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アトピー治療を"見える化"するアプリ『アトピヨ』とは?

2018年10月01日 14:30

 アトピーの患者さんは、見た目が気になる、24時間痒みが続くといったことから、家を出ることが難しくなってしまうことがあります。そんな患者さんの治療をサポートし、同じ悩みを抱える人たちをつなぐ、iPhone用アプリ『アトピー治療見える化アプリ-アトピヨ』が7月にリリースされました。

 無料で広告がなく、匿名で使えるこのアプリは、患者さん本人やアトピーのお子さんを持つ保護者を中心に、ダウンロード回数が約1,600に上っています(2018年9月現在)。公認会計士でありながら、アトピーを患った経験からアプリを開発したという、Ryotaro Akoさんに『アトピヨ』について解説していただきました。

この記事のポイント
・アトピー治療を"見える化"するアプリ『アトピヨ』が開発された
・治療経過を撮影し、診察時の資料として使える
・SNS機能も備え、患者さん同士で励まし合ったり、悩み相談ができる
・今後は、オンライン診療などのツールとしての展開も目指す

【Ryotaro Ako(リョウタロウ アコウ)さんプロフィール】

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公認会計士。エンジニア。3児のパパ。TechAcademy Contest 2018 Summer最優秀賞受賞。アトピー、喘息、鼻炎を経験し、患者会でボランティア活動を行う。環境アレルギーアドバイザー試験合格。本アプリ開発のためにプログラミングを学び、『アトピヨ』(App Store URL:https://goo.gl/xRJeyX)をリリース。https://www.atopiyo.com/

治療の過程を記録・共有する

―名前に「アトピー治療見える化」とありますが、どんなアプリですか?

Ryotaro:治療の経過を見える化するアプリです。ユーザーの方は既にそれぞれが治療をされていると思います。その治療経過を1年前、半年前、1カ月前、1週間前、今日というように、患部の写真をiPhoneで撮影してアップしていきます。その際、どういうところが気になったとか、薬や保湿剤は何を使ったとかコメントも入力できます。自分で日々、経過観察をする以外にも、病院で診察するときに、それを医師に見せて説明するといった使い方ができます。自分で治療をコントロールするイメージですね。

 それと、インスタグラムのように写真に対してコメントのやりとりができるので、他の患者さんと悩みを共有・相談するという、SNSとしての側面も持っています。

――どういった方に多くダウンロードされていますか?

Ryotaro:20~30歳代の女性が多いです。10歳代の方もいますね。今(2018年9月現在)1,600人ぐらいにダウンロードされていて、女性が6割というところです。見た目を気にする若い女性や、子どもがアトピーでどうしたらいいんだろう、という方が多くなっています。

――アップロードした写真やコメントは、基本的にユーザー全員が閲覧できるんですね。匿名でやりとりできるとはいえ、患者さんは患部の写真を見られることに抵抗を感じませんか?

Ryotaro:感じている方は多いと思います。やはり人に見せたくない、恥ずかしいという思いがあるから、投稿するのはとてもハードルが高いです。まだ正確なデータを取れていないのですが、おそらく9割ぐらいのユーザーは、自分で投稿せず見るだけだと思います。

 一方で、他の人の経過を見て参考にしたいという強いニーズは感じていました。一般的な質問サイトなどで文字で相談している人もいるのですが、例えば「患部がグジュグジュする」といっても、どれぐらいグジュグジュしているか、文字で説明されても分かりません。写真を見れば一目瞭然です。確かにハードルは高いですが、オープンにしてしまえば、的確なアドバイスを受けることもできます。だから、「画像」で見える化することとアプリの画像がサクサク動くことにはこだわっていました。

20181001_atopiyo_3.JPG指など部位ごとの患部の画像を閲覧できる。ビフォー&アフターの比較写真が表示できるようになっている

――例えばアプリでは、どのような相談がされているのでしょうか?

Ryotaro:「患部がグジュグジュして体液が出てしまったとき、その体液はどうしていますか?」というのがありました。こういう日常生活でのことって、限られた診察時間の中で、なかなか医師に質問できないと思うのです。開発に当たっては、医療が介入しにくい普段の生活をサポートしたいという思いもありました。

――写真を投稿しやすいように工夫されていることはありますか?

