になると桜が美しく咲き誇り、山を彩る。弁当を持って訪れるには最適である。

goto14_cherryblossoms.jpg城岳の桜

 展望台のデッキで弁当を広げていると、トンビが下からの風を受け、同じ目の高さで、悠々と空に浮かんでいる姿を見ることができる。すぐそばで見るトンビは、なかなかの迫力である。高いところからのんびり遠くを眺めたくなったら、城岳に登ってみるのも悪くない。城岳の頂上に立つと、トンビの目線で遠くを眺めることができるから。

【コラムコンセプト】

読者の皆さんは、薬局もなく薬剤師もいない離島があることを、そして、薬剤師とはどんな役割を担う医療者なのかを知らない人がいることをご存じですか。私は長崎県の五島列島にある福江島で、ゆうとく薬局という小さな薬局を経営している薬剤師です。長崎県薬剤師会離島対策委員会の活動として、東京大学の澤田康文教授との共同研究で、離島住民の医薬品適正使用に関する調査研究を行っています。これからしばらく、私の周辺で巻き起こったドタバタ劇を紹介させていただくことになりました。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

平山匡彦ひらやまただひこ氏 プロフィール】

大学では、写真部やハンドボール部など複数のクラブを掛け持ちするなど充実した学生生活を送る。卒業後は、石川県金hirayamatadahiko.jpg沢市の徳久和夫先生、綿谷小作先生に師事し、その後、郷里の長崎県五島市へ戻り、平成10(1998)年よりゆうとく薬局を独立開業。仕事の傍ら、友人たちとNPO団体を設立し、タウン情報誌の発行の他、さまざまな島おこし活動を行う。薬剤師会の活動としては、平成29(2017)年現在、一般社団法人長崎県薬剤師会理事及び一般社団法人五島薬剤師会理事を兼任。長崎県薬剤師会の離島対策委員会に所属し、東京大学の澤田康文教授の指導による離島住民の医薬品適正使用の調査をきっかけとして、現在、薬局がなく薬剤師が存在しないような島々を巡りながら、薬の説明会や相談会を継続開催している。

ゆうとく薬局:http://www.yutoku-ph.jp

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