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抗がん剤初期のしゃっくりを訴える患者さんに...

医師、薬剤部との情報共有で準備OK!?

2018年10月15日 17:46

抗がん剤初期のしゃっくりを訴える患者さんに...

協力 ◎ 福井繁雄

このシリーズは、

byouin ICON.png薬局での外来ケモ対応に関する病院とのやり取り
患者 アイコン.png薬局でのがん患者さんへの対応の2本立てでお届けします。

 


主な登場人物:ぼく(薬局薬剤師)、平野さん(大腸がんで化学療法中)、南さん(病院薬剤師)、医師

患者 アイコン.png抗がん剤初期のしゃっくりを訴える患者さんに...
医師、薬剤部との情報共有で準備OK!?

外来ケモ患者の対応にも慣れてきたある日のこと。大腸がんで化学療法を受けている平野さんが来局した。

僕:平野さん、こんにちは。今日は処方箋お持ちじゃないんですね。どうされましたか?

平野さん:手足が荒れることがあるからクリームを塗るように、先生に言われたんだけど、塗り方がよくわからなくって。教えてもらえる?

平野さんは、52歳の男性。「手足が荒れる」と言っているのは、ゼローダ®に特徴的な副作用の手足症候群のことだ。

僕:多めにクリーム(ケラチナミンコーワ軟膏20%)を塗ってくださいね。刷り込むようにするといいですよ。クリームはこまめに塗ってください。できれば1日5回、少なくとも1日2〜3回、特に寝る前は量を多めにして手袋をしたり、靴下をはいてみてください。

平野さん:ありがとう。こまめに塗らないといけないんだね。

僕:赤くなったり、ひび割れが出てきたら、皮膚をこすると悪くなることもあるんです。その場合は、クリームは刷り込まずにそっと伸ばすようにしてくださいね。

平野さん:わかったよ。ところで、昨日からしゃっくりがとまらなくて、困ってるんだ。柿のへたが効くっていうのをネットで見たんだけど、どうなのかな?

僕:柿のへた...ですか?えっと、すみません。ちょっとわからないので、調べておきますね。

平野さん:しゃっくりって結構辛いんだよ。夜あんまり眠れないし...。早く教えてね。

僕のあいまいな返事に平野さんは少しあきれながら帰って行った。患者さんのすく時間に病院薬剤部の南さんに電話して相談すると...。

南さん:平野さんのおっしゃる「柿のへた」は、漢方の柿蔕(シテイ)ですね。確かに、しゃっくりに効果があるという話を以前聞いたことがありますが、抗がん剤と併用すると、どうなんでしょう...。院内でも確認してみます。


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翌日。病院に用事があり、院内を歩いていたら、ばったり平野さんの主治医と会った。忙しそうな雰囲気ではない。思い切って昨日の平野さんとのやりとりと南さんに相談したことを報告した。

主治医:なるほど。ステロイドかエルプラット®(オキサリプラチン)の副作用だろうな。男性に出やすいっていう報告もあるんだよ1)。投与開始してからまだそんなに経ってないから、副作用が発現する時期なんだよなぁ。プリンペラン®(メトクロプラミド)を出す手もあるけど...。抗がん剤との併用が安全かどうかわからないから、平野さんに聞かれたら僕に相談するように言ってくれるかな?

僕:わかりました。平野さんには、『しゃっくりにはプリンペラン®や漢方薬が効くと言われているけれど、他のお薬も飲んでいるので服用については先生に相談してください』と言っていいですか?

主治医:それで構わないよ。よろしく頼むね。

主治医と直接話ができてよかった。これで平野さんにきちんと答えられるぞ!僕がいないときにも対応できるように申し送りしておかなきゃいけない。平野さんの薬歴にメモを書いておいて、スタッフに口頭でも伝えよう。


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後ほど。薬局でのスタッフミーティングにて。

僕:先日、平野和夫さんから問い合わせがあった「しゃっくりに効く薬」ですが,薬剤部の南さんと主治医に確認したところ、漢方の柿蔕湯だと思われます。主治医からは、「抗がん剤との併用の安全性に確証が持てないので服用は勧めないでほしい」と言われました。僕の不在時に平野さんから問い合わせがあったら、「漢方でしゃっくりに効く薬はあるけれど、他のお薬も飲んでいるので先生に相談してみてください」と伝えてください。皆さんよろしくお願いします。

これで対応はばっちりだろう。万全を期した。

そして1週間後。待ちに待った平野さんが来局した。

僕:こんにちは。平野さん。その後いかがですか?

平野さん:特に変わったことはないよ。

僕:えっ...。先日、しゃっくりのお話をされていましたよね?実は、漢方薬の...

平野さん:あぁ、あれ?もう大丈夫だよ。今日の薬はこれね。ありがとう。じゃね。

平野さんはしゃっくりをしていた時のことをすっかり忘れているかのように、何食わぬ顔で帰っていった...。しゃっくりは投与初期の副作用で、今は落ち着いたんだろう。シミュレーションもして、準備してたのに...。ま、なにはともあれ、平野さんの辛い症状が治まってよかった。

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参考文献
1)林誠ほか:シスプラチン化学療法における吃逆の危険因子に関する検討.医療薬学 2009; 35(2): 89-95.

【福井繁雄氏プロフィール】

薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。

【研修会】

日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。
開催スケジュール:日本薬剤師研修センター受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)


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