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成長するなら離島じゃない?―vol.1

小笠原・種子島ひとり薬剤師対談

2018年10月04日 13:40

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 離島の、しかも薬局に薬剤師が1人という状況で、熱い仕事に取り組んでいる方がいます。今年(2018年)5月までPharma Tribuneで連載『Ph.リトー1人薬剤師from小笠原』を執筆いただいた元・小笠原村診療所の小西良典さんと、種子島にあるのぞみ薬局公立病院前店の田中孝明さんです。お二人に離島で働き始めたきっかけから、離島で1人だからこそできる仕事、薬剤師のこれから、夢や趣味などなど、存分に語っていただきました。

 薬剤師として活躍したい! 患者さんやドクター、看護師からも頼りにされたい! と思っているあなたを奮い立たせてくれる3回シリーズ。初回はお二人のプライベートや小笠原、種子島について紹介します。

【Profile】
■小西良典さん(写真右)
1980年大阪府生まれ。大学薬学部卒業後、理学部の大学院に進学。博士課程中退。ドラッグストアなどで働きながら全国を旅し、2013年8月~18年3月まで父島の小笠原村診療所に勤務。再び各地を旅し、11月より仙台近くの薬局で勤務中。

■田中孝明さん(写真左)
1984年鹿児島県生まれ。大学卒業後、鹿児島市に本社があるとまと薬局グループに入社し、種子島でキャリアをスタート。2013年から、島内のグループ薬局・のぞみ薬局公立病院前店の薬局長に。座右の銘は「自分らしく」。

出会いのきっかけは『Pharma Tribune』

―年齢も近く、離島での勤務経験が共通しているお二人です。どうやって知り合ったんですか?

田中:『Pharma Tribune』誌が種子島に届いていて、小西さんの連載コラム『Ph.リトー1人薬剤師from小笠原』を読んだんです。面白い人がいると思って、編集部に電話して紹介してもらいました(同席した編集部員が「あの電話、田中さんだったんですね!」と思い出す)。それで「こっちに来る機会があったら、ご飯でも食べませんか?」と誘って、鹿児島にいらっしゃったときにお会いしました。

小西:小笠原村診療所を退職してすぐのころですね。今日会うのは、実は2回目です。

―まずはお二人のことを聞かせてください。ご趣味はなんですか? なんだかお見合いみたいですけど(笑)。

田中:僕、めちゃくちゃ趣味ありますよ(笑)。ずっとバスケをやっていて、お酒を飲むのも好きだし、旅行もします。読書も結構好きでビジネス書、小説、哲学書も読みます。知識が広くなるじゃないですか。今、ニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき」(河出文庫、2015)を読んでいます。難しくて理解しようとすると読めないので、そういうものかと思って読んでいます。あと僕、フルマラソンランナーです。

小西・編集部:えっ!? いつから始めたんですか?

田中:社会人になってから友達に「やろう」って言われて、「うん」って。初めて完走したときは、感動して泣きました(笑)

小西:僕は旅行が好きです。

田中・編集部:そうですよね(笑)。

小西:全国どこに行っても、初めての場所でも迷わない自信があります。あと、小笠原にいたときは暑くてあまり外出せず、家で語学とか資格の勉強をしていました。YouTubeの動画サイトとかで、ポルトガル語とかロシア語のテロップを見ながら辞書を引いたり。でも小笠原は船の便が1週間に1便しかないので、海外旅行に行くのは難しかったです

過酷さは種子島より小笠原が上?

―小西さんは小笠原で一人暮らしでしたが、田中さんはどうですか?

田中:妻と2人暮らしです。僕は鹿児島市出身で、妻は種子島で生まれ育ったので、距離的に移住が難しいとか、そういうのはなかったですね。

小西:家族を連れて島に移住となると、難しい部分はあるでしょうね。小笠原は、島で生まれ育ったという人が少ないんです。島に来てから出会う人が多い気がします。

田中:島の規模とか交通機関の充実度とかにもよるんじゃないですか。小笠原は船で24時間かかる"ガチの離島"ですが、種子島は大きいし、高速船が1日6便出ていて、本土まで1時間半で行けます。飛行機も飛んでいますし。種子島のさらに南の奄美大島も大きな島で、奄美薬剤師会の加入者が80人(奄美群島を含む。病院薬剤師は除く)いるんです。薬の卸会社もありますし、種子島とか奄美大島に移住して来る人は結構います。

―交通のお話が出ましたが、島内の移動は基本的に車ですよね?

