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学校薬剤師と在宅活動の共通点とは!?

スポーツファーマシストの活躍を探る!Vol.3 中島 理恵氏(日本大学薬学部)

2018年10月18日 12:00

 ここまで、日本大学薬学部の中島理恵氏が取り組まれている、アンチ・ドーピングに関わる2つの研究について伺った。同氏は、アスリートはセルフメディケーションに高いハードルを感じているという問題を挙げ、その解決策としてとりわけ若手のアスリートに対するドーピング教育が重要であるとした。また、日本大学において、アンチ・ドーピング教育を学生に効果的に提供する拠点づくりに取り組んでいるという。

 今回は、学校薬剤師でもある中島氏に、中学校や高校でのアンチ・ドーピング教育についての意見を伺った。

nakajima_rie_1.jpg 中島理恵氏(日本大学薬学部

――薬剤師が若手アスリートや学生にアンチ・ドーピングを教育するというと、学校薬剤師としての介入が真っ先に思い浮かびました。

中島 アンチ・ドーピングは薬の適正使用の一部です。そういう意味では、アスリートに限らず広く啓発を行っていくべきですが、確かに、学校薬剤師の業務を通じた教育は、取り組みやすい方法だと考えています。

 私は、研究とは関係なく、学校薬剤師を担当しているのですが、そこでの先生方との関わりの中で、「アンチ・ドーピングの講義をしてほしい」という話が上がりました。

 例えば、中学校でアンチ・ドーピングの話をする場合、聞き手の中には全くスポーツとは無縁の生徒さんもいます。そういった場所でいきなりドーピングの話だけをすると子供たちもピンとこないので、薬の話や適正使用の話をしてから、「人によっては注意しなければいけない薬があるんだよ」「危険な機械を使う人は眠くなる薬は使ってはいけない。それと同じで、スポーツをする人は使ってはいけない薬があるんだよ」という形で入っていきます。

nakajima_rie_3.jpg.png中学校での学校薬剤師活動の講演で使用したスライドの一部

 

――学校薬剤師として活動したいと願い出ても、学校から断られてしまうこともあると聞きます。

中島 学校の理解はすごく大切ですね。私も、最初から「講演させてください!」「教育させてください」と言うのではなく、「なんでも手伝います」というスタンスで声をかけていきました。少しずつでも先生との人間関係ができれば、こちらからの提案ができるようになると思います。

 小中学校の先生は本当にお忙しいので、理科や保健体育のテーマの一環で薬剤師が何かを受け持つとか、「先生を補助します」という姿勢で入っていくと喜ばれますね。

 私のケースでは、学校の先生方が「学習指導要領で教えなければならないんだけど※1、余裕がなくて大変」とおっしゃっていたので、教育指導教材を渡して「お手伝いしましょうか」とか「役立ててください」ということをしながら、少しずつ活躍の場をつくってきました。何年か学校薬剤師をしていくうちに、養護教諭を始めとした先生方と仲良くなっていったという感じです。

※1 平成25年度から実施されている高等学校の学習指導要領体育理論に「オリンピックムーブメントとドーピング」が盛り込まれ、「スポーツの価値」、「アンチ・ドーピング」に関する教育も必須となった。

――最初はとにかく地道に、ということですね。

中島 そうです。小学校、中学校でのメインの教育指導者はもちろん先生方です。そこに、薬剤師として入っていったとしても、最初は「環境検査をしてさようなら」というだけの関係になってしまいます。

 ちょっと何かを手伝って、教育資材などを渡すだけではなく、学校の先生と同じ立場に立って健康教育に関わっていきたいという姿勢を示さないと......。例えば業務が終わった後に少し雑談をして「子供たちの間でこうした意見が上がっていました」とか、「どんなことが子供たちの間で話題になっていますか」といった話題から入り込んでいくのはどうでしょうか。

 学校の先生は、薬剤師をどのように使ってよいのか分からない方が多いという印象があります。先日、地域の学校の養護教諭の集まりに参加したのですが、「薬剤師にアンチ・ドーピングの講演を頼んでよいのですか」と聞かれました。まだまだ、薬剤師に対しては環境検査をするだけの人というイメージが強いのでしょうね。「これからは薬剤師をどんどん使ってください」とお話ししてきました。

 学校薬剤師の健康教育活動を一度でも経験していただけたらアンチ・ドーピングやそれ以外の健康教育の企画にも声をかけてもらえると思います。もちろん、声をかけていただくのを待つだけでなく、こちらからも、「ぜひ、子供たちへの健康教育や学校保健委員会※2への参加をしたい」というような、積極的なアプローチが大切です。

 また、養護教諭の方々も研究会や研修会を行っていることがあります。そういった場に呼んでもらい、キーパーソンの方と交流をすれば、地域での活動の場がぐっと広がるはずです。

※2 学校保健委員会とは:学校における健康の問題を研究協議し、健康つくりを推進する組織。校長、養護教諭、体育教師やその他の教師、児童、PTA役員をはじめとする保護者、学校医、学校歯科医、学校栄養職員、学校薬剤師の他、教育委員会、保健所、民生委員、警察署、商店や企業など地域の人が委員会を構成することもある。

IMG_8050.JPG「保健委員会という、1年間の保健計画を立てる委員会がどの学校にもあって、
校長、教頭、養護教諭、PTA、栄養士、学校医などが出席しています。
子供たちの健康について話し合うすごく貴重な機会です。
そういうところに参加させてもらうために普段からできるだけ頻繁に学校に出向いていき、
校長、教頭、養護教諭の方との雑談の中からニーズを発掘していくというのが大事なのかなと思います」

――在宅の連携と同じですね。顔を知った関係になり、相手から少しずつ情報をもらえたり、カンファに呼ばれるようになる。そこから薬剤師は自分のできることを考えながら、より深く患者さんに関わっていくことができるようになるという。

中島 そうですね。こちらからアピールしていかないと。今までは、薬剤師のいない状態で回ってきたので、誰も薬剤師の必要性を感じていないのです。だから、待っているだけでは、いつまでも声をかけてもらえることはありません。

――ここまでお話を伺って、学校薬剤師は地域で活躍する薬剤師の1つの姿なのだと感じました。

中島 小中学生に対して、未病の段階から関われますからね。今、行っている研究の成果を、こうした現場活動で生かしていきたいと思っています。

最後に、中島先生にアンチ・ドーピングを教育することの意義について伺いました。
「アンチ・ドーピングを教育することの意義――どうしても勝ちたければ、幼稚園児と戦えば?でもそれで楽しい?」(後日公開)

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