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含嗽剤~風邪予防、どんなうがい薬がイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2018年10月26日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話

  • OTCうがい薬の基本的な考え方
  • かぜの予防にうがい薬は効果があるのか?
  • お茶うがいの効果は?
  • 結局のところどうしましょう......

今回出てくるOTCは・・・薬の無料アイコン9.png

うがい薬P(明治)、パブロンうがい薬AZ(大正製薬)、AZうがい薬(浅田飴)、新コルゲンコーワうがい薬ワンプッシュ(興和新薬)


残暑も落ち着き、朝晩はむしろ寒いくらいの季節となりました。寒暖の差が激しいこの時期、少し油断するとかぜをひいてしまう方も多いことでしょう。薬剤師のあなたはマスクをキリっと装着しなおしました。――ちょうどその時、男性のお客さんが現れました。

「来週から出張なのですが、絶対に休めない仕事なんです。だから、どうしても、どうしても、どーしてもかぜを引けないんですっ!! なので、うがい薬を使って、うがいをしっかりやろうと思うんです。やっぱり、カバさんのうがい薬ですかねっ? どど、ど―なんでしょう。かぜの予防にいちばん効果があるやつをくださいっ!」

必死の形相で畳みかけられ、その男性客と一緒にうがい薬売場コーナーへ向かったあなた。そこでふと気が付きます。

――そもそも、うがい薬の効能効果として"かぜ予防"はなかったような。

薬の無料アイコン9 (1).pngOTCうがい薬の基本的な考え方

うがいがかぜの予防に良い、という話はよく聞きます。うがい・手洗いは感染症を予防するための生活習慣としてもなじみがありますよね。そして、普通の水でうがいするよりも、うがい薬を使った方が、予防効果が強そうなイメージがあります。特に消毒薬として配合されるポビドンヨードを含んだうがい薬は、殺菌作用に加え、あの独特な風味とにおいも相まって、感染症予防に効果的であると考える人も少なくありません。しかしながら、市販のうがい薬にはかぜの予防という効能効果はないのです。

表1 市販されている主なうがい薬

180918_tab1.png

薬の無料アイコン9 (1).pngかぜの予防にうがい薬は効果があるのか?

効能効果にかぜ予防はない、といわれても、なんとなく効果のあるようなイメージを捨て切れない人も多いことでしょう。効能効果に記載はなくても、うがい薬によるうがいでかぜがしっかり予防できればよいわけですが、水でうがいした場合と比較して、どの程度の効果が期待できるのでしょうか。

2005年に、うがいのかぜ予防効果を検討したランダム化比較試験1)が報告されています。この研究では、18〜65歳の健康なボランティア387人が対象となり、1日3回、約15秒間、水でうがいする群(122人)と、1日3回、約15秒間、ポビドンヨードでうがいする群(133人)、そして通常ケアを行った群(132人)の3群が比較され、上気道感染症の発症率が検討されました。主な結果を(表2)にまとめます。

表2 ポビドンヨードによるうがいの効果

180918_tab2.png 引用文献1より著者作成

上気道感染症の発症は、通常ケアと比べ、ポビドンヨードうがいで低下傾向でしたが、統計学的に有意な差はありませんでした。他方で、水うがいでは通常ケアと比較して36%のリスク低下が示されており、こちらは統計学的にも有意でした。イメージとしては感染症の予防に期待が持てそうなポビドンヨードうがいでしたが、その効果は明確ではありません。なぜにこのような結果になってしまったのでしょうか。

ポビドンヨードは消毒薬ですので、強力な細菌/ウイルスの除去作用を有しています。病原微生物のみを殺菌してくれれば何も問題ないのですが、病原微生物の侵入を妨げてくれる咽頭や口腔内の正常な菌叢も破壊してしまう懸念があります。またポビドンヨードは、遊離した要素が蛋白質を酸化し、細胞にダメージを与えることが分かっています。つまり、ポビドンヨードによって、咽頭組織が障害されている可能性があるのです。したがって、ポビドンヨードによる継続的なうがいの実施は、感染防御機能の低下を招く可能性すらあるといえます。

また、ポビドンヨードによる継続的なうがいの実施は、薬物有害事象の観点からも安全とは言い切れません。10年間にわたり、習慣的にポビドンヨードによるうがいをしていた人で、甲状腺機能低下症を来した症例が報告2)されています。したがって、ポビドンヨードを含有したうがい薬をかぜ予防と称して長期的に使用することは推奨できません。少なくとも、ポビドンヨードうがい薬のかぜ予防効果はあまり明確ではなく、水によるうがいの方が安全かつ安価である、という情報はお客さんと共有したいところです。

うがいによる熱性疾患の予防効果は小児でも報告されています3)。この研究は、2~6歳までの小児1万9,595人を対象とした観察研究で、20日間にわたり、37.5℃以上の発熱や、保育園の欠席(病欠)が検討されました。その結果、うがいをした群では、うがいをしない群に比べて、発熱が少なく(オッズ比0.68[95%CI 0.57~0.82])、欠席も少ない傾向にある(同0.92[0.84~1.00])ことが示されています(表3)

表3 小児におけるうがいの効果

180918_tab3.png参考文献3より筆者作成

この研究で検討されたのは、発熱頻度や保育園の欠席であり、上気道感染の発症率ではないことに注意が必要です。また、あくまで観察研究なので、うがいをしっかりしていた小児は、そもそも健康に気をつかう習慣のある家庭環境にいる可能性があり、リスクが低下した要因は、うがいによるものだけではないかもしれません。そもそも、2歳児がしっかりうがいをすることができていたのか、という疑問もあり、この研究結果は割り引いて考えた方がよいかもしれません。

かぜ予防に対する水でのうがいは、費用対効果に優れているといえますが、他方で、その効果の不確実性も指摘されています4)。2014年に報告されたランダム化比較試験5)では、水うがいによる上気道感染症の予防効果は示されませんでした。

この研究では、大学生600人が対象となり、①ビタミンD投与+うがいなし②ビタミンD投与+うがいあり③プラセボ投与+うがいなし④プラセボ投与+うがいあり―の4群が比較され、上気道感染症の発症率が検討されています。その結果、「うがいあり」と、「うがいなし」で、上気道感染症の発症に明確な差は見られませんでした(表4)

表4 うがいによる上気道感染症予防効果

180918_tab4.png引用文献5より筆者作成

ちなみにビタミンDについては、「投与なし」と比べて、「投与あり」で、上気道感染症の発症が少ないという結果が示されています(相対危険0.54[0.34~0.84])。とても興味深い結果ですが、ビタミンDにかぜ予防効果があるかどうかについては、また別の機会で検討したいと思います。ちなみに2012年に報告されたランダム化比較試験6)では、ビタミンDサプリメントの上気道感染症予防効果は示されていません。なお、アズレン製剤、塩化セチルピリジニウム製剤については、かぜ予防に関する質の高いエビデンスを見つけることはできませんでした。

次のページでは「お茶うがいの効果」や、「風邪を予防したい患者さんにおすすめしたい方法」を解説。

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