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薬剤師が患者さんのエンドオブライフを支えるために

ハロー薬局薬局長 町田和敏

2018年10月23日 10:00

皆さんいかがお過ごしでしょうか。釜石の薬剤師、町田です。このコラムでは、プライマリ・ケア認定薬剤師として私が行っている活動を紹介します。

前回は、退院後に外出を避けるようになった80代男性のAさんに痰の吸引と呼吸リハの導入を提案したお話をしました。

図1_Aさん_180921.jpg

導入後、Aさんの表情は穏やかになり、呼吸数も落ち着いています。奥様も、良くなったことを喜んでいました。

そんなAさんは、現在、90歳を目前にしています。エンドオブライフ期をいかに過ごすか、今後の道筋を家族と共に考えていく必要があると考え、患者さん宅を訪問しました。

そうだな・・・どこにも行きたくないな・・・

まず、Aさんがどこで最期を迎えたいかという想いを、介護保険の話題を交えながら、それとなく聴き出しました。

「介護保険はいらない、俺は施設とかは行きたくないから」

どうやら、介護保険サービスは全て施設に入所することだと認識しているようです。訪問看護や訪問リハなども介護保険のサービスであり、施設に入ることだけが介護保険サービスではないことを説明しました。

そして、『施設に行きたくない』との想いから、最期は自宅にいたいのかなぁと思った私は、次のようにお話しました。

「Aさん、施設には行きたくないんだね。この先、人間誰しもあることだけど、最後にお迎えが来ると思うんだ。Aさんは自宅で最期を迎えたいと思いますか?」

するとAさんはこう答えました。「そうだな...どこにも行きたくないな...」

それを聴いていた奥様は、不安そうな顔をしていました。事情を聴くと、自宅で最期まで看取るのは不安で、何か急変の際に、どうしたらよいか分からないとのことでした。奥様には、訪問看護も入っているため、今後の急変対応は上手に対応できるよう整備しておくと伝え、訪問看護の事業所にも情報提供しました。

介護保険については、この時に全て決断させずに、ゆっくりとご家族と話すようにしてもらいました。そして後日、「申請する」とご家族から伺いました。

訪問看護の事業所には、居宅の事業所もありケアマネージャーがいます。早速、Aさん宅を訪問してもらい、申請と契約をしました。

今現在、ケアマネージャーと訪問看護と情報共有しながら、Aさんの今後の人生を支えていく体制を作っている所です。

machinotrainn.jpg

今回のお話を、プライマリ・ケアの5つの理念に当てはめると、患者さんのエンドオブライフケアの観点から継続性、また、この患者さんへの十分な説明における責任性といったものが当てはまるのではないか、と思っています。

Aさんの事例はひとまずここまでです。今後も事例を紹介していきたいと思いますので、皆さんよろしくお願いいたします。

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釜石にあるラグビーチームの試合風景。
もちろん、このグラウンドも釜石市内にある。

【連載コンセプト】
私たち薬剤師は、その存在意義について、多くの国民から懐疑的な目で見られています。薬剤師の存在価値とは何なのか、そんなことを考えながら、日々実践している活動の数々を紹介していきます。

また、実際に私自身が経験した事例を紹介し、そのときに考えたことも述べていきます。そして、なるべく読者の皆さんと一緒に考える場所にしたいとの思いから、『皆さんならこの場面でどう考えますか?』と投げかけた上で、次の回に私の行動を紹介するという構成で展開するつもりです。

と、ここまでコンセプトを書きながら、とても陳腐な文章になってしまいそうな予感がしますが、「へぇ、こんなことを考えている薬剤師がいるんだ」くらいの軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。そして、読者の皆さんに何か少しでも感じていただければと思っています。

【プロフィール】

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大学入試4浪、国家試験1浪、と落ちこぼれ街道まっしぐら。昭和薬科大学へ入学し、サッカー部で自称監督として、七面鳥フォークソング部ではVocal&Bassとして、大学生活を謳歌する。卒業後、縁もゆかりもない釜石へ。浪人時代に思い描いた、ドイツに留学し、サッカーの指導者になる夢を叶えるため、保険薬局で働いて留学資金を貯めようと試み、有限会社中田薬局へ就職する。

東日本大震災を経験し、釜石でのさまざまな人々との出会いを経て、「この地域のために薬剤師として、人として、何ができるのか」と考え始めて今に至る。中田薬局・地域包括ケア担当者。ハロー薬局薬局長。ケアカフェかまいし支配人。有志の勉強会・釜石コンテント代表。

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