小西・田中:そうですね、電車はないです。車とバスですね。

田中:タクシーもありますけど、あんまり遅くまで飲んだら、終電じゃなくて終タクというのがあるんです。タクシーがなくなっちゃうから、「もう歩いて帰るか」みたいな(笑)。歩いて帰れるところにしか、飲みに行かないですね。

小西:小笠原の路線バスは本数が少ないので、観光客も車かバイクを借ります。それで借りたバイクでけがをして、診療所に担ぎこまれるというのが、毎年ちょこちょこあります。

―ちなみに薬局はどれぐらいあるんですか?

小西:診療所に1カ所です。それ以外に薬店というのがありましたけど、つい最近閉店してしまいました。ちょっとしたかぜ薬とか湿布、酔い止めなんかが買えたんですけど、閉店後は診療所で診察を受けないといけなくなってしまって、一時期患者さんがどっと増えました。

田中:保険薬局は10軒で、それとは別にドラッグストアが7軒あります。薬剤師は基本的に各店1、2人じゃないですかね。1軒だけ大きな店舗があって、そこは9人ぐらいいます。ドクターヘリが来る大きな基幹病院の近くにある店舗です。小笠原の緊急搬送は自衛隊ですか?

小西:父島は、自衛隊所属の飛行艇が来ます。飛行艇が飛べない夜間はヘリですね。

田中:飛行艇! 映画の『紅の豚』でしか見たことないです。

小西:父島は飛行艇が来るんですけど、母島は昼間でも飛行艇が来られないので、硫黄島から自衛隊のヘリが来て、硫黄島で輸送機に乗り換えて、羽田か厚木基地まで行きます。

田中:まるで戦時中じゃないですか!

小西:搬送要請をかけてから都内の病院に搬入されるまで9時間ぐらいかかります。

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(編集部作成。注釈がないものは小西さん、田中さんのコメントより)

休暇の方がむしろ忙しい(汗)

―毎日お忙しいと思いますが、猛烈に忙しい日って、どんなふうにすごしているんですか?

田中:どんな日だろう、いつも忙しいから(笑)。予定が詰まっていて忙しい1日としては、朝8時ぐらいからメールチェックして、8時45分ぐらいから開店準備、9時から外来対応。昼食が食べられないときもあって、パンをガッと突っ込んで、午後からは医師や看護師と介護施設に回診、帰ってきて鹿児島での薬剤師会の会議に出席するために船着き場に急ぎ、船に乗って会議が終わるのが22時。次の日の朝7時の船で帰ってきて仕事する、というのが一番大変なパターンかな。

 僕、一応、鹿児島県薬剤師会の理事なんですよ。その関係の会議とかが定期的にあります。テレビ会議とかも考えてはいるみたいなんですけど、セキュリティの問題とか、回線が安定しないとかで、まだ厳しいみたいです。

小西:午後から休暇を取っておがさわら丸に乗船する日ですね。午前中の勤務が一番忙しくなります。8時から朝のミーティングが始まり、夜勤の看護師さんからの申し送りを受けます。終わったら外来が始まって処方箋が回ってくるまでの間、2階(診療所2階の入院病床と有料老人ホーム)の薬をバーっとつくりながら、メールをチェックして。外来の処方箋が回ってきたら、つくっては患者さんに渡すのを繰り返し、その合間にパソコンに向かって物資を発注します。このタイミングで発注しておかないと、自分が休暇から帰ってきて、さらに1週間納品無しで乗り切らなくてはいけません

―物資という言い方が、厳しい状況を物語っていますね。

小西:医薬品だけでなく、医療機器も含めて全部物資です。月曜はだいたい外来が延長して、終わるのが昼の1時を過ぎるんですよね。何度も点検した上で発注を済ませ、1時半ぐらいに職場を後にする、という感じですね。

田中:ダッシュで(笑)。

小西:どうしても間に合わなければ、とりあえず定時に一度診療所を抜けて乗船手続きを済ませに行ってから、残業しに戻ったこともありました。乗り遅れたら休暇がなくなるので、全部同時進行です。申し送り事項の紙を書いて、薬局担当の看護師さんが正午に帰る前に説明して。船に乗ってから東京湾に入るまでは電話が通じないので、その間は問い合わせとかはできないんですけど。

田中:タスクの凝縮がすごいですね。

小西:そんな日が年に2、3回は必ずあるし、船がドック入りする直前も発注で忙しいですね。ドック期間中は、3週間船が来ませんから。

田中:3週間! やばいですね。

小西:それを見越して在庫を計算しておかないといけないんですよね。でも、だいたいそういうときに限って抗生物質がどかっと出たりします。離島の特性として、感染症はどうしても拡大しますから

次の記事:島に来る理由なんて、なくていい

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