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アスリートでなくてもアンチ・ドーピング教育が必要なワケ

スポーツファーマシストの活躍を探る!Vol.4 中島 理恵氏(日本大学薬学部)

2018年10月25日 12:00

 そもそも、ドーピングはなぜ悪いのか。当事者であるアスリート以外の、一般の学生にも教育をするのはなぜだろうか。日本大学薬学部の中島理恵氏に、アンチ・ドーピング教育の意義を聞いた。

nakajima_rie_5.jpg 中島理恵氏(日本大学薬学部

――学校でアンチ・ドーピングを教えるということですが(関連記事)、国体とかそれ以上のレベルの問題だと思っている人が多いと思います。中高一貫でスポーツをやっている学校であれば、それなりのニーズがあることも想像できます。しかし、そうしたスポーツ特待生がいない一般の学校で、アンチ・ドーピングを教えることの意味はあるのでしょうか。

中島 私が学校薬剤師をしている学校でも、スポーツに取り組んでいない生徒は当然います。彼らにアンチ・ドーピングの話題がどれくらい受け入れられるかという不安は、私も最初は持っていました。しかし、普段スポーツには関わりを持たない生徒でも、クラスにスポーツを頑張っている友達がいると、ドーピングの話題を身近に感じたり、一緒に考えたいと言います。それから、純粋に科学的な興味を持つ生徒もいます。何よりドーピングは昨今、頻繁にニュースで見聞きしますので、世の中の問題を理解するための社会的な知識として聞いてくれるような生徒もいるようです。

――アンチ・ドーピング教育を行う上では、「なぜ、ドーピングがダメなのか」を理解させなければなりません。先生は小中学生にどのように教えていますか。

中島 アンチ・ドーピング活動は、「フェアネスを守る」「健康を守る」「スポーツの価値を守る」という3つの目的があります。

 中学生に「フェアネスを守る」ということを伝えるときは、「どうしても勝ちたければ、幼稚園児と戦えばいいでしょ?そうすれば勝てるよ。でも、そうして勝っても面白くないでしょ?」と例を挙げて説明をします。同等の条件で、ズルをしないで競い合うからスポーツは面白いんだ、そういうことを伝えるようにしています。

 それから、生徒たちには"スポーツの魅力"というものを考えてほしいと思っています。なぜ皆、夜中までオリンピックやワールドカップを見るのか。アスリートがスポーツで栄冠を勝ち取る姿が人の励みになるからです。観戦した人は、その感動を、自分たちの目標をかなえるための糧にするーー。それが、不正によって得られた勝利だったらどうでしょう。アスリートに憧れる人たちの期待を裏切ることになります。だからアスリートには、視聴者にとって模範的な姿勢を示していく責任があるのです。子供のころに野球選手に憧れるとか...誰かに憧れて将来の選択をしたりしますからね。

――そういう意味でスポーツに関わる人......ファンを含めた全ての人に対して、アンチ・ドーピングの教育は意義があるということですね。

中島 なんでドーピングがダメなのかというと、スポーツマンの体を守る、スポーツの価値を守る。でも、それだけではなく、社会に悪影響を与えないという目的がある。この3つのポイントを、生徒たちには伝えています。

――薬剤師として、アンチ・ドーピングを教育していくことの先にはどのようなビジョンをお持ちですか。

中島 トップアスリートが薬を使う時のみ関わるアンチ・ドーピング活動ではもったいないと思います。学校薬剤師として小中学生といった成長期の学生たちに対して、栄養とかアルコールとか、生涯にわたる健康教育の一環として、アンチ・ドーピングを教育していくことに意義があると考えています。教えた子供たちが将来アスリートになるかどうかは分からないけれど、大人になってからも、生涯その知識を生かしていってほしいです。

――最後に、薬剤師やスポーツファーマシストにメッセージをお願いします。

中島 アンチ・ドーピング活動は、薬剤師皆が取り組むべき課題だと思います。

 今回はアンチ・ドーピングの教育について、学校薬剤師としての取り組みを中心に話しましたが、アスリートに対するスポーツファーマシストとしての関わりは、かかりつけ薬剤師や健康サポート薬局での取り組みを通しても可能です。担当の薬剤師が付いて、その方の社会的バックグラウンドや、健康の社会決定要因を理解しながら、最後まで支えていくような関わり方になるのかな、と思います。かつてアスリートであった患者さんであれば、アスリート独特の体調の変化や、健康問題を抱えている可能性がありますし、その人その人の置かれた状況に合わせたサポートを行っていけば、アスリートにかかわらず、どんな方にも対応できるようになるのかなと思います。

 皆さんそれぞれが、自分の得意分野を生かす活動方法を考えてみてください。例えば薬局にアスリートが来るなら、スポーツファーマシストとして介入してみる。学校薬剤師や教育活動に関われる薬剤師であれば、健康教育の1つとして子供たちに教えてみるといった形でさまざまな方法で役に立つことが出来ると思います。

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