新規登録

含嗽剤~風邪予防、どんなうがい薬がイイですか?- 後編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2018年10月26日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どんなうがい薬がいい?」

  • OTCうがい薬の基本的な考え方
  • かぜの予防にうがい薬は効果があるのか?
  • お茶うがいの効果は?
  • 結局のところどうしましょう......

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

うがい薬P(明治)、パブロンうがい薬AZ(大正製薬)、AZうがい薬(浅田飴)、新コルゲンコーワうがい薬ワンプッシュ(興和新薬)


薬の無料アイコン9 (1).pngお茶うがいの効果は?

"感染症予防にはお茶でのうがいがよい" とういう話もたびたび聞きますよね。緑茶に含まれる成分(主にカテキン類)はin vitroおよびin vivoで抗ウイルス活性を有することが報告されており7,8)、実際、静岡県菊川市の小学生を対象とした研究9)では、緑茶の摂取量とインフルエンザ感染の発生率は逆相関すると報告されています。緑茶うがいに関する研究は、インフルエンザ感染症の予防効果を検討したものが多いですが、2014年には日本人を対象としたランダム化比較試験10)が報告されています。

この研究では、15~17歳の高校生757人が対象になり、水でうがいをする群と、緑茶でうがいをする群に振り分けられました。なお、うがいの頻度は1日3回(学校到着後、昼食後、放課後)でした。その結果、インフルエンザ発症は緑茶うがい群で4.9%、水うがい群で 6.9%と、緑茶うがいで減少傾向にありましたが、統計学的な差は付きませんでした(オッズ比0.69[0.37~1.28])。

対象は、静岡県の掛川市、および小笠地区(菊川市)の高校6校に在籍している学生です。さすがはお茶の名産地だけに、両群ともに緑茶飲用習慣が70%を超えていました。つまり水うがいをする群でも、習慣的にお茶を飲んでいる人が多かったのです。インフルエンザ感染症の発症に明確な差が出ないのも、こうした習慣が影響しているかもしれません。また、インフルエンザウイルスは咽頭部に付着すると迅速に体内に侵入するといわれており、水にしろ緑茶にしろ、1日3回程度のうがいでウイルスが除去できるのか、という疑問もあります。

緑茶うがいとインフルエンザについて、2016年にはメタ解析11)が報告されています。この研究では3件のランダム化比較試験と2件のコホート研究が解析に含められました(解析対象1,890例)。統合解析の結果、茶またはその成分でうがいした人は、プラセボもしくは水でうがいをした人、またはうがいをしていない人に比べて、インフルエンザ感染のリスクが21%(相対危険0.71[95%CI 0.56~0.91])統計学的に有意に低下することが示されています。

この解析結果で注意が必要なのは、統合された研究に観察研究(コホート研究)を含んでいる点です。個々の研究結果を見てみると、3件のランダム化比較試験ではいずれも、インフルエンザ発症に統計学的な有意差は付いていませんでしたが、観察研究では1研究で統計的に有意なリスク低下、1研究では大きなリスク低下傾向が示されています。

緑茶でうがいをする習慣のある人では、インフルエンザのワクチンを積極的に接種していたり、マスクや手洗いなどもしっかり行う傾向があり、うがいをしない人に比べて健康意識が高い可能性は考えておいた方がよいでしょう。こうした健康への関心という要素を踏まえれば、得られた研究結果は、必ずしもうがいによる影響だけではない可能性があります。したがって、21%のリスク低下については、その効果を割り引いて考えた方がよいように思います。

急須と湯飲みのセットアイコン.jpeg

薬の無料アイコン9 (1).png結局のところどうしましょう......

かぜ予防において、少なくともポビドンヨード含有うがい薬の長期的な使用は推奨できないでしょう。もちろん短期的な使用を否定するものではありませんが、上気道感染症の予防効果も明確ではない上に、長期間にわたる習慣的な使用で、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。

アズレン含有のうがい薬には、現時点でかぜ予防に対する質の高いエビデンスはありませんでした。とはいえ、点眼薬や内服薬にも配合されている成分であり、その安全性は高いものと考えられます。スッとする感じがよい、という人ではその使用を否定する明確な根拠もありません。塩化セチルピリジニウム含有のうがい薬についても、かぜ予防効果は不明ですが、口臭の除去には効果が期待できるかもしれません12)。とはいえ、かぜ予防についていえば、基本的には水道水によるうがいで十分といえます。あえて緑茶を推奨する強い根拠もありません13)

しかしながら、うがい薬を買い求めに来たお客さんは、薬に対して大きな期待を抱いています。ここで 「うがいは水道水で十分です」という説明をしたのでは、お客さんもがっかりしてしまうかもしれません。緑茶うがいをすすめても良いかもしれませんが、かぜの予防効果という観点からすれば、プロバイオティクス配合商品の方が効果を期待できそうです。ランダム化比較試験12研究のメタ解析において、プロバイオティクスは上気道感染症の発症を減らすことが示されています14)

インフルエンザ予防においては、緑茶に限らず、うがいの予防効果自体があまり明確ではありません15)。うがいの習慣がない人に対して、あらためて、うがいを促す意義は少ないように思います。インフルエンザ予防を考えるのならワクチン接種、それに加えて手洗いなどの手指衛生が基本となります16,17)。そして、お茶はうがいではく、やはりおいしくいただくことが推奨されます。

【連載コンセプト】
薬剤師、登録販売者のためのOTC連載です。OTC医薬品に対する考え方、使い方について「実践的」に整理します。筆者のドラックストアでのバイト経験と、具体的な薬剤エビデンスに基づき、実際の患者にどうアプローチしていけばよいのか、ピットフォールなどを交えて解説していきます。

【プロフィール】
aoshimashi.jpg

保険薬局勤務を経て、現在は病院薬剤師。NPO法人AHEADMAP共同代表。
普段は論文を読みながら医師に対して処方提案などを行っていますが、薬剤師によるEBMの実践とその普及に関する活動もしています。

公式ブログ:思想的、疫学的、医療について
Twitter:@syuichiao89

1 2
トップに戻る