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患者さんの「もしも」に備えてかかりつけ薬剤師ができることは何か?

元気な私たちにもいつか必ずやってくる「老い」を考える

2018年10月29日 10:00

患者さんの「もしも」に備えてかかりつけ薬剤師ができることは何か?

在宅患者さんのお役に立ちたくて、在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして奔走し、在宅活動を通して地域のさまざまな人との繋がりを作ってきました。現在は「街角相談薬局」という立ち位置で頑張っています!

※在宅専門薬局としての活動記はコチラ【まだまだつぼみだけど・・・

つぼみ薬局 角山美穂

 

「3日前から食欲が全くない、暑い中出かけたので熱中症か?」

 2カ月前の7月中旬、『かかりつけ薬剤師』をさせていただいている80代男性の妻から「3日前から食欲が全くない、暑い中出かけたので熱中症か?」と電話がありました。若いころから糖尿病だった患者さん、既に膵臓が枯渇しているためインスリン分泌が全くありません。1日1回のランタス注、それから3度の食事と間食前ごとにアピドラ注を皮下注するよう処方されています。

 まず、血糖値を測定してもらうと89mg/dL。検温しても発熱はなし。とりあえず炭水化物を食べるよう指導し、奥さまには主治医への連絡をお願いしました。受診して精査してもらうと、胃潰瘍が食欲不振の原因と分かりました。

ADLの悪化から胃潰瘍に

 この患者さん、雨の降らない日には午前と午後の自転車散策を日課にしていました。ところが、今年の夏の猛暑に家族が心配。散策を禁止したところ、ADLが一気に落ちてしまった印象です。

 8月の受診時に、主治医から介護保険サービスの利用を勧められたと、家族が来局しました。居宅介護支援事業所を休止している当薬局では対応できないため、居宅の担当地域包括支援センターへ連絡し、認定申請の手続きをお願いしました。

今は元気だけど、もしも自転車に乗れなくなったらどうする?

 それまでに、本人とは何度かACP(Advance Care Planning)理論に基づいた『もしもの時に備えた私の心づもり』 を話していました。しかし、もともとバレーボールの選手で体力に自信があり、80歳を過ぎても自転車を乗りこなすこの患者さんには、そんな話が響いていなかったことを痛感しました。「自転車に乗れなくなったらどうするの?」という問いへの答えが用意されていなかったわけですから。

 こうなってしまったら、医師が介護保険の利用を勧めてくれた機会をとらえて、現状を本人や家族が受け入れ、今後「本人らしく」生活していく方法を考える必要があります。もちろん、ケアプランも含めて。

 その中で、私はかかりつけ薬剤師として、薬が正しく使用できるよう家族教育をしていくつもりです。

元気な私たちにも必ず『老い』はやってくる

 ACPとは、『もしもの時に備えて自分の医療に関する希望について考えて、話し合い、文書に残すという手順』のこと。緩和ケアの第一歩だそうです。私は、昨年9月、近隣の在宅医療・介護連携推進委員会主催の講習会で学びました。

 ACPが必要とされる理由は主に3つです。

  1. 1)患者の意向を最大限に尊重する
  2. 2)治癒が不可能な化学療法中のがん患者の78~80%が、治癒が不可能と理解していない
  3. 3)終末期においては約70%の患者は意思決定が不可能

 

 ACPの考えに基づいて患者さんを見ると、私たち薬局薬剤師がお役に立てることはたくさんあるように感じます。元気な私たちにもいつか必ずやってくる『老い』への準備――。

 がん患者に限らず、高齢で終末期の方も含めて「いつになったら治るのか」「年を重ねると、次々病気になって大変」など、老化を病気と捉えておられる方が多いことを実感します。彼らにどのようにアプローチしていくのかは、これからの課題です。

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 昨今よく耳にする『終活』から話を広げて「自分のことが自分でできなくなったらどこで生活しますか?」そんな問いかけをしてみるのもよいかもしれません。『もしも』に備え、元気な時期から繰り返し考え、話し合う機会を作る手助けからでも始められるのではと想います。

 手始めに私は、2年後に定年退職を迎える夫に「退職したらどうするの?」と質問してみました。

【コラムコンセプト】

ケアマネとしても薬剤師としても在宅活動を長く続けてきた筆者が、地域包括ケアの中でどのように薬剤師として貢献していくか、日々のエピソードとともに綴っていきます。

【角山美穂 プロフィール】

2009年11月、「在宅専門薬局」と言う想いでつぼみ薬局を開局。当初は、併設した「つぼみ薬局居宅介護支援事業所」の介護支援専門員として居宅を訪問したり、「つぼみ薬局」の訪問薬剤師として活動。現在は「街角相談薬局」という立ち位置で活動中。

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