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インフルエンザ治療に革命は起きるか?

神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎

2018年10月10日 11:00

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 今年(2018年)の2月に厚生労働省が製造販売を承認したインフルエンザ治療薬バロキサビルマルボキシル(商品名ゾフルーザ。以下、バロキサビル)。早い実用化のために「先駆け審査指定制度」を利用し、驚くほどの短期間で承認、販売された。

 バロキサビルは従来のノイラミニダーゼ阻害薬とは作用機序が異なる、ポリメラーゼ酸性蛋白(PA)阻害薬である。In vitroではインフルエンザA、Bの両方に対する活性が確認されていて、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスにも効果がある。H5N1やH7N9といった国外の鳥インフルエンザにも効果があることが、動物実験で確認されている。

 しかし、あまりに早い審査・承認のためだったのか、添付文書を読んでもデータは「社内資料」ばかりで、査読を受けた論文が1つもない。これでは、海の物とも山の物とも判断ができない。

 もともと、細胞内でしか増殖できないウイルスに対する薬は開発が難しいといわれている。これまで多くの抗菌薬(細菌や真菌に作用する薬)が開発されてきたが、抗ウイルス薬のレパートリーは驚くほど少ない。最もコモンな「風邪薬」すら存在しないのが現状だ。 治療効果が確立されている、といわれる抗ウイルス薬の代表例は、ヘルペスウイルスに対する治療薬、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染治療薬、B型肝炎ウイルス(HBV)治療薬、そしてインフルエンザの治療薬だろう。とはいえ、ヘルペス、HIV、HBVについては体内のウイルスを完全に排除するのは不可能とされている。ヘルペスは再発し、HIV、HBV治療薬は長期内服が必須となる。 インフルエンザの治療薬はノイラミニダーゼ阻害薬が主流で、一番有名なのがオセルタミビル(タミフル)だ。しかし、臨床症状の緩和効果は確認されているが、それほど劇的なアウトカムをもたらしているわけではない。例えば、死亡率が下がる、といった・・・。

 おそらく、抗ウイルス薬の「革命」といえば、C型肝炎ウイルス(HCV)治療薬、directly acting antivirals(DAA)であろう。これはすごい。わずか数カ月の内服で、ウイルスを完全に体内から除去してくれる。副作用が多く、注射という煩瑣さが問題だったインターフェロンなしのレジメンも定着し、最近では非代償性肝硬変において使用可能なDAAも開発されている。

 C型肝炎は長い間、人類を苦しめる宿痾であった。加えて、効果的なワクチンもまだない。が、DAAによる劇的な治療によって、C型肝炎の撲滅すら現実味を帯びた将来像となりつつある。

 では、バロキサビルはインフルエンザ治療にいったい何をもたらすのか。そこにあるのは、治療の革命であろうか。査読付き論文がようやく発表された。それもN Eng J Medで。今回はこの論文に着目してみたいと思う。

Hayden FG, Sugaya N, Hirotsu N, Lee N, de Jong MD, Hurt AC, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Eng J Med 2018 Sep 6; 379(10): 913-923.

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