Ryotaro:なるべくスムーズに画像をアップできるようにしています。シャッターボタンを一番大きく目立たせて押しやすくし、撮影→体の部位のカテゴリーを選択→アップロードというように、アップまで3ステップにしています。それと、撮影した画像はiPhone本体にデータが残らず、クラウド上に保存されます。だから友達にiPhoneのアルバムにある旅行の写真を見せていて、急に患部の写真が混ざってしまうということがないんです。

 あと、これは操作についての工夫ですが、投稿するときに、自分の同じ部位の過去の写真を横スクロールで簡単にさかのぼれる機能があります。治療が長期になって画像が大量になると、1つ1つ写真をクリックして見るのは面倒なので、スクロールで経過を追いやすいようにしました。実は妻が薬剤師で、このスクロール機能は妻からのアイデアです。開発作業はかなり大変だったんですけど(笑)。

20181001_atopiyo_4.JPG患部の他、ユーザーの食事や使っている薬の画像もチェックできる

アレルギーの連鎖をストップしたい

――Ryotaroさんは公認会計士でもありますが、なぜアプリを開発しようと思ったのですか?

Ryotaro:自分がアトピー患者だったんです。さらに喘息、鼻炎も経験しました。こうした経験の中で、何か患者さんの役に立つことをしたいと思っていたんです。もともと理系でプログラミングをかじっていたこともあって、家で受講できるオンラインのプログラミング教室で学び開発に至りました。

――ご自身が経験された疾患の中で、なぜアトピーに絞られたのですか?

Ryotaro:今、国民の2人に1人は何かしらのアレルギーを持っているといわれています。また、アトピー、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎といったアレルギー疾患は、立て続けに発症することが多く、これは"アレルギーマーチ"と呼ばれています。アレルギーマーチのはじめにある幼児期のアトピーや肌荒れを防ぐと、その後の食物アレルギーになりにくいといったことが研究で分かってきて、そういう意味でアトピーが一番重要だと思いました。

 それと、アトピーは見た目にも影響するので、精神的にも辛いことが多いです。しかも発作のように一時的なものでなく、寝ている間も含め24時間痒みが続く辛さもあります。負担が途切れることがないので深刻ですし、だからこそなんとかしたかったのです。

――患者さんも多いですよね。

Ryotaro:世界中に患者さんがいて、この前キルギスの10歳代の女性からメッセージをもらいました。「このアプリは英語でやっていないのか」と。米国では、自分と同じ難病の方同士でメッセージをやりとりできる「PatientsLikeMe」というSNSが開発されているんですけど、日本や他の国にも、匿名でやりとりできるような疾患専門のSNSは必要だと思います。

――開発の裏話や苦労話を教えてください。

Ryotaro:私が最後にプログラミングをやったのは、もう15年ぐらい前で、今と全然違いました。勉強しだして最初の一カ月は分からないことだらけで、開発までの道のりが見えなくなってしまって「これ、終わるのかな?」って思っていました(笑)。

 それと、普通アプリをつくる場合は、ユーザーにアンケートやインタビューをして意見を取り入れるんですけど、アトピーという人のプライバシーにすごく関わる話だったので、アンケートやインタビューに答えてくれる人を探すのに苦労しました。限られた情報しかない中で、開発に踏み切るのは、いちかばちかの賭けのような気持ちでしたね。

 最終的には、ツイッターでアトピーの情報を発信している名の知れた方に協力していただいて、100人ぐらいに意見を聞きました。その方もいろいろな治療法を何年も試されて良くなったんですけど、その過程をブログの写真で分かるようにしていて、反響を集めていました。

 あとは、ママ友、パパ友にテスト段階で実際に使ってもらったり、アプリの名前やアイコンについての意見も聞きました。

20181001_atopiyo_7.jpgアプリのアイコンが描かれたTシャツ(世界に1着の非売品)を着てきてくれたRyotaroさん(左)。背中にはアプリのQRコードがデザインされている

診察時のサポート役を目指す

――いろいろな方の力が集まってできたのですね。今後、強化したい機能などはありますか?

Ryotaro:大きくは「医師のパソコンと連携する」、「アップされている画像をAIで分析する」「オンライン診療のシステムと連携する」という3つを考えています。今アップされているコメントを読むと、深い悩みや医師に伝えたいことがすごくたくさんあると感じています。投稿画像はクラウドにあるので、医師側のパソコンでも閲覧できるようにしておけば、投稿者が病院に行ったときに、医師のパソコンを一緒に見ながら診察を受けられる。コメントが書けますから、短い診察時間でも伝えたいことを伝えやすいですし、医師も症状の経過が分かるから診察の精度が上がると思うのです。

 AIについては、「赤みがある」「グジュグジュしている」「かさかさしている」「皮膚が硬くなっている」というような症状別に画像を整理して、さらに改善された人がやっていたことを拾っていけば、それぞれの症状ごとに有効な薬や治療法が見えやすくなるはずです。これも診察に役立つのではないかと思っています。

 それとオンライン診療を挙げたのは、症状がひどいときって、本当に仕事や学校に行けなくなってしまうんですね。だから需要はあると思います。しかも時系列に患部の画像が見えるから、診療の手助けになるはずです。いろいろと挑戦していきたいですね。

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