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薬剤師だって、非薬物療法を考慮する

ハロー薬局薬局長 町田和敏

2018年10月23日 10:00

皆さんいかがお過ごしでしょうか。釜石の薬剤師、町田でございます。このコラムでは、プライマリ・ケア認定薬剤師として私が行っている活動を紹介します。

さて、前々回より紹介している事例は、当薬局をかかりつけとしてくれている80代男性のAさん。退院後に外出を避けるようになりました。

図1_Aさん_180921.jpg

そこで、医師に情報提供をしましたが、返事が来ない。その間にも患者さんは苦しんでいる......という状況までを、前回のコラムでご紹介しました。皆さんはどのように考えたでしょうか?今回は、その後の私の行動をお話しします。

吸入薬がないと不安で、安心感がほしいという患者さん。別の病院で吸入薬だけでも処方してもらうことも考え、Aさん本人や奥様に提案しました。ところが、奥様によると、同居している娘さんが、「地域の診療所よりも基幹病院で診てもらった方が安心する」と言っているそうです。私の提案と娘さんの考えの間に挟まれ、どうしたらよいか決めかねている様子でした。

私も、他によい方法はないだろうかと困っていましたが、ふと閃きました。薬物治療ではなく、非薬物治療で何とかならないものかと。

Aさんの気持ちを整理すると、「吸入薬がないと不安」、「苦しいから何とかしてほしい」の2点でした。薬剤師として薬物治療を第一に考えてしまうのですが、Aさんの苦しみをどう緩和するのかを考えた結果、非薬物治療にたどり着いたのです。

看護師のすごさに衝撃を受ける

提案したのは、訪問看護による『痰の吸引』訪問リハによる『呼吸リハ』

2つの非薬物治療を説明し、家族で話し合ってもらうことにしました。提案内容に対しては、比較的すんなりと受け入れられました。ただ、私自身は薬剤師であり、看護師でもリハビリ関係職でもありません。今まで学んだ知識を使って提案したものの、きちんとアセスメントできる自信がありませんでした。

そこで、知り合いの訪問看護師に、Aさん宅に同行してもらえないかと提案したところ、快く了承してもらえました。Aさん家族には訪問看護師を連れていくことを伝え、日程調整をしました。

そして、同行訪問。やはり餅は餅屋であることを認識しました。

私自身、普段から患者さん宅にお伺いした際に必要があれば肺音の聴診もしています。日本在宅薬学会からエヴァンジェリストの認定も受けています。詳しくは学会ホームページを参照していただければと思いますが、簡単に説明すると、エヴァンジェリストは薬剤師のバイタルサイン講習会を開催できる資格。バイタルサイン講習会では、参加者に対して、脈拍、血圧測定、心音・肺音・腸音の聴診など、各種バイタルサインの意義や手技を学んでもらいます。この講師となれる資格を持っているのだから、ある程度の知識はあると自負していたのですが......。

訪問看護師が目の前で聴診しアセスメントをする様子を見て、改めてそのすごさを見せつけられたのです。経験値、アセスメント、手技、ご家族への説明など、目の前で見ることができ、大きな刺激になりましたし、薬剤師として精進しなければと感じました。

さて、その訪問看護師の評価でも、痰の吸引や呼吸リハがあると楽になると思うということでした。ちなみに、2つの手段を実行するには、医師の指示書が必要になるので、訪問看護師から基幹病院の看護師へ連絡してもらうことにしました。

machinotrainn.jpg

さて、この先のAさんの様子はどうなるのか、その経過については次回お話します。今回のここまでの行動を、プライマリ・ケアの5つの理念に当てはめてみると、多職種との同行訪問という点では協調性、呼吸リハという観点では包括性に当たると考えています。

また次回お会いしましょう。


IMG_6576.jpg

同行訪問した看護師さんと。

【連載コンセプト】
私たち薬剤師は、その存在意義について、多くの国民から懐疑的な目で見られています。薬剤師の存在価値とは何なのか、そんなことを考えながら、日々実践している活動の数々を紹介していきます。

また、実際に私自身が経験した事例を紹介し、そのときに考えたことも述べていきます。そして、なるべく読者の皆さんと一緒に考える場所にしたいとの思いから、『皆さんならこの場面でどう考えますか?』と投げかけた上で、次の回に私の行動を紹介するという構成で展開するつもりです。

と、ここまでコンセプトを書きながら、とても陳腐な文章になってしまいそうな予感がしますが、「へぇ、こんなことを考えている薬剤師がいるんだ」くらいの軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。そして、読者の皆さんに何か少しでも感じていただければと思っています。

【プロフィール】

machidashi.jpg

大学入試4浪、国家試験1浪、と落ちこぼれ街道まっしぐら。昭和薬科大学へ入学し、サッカー部で自称監督として、七面鳥フォークソング部ではVocal&Bassとして、大学生活を謳歌する。卒業後、縁もゆかりもない釜石へ。浪人時代に思い描いた、ドイツに留学し、サッカーの指導者になる夢を叶えるため、保険薬局で働いて留学資金を貯めようと試み、有限会社中田薬局へ就職する。

東日本大震災を経験し、釜石でのさまざまな人々との出会いを経て、「この地域のために薬剤師として、人として、何ができるのか」と考え始めて今に至る。中田薬局・地域包括ケア担当者。ハロー薬局薬局長。ケアカフェかまいし支配人。有志の勉強会・釜石コンテント代表。

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