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医師の85%が高血圧治療に"困っている"

かかりつけ医に対するアンケート結果

2018年10月30日 14:30

 高血圧の診断・治療は進歩しているにもかかわらず、降圧目標達成率は極めて低い状況にある(Hypertension paradox)。「保健活動を考える自主的研究会」のメンバーで旭川医科大学内科学講座講師の中川直樹氏は「かかりつけ医に対する高血圧アンケート集計結果」を第41回日本高血圧学会(9月14〜16日)で報告。「実地医家の約85%は高血圧治療に困っていることが分かった。高血圧患者には保健指導が必要で、そのためには専門医、かかりつけ医、薬剤師、保健師・栄養士、行政などの多職種連携が重要」と述べた。

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「一生飲むのは嫌」

 日本の高血圧患者は約4,300万人といわれているが、治療中でコントロール良好な患者は1,200万人(27%)のみで、それ以外〔治療中だがコントロール不十分(27%)、気付いているが未治療(14%)、気付いておらず未治療(32%)〕の方が圧倒的に多い(NIPPON DATA2016の試算)。中川氏らは、2016年の同学会で高血圧について住民に対するアンケートを行ったが、今回はかかりつけ医に対するアンケートを実施。同氏は「2018年4〜5月の短期間に1,129人(全都道府県)の医師から回答が得られた」と報告した。

 「高血圧治療(薬物療法)を行う上で困ることはありますか?」との質問に対しては、955人(84.6%)もの医師が「ある」と回答した。具体的な内容(複数回答可)は「患者が一生飲むのは嫌という」(60.6%)、「患者が自覚症状に頼り、飲みたがらない」(50.9%)、「患者が薬に対する偏見や副作用を心配する」(44.6%)、「患者がマスコミの情報やサプリメントを信じる」(42.0%)などであった。自覚症状がないために治療薬の内服を拒否する患者は、特に若年者や男性で多いという。

患者のアドヒアランス不良が浮き彫りに

 「薬物療法を開始しても、指示通りに飲んでもらうことに苦労を感じることはありますか?」との質問に対しては372人が「苦労している」、494人が「どちらともいえない」と回答した。具体的な内容は(複数回答可)、中断する(65.6%)、指示通りに飲めない、飲み忘れが多い(60.2%)、自己調整する(58.9%)などで、患者のアドヒアランス不良の実態が浮き彫りになった。

 「高血圧治療を行う上で、生活習慣の是正は必要だと思いますか?」との質問に対しては、1,075人(95.2%)が「必要だと思う」と回答した。そのうち実際に生活習慣是正の指導をしている医師は997人(92.7%)で、具体的な指導内容(複数回答可)は、減塩(94.2%)、体重管理(81.0%)、運動(73.3%)、禁煙(67.2%)、節酒(45.9%)であった。

 「減塩指導を行うに当たり苦労していることがある」という医師は574人。具体的な苦労は(複数回答可)、本当に減塩できているか分からない(75.3%)、減塩を実践してくれない(38.8%)、栄養士が施設にいない(25.3%)、指導のための時間が取れない(19.8%)などであった。

 「高血圧の診断・治療を行う上で、家庭血圧を重視していますか?」との質問に対しては1,048人(92.8%)が「重視している」と回答。そのうち家庭血圧を記録し持参してもらう上で苦労していることがある医師は26.4%で、具体的な苦労は(複数回答可)、血圧計を持っていない(53.0%)、家庭血圧測定をしてくれない(50.9%)、血圧手帳を持参してくれない(35.1%)などであった。

マスコミや友人の情報で中断する例も

 血圧測定と臨床評価について"医師が困っていること、悩みや課題"(以下、困っていること)としては「高血圧に対する理解の不足」「意識が低い(コンプライアンス不良)」「血圧計を持っていない」などが挙げられた。課題解決に向けて希望することは「意識を高めるために、説明会や訪問を積極的にしてほしい」などであった。

 血圧の評価に関して困っていることは「家庭血圧測定をしてくれない」「家庭血圧を正しく測定してくれない」「血圧手帳を持参してくれない」などが挙げられた。実施中の対策は「家庭血圧測定を勧める」「24時間血圧測定の実施」などであった。中川氏は「24時間血圧測定の実施には、ウエアラブル血圧計などを取り入れることも考えられる」と述べた。

 生活習慣の是正(主に減塩)について困っていることは、「減塩を実施してくれない」「本当に減塩できているか分からない」「指導のための時間が取れない」などであった。実施中の対策は「尿中ナトリウム検査の実施」「減塩食品を勧める」「栄養士(院内・行政)に栄養指導を依頼」など。希望することは「行動変容までは難しいため行政にお願いしたい」「子供への減塩指導」などであった。

 降圧治療の開始と継続について困っていることは、「自覚症状がないので内服拒否」「中断しても気付かない」などで、対策として「治療の大切さを自覚してもらう」「受診予定日から1カ月以上来院のない患者には電話する」「中断者への連絡を薬局に依頼している」などが挙げられた。

 コントロール不良・治療中断患者に対して困っていることは、「中断、自己調整の問題」「マスコミや友人の情報で中断、自己調整」などで、同氏は「マスコミの影響は大きい。テレビで健康番組の出演者が『特定健診を受けよう、保健指導は役立つ』などの一言を言ってくれれば、少し世の中が変わるのではないか」と述べた。

医師の悩みを保健師・栄養士が軽減できる可能性

 今回のアンケートでは"困っていること"を挙げてもらうことで、多職種の連携を必要とする具体的な課題が明らかになった。中川氏は「これらの結果から、実地医家の約85%は高血圧診療に困っており、保健指導や栄養指導を求めていることに加え、治療中断者の抽出が重要な課題であることも分かった。解決策としては、自治体の保健師・栄養士による保健指導や国保データベース(KDB)システムの有効活用などが考えられる」と述べた。

 同氏は「実地医家の悩みを保健師・栄養士が軽減できる可能性は極めて高く、連携体制の構築が重要。そのためには各職種間の相互理解の場が必要である。保健師・栄養士には、住民・実地医家・専門医の懸け橋としての役割も期待される」と述べ、「保健師・栄養士は医師への苦手意識が少なくなく、その克服という課題があるかもしれないが、熱意ある保健活動がHypertension paradoxを克服し、日本の高血圧治療の進路を変えることを期待する」とまとめた。

(Medical Tribune Webより転載)

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