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セルフメディケーションが怖いアスリートたち

スポーツファーマシストの活躍を探る!Vol.1 中島 理恵氏(日本大学薬学部)

2018年10月04日 10:00

 スポーツファーマシストの活動は、トップアスリートに対するアンチ・ドーピング活動に限らない。トップアスリートに準じる各競技の上位クラスのアスリートはもちろん、部活動などでスポーツを行うジュニア選手に対するアンチ・ドーピングの教育も重要である。健全なスポーツを目指すためにアンチ・ドーピングをどのように教育していけばよいのか、日本大学薬学部の中島理恵氏に、研究者、そして教育者の立場からお話を伺った。

nakajima_rie_0.jpg 中島理恵氏(日本大学薬学部

アスリートはセルフメディケーションが怖い

ーー中島先生は、「製薬会社と薬剤師によるアスリートへのセルフメディケーション支援強化に向けた研究」を行われているそうですね。なぜ、このテーマを掲げられたのでしょうか。

中島 私はスポーツファーマシストでもあるのですが、その活動の中で、アスリートにとってセルフメディケーションのハードルは、高いのではないか」という仮説が浮かびました。

 アスリートは多忙で受診の時間はなかなか取れないといいます。一般の人であれば、ドラッグストアで自分の症状に合った薬を選んで購入できますが、アスリートは飲める薬が限定されています。医師に処方され、薬剤師に調剤された薬ですら「怖い」というのに、自己責任で服薬するリスクは取れません。結果として、痛みや症状によるつらさを我慢してしまうアスリートが多いのです。スポーツファーマシストに相談をしてくれればいいのですが、全ての病院・薬局に在籍しているわけではなく、そもそもスポーツファーマシストの存在自体がなかなか知られていないのが現状です。

 また、スポーツファーマシストが個人として対応できることには限界があります。では、この問題に対して研究者として関われないか、と考えたことが研究の起点にあります。

――研究内容を教えてください。

中島 地方大会経験者からオリンピックレベルの大会経験者まで、幅広いレベルのアスリートを対象にアンケートを取りました。また、スポーツドクター、公認スポーツ栄養士、監督、コーチ、顧問といった関係者にインタビューを行いました。その結果、アスリートのレベルによって、ドーピングに対する意識が異なるという実態が明らかになりました。

 トップアスリートは競技団体でアンチ・ドーピングに関する教育を十分に受けています。問題は、その一歩手前にいるような若手のアスリート、もう少しで国体に手が届くレベルの選手といった全国の強豪校に在籍する生徒や学生たちです。こうした方々は、急に記録が伸びて、突然ドーピング検査の対象になる場合があり、準備不足で戸惑うことがあります。このレベルのアスリートに対するドーピング教育が行き届いていないということが分かりました。

――関係者へのインタビューから分かったことを教えてください。

中島 強豪校ではスポーツ栄養士が学生選手やその親御さんに栄養指導をしたり、選手の体づくりに取り組んでいます。こうした活動を行っている栄養士と薬剤師が接点を持つと、サプリや薬に関する情報交換の機会も生まれます。

 多職種連携の仲介をしてくれるのは、顧問やコーチです。この、指導者の意識が非常に重要です。生徒たちの健康やドーピング問題を第一に考えている指導者は、関係者間の連携や薬剤師などの介入に理解があり、スポーツファーマシストとしての講演依頼の声をかけてくれることもあるのです。私の活動も非常に志の高い顧問の先生と出会って、最初の一歩を踏み出すことが出来ました。

――薬剤師はアスリートのセルフメディケーションをサポートするためにどのようなことを行えばよいでしょうか。

中島 まずは、早いうちからドーピングの正しい知識を伝えることが大切です。知識を持ってドーピング検査に臨むのか、ほとんど知識のない状態で受けるかにより、選手が受ける精神的影響には大きな違いがあるでしょう。

 それから、アスリートを支える人材にはスポーツドクターやスポーツ栄養士などもいて、実はとても充実しているということも周知させたいと思っています。アスリートにとって、こうしたサポートが受けられるということは心強いでしょうし、薬剤師においても、スポーツドクターやスポーツ栄養士と連携することは、アンチ・ドーピング活動の中でも重要な意味を持つと思っています。

次の記事では、中島先生が取り組まれている、アンチ・ドーピングに関するもう1つの研究について紹介します。
「日本大学のスケールメリットを生かしたアンチ・ドーピング研究」(後日公開)

中島先生の他のインタビューもチェック
学校薬剤師として、アンチ・ドーピングを教育する――地域のグループへの入り方は在宅活動と同じ!(後日公開)
アンチ・ドーピングを教育することの意義――どうしても勝ちたければ、幼稚園児と戦えば?でもそれで楽しい?(後日公開)

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