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第15回 薬剤師に聞きたい!

島々の住民と共に生きる〜長崎県五島市・薬剤師奮戦記 ゆうとく薬局 平山匡彦

2018年11月01日 08:00

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薬剤師に求めること

 前回に引き続き「お薬説明会・相談会」を継続開催することで見えてきたことについて紹介をさせていただきます。

「お薬説明会・相談会」を開始した当初は、集まった住民の皆さんから「なんばすっとか?」「医者ん来っち聞いたけん来たばってん、来んとなら帰っよ」など言われていました。薬の説明はお医者さんか、身近な看護師さんから聞くのが当たり前で、薬剤師が何者かもわからないのですから、それも仕方のないことなのでしょう。悲しいですが、それが現実です。

 薬はお医者さんが出してくれたのだから間違いない、説明なんかなくても、黙って言われるままに飲んでおれば間違いない、そのような雰囲気がプンプンなのです。薬剤師と言われても、そこに期待も関心もありません。いきなり現れた見知らぬ人です。お世話役さんも、面倒なことを引き受けたもんだと言わんばかりの態度をとる方たちもたくさんいます。

 でも、終わってみれば、説明会の理解度について尋ねると「よくわかった」と「まあまあわかった」の合計は、説明会に初めて参加した人で98.6%、2回参加した人では100%と、説明会の内容は二次離島居住者に理解されたようです。

「今後、薬剤師に期待すること」として「定期的なお薬説明会や相談会」を選択した方が、説明会に初めて参加した人で47.9%、2回参加した人で70.8%と多くなっていました。確かに2回参加者は薬や薬剤師に対して興味を持った人たちだから集まった可能性は否めませんが、お薬説明会・相談会を継続して開催したことで、薬剤師の顔が見えるようになったことも「定期的なお薬説明会や相談会の開催」に期待する方たちの増加を後押ししたと考えられます。

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定期的なお薬説明会・相談会の開催で薬剤師の顔が見えるように

薬剤師に聞きたい!

 アンケートでは「薬の説明は誰から聞くのがわかりやすいと思うか」という質問もあります。事前アンケートでは「医師」と回答した人が56.7%と半数以上で、「薬剤師」と回答したのは27.3%でした。多くの二次離島には診療所が設置され、医師による診療が行われているものの、薬剤師は存在せず、投薬は医師や看護師が行っていて、薬剤師から説明を聞くこともないので当然の結果です。

 それが説明会終了後は「医師」が37.3%となり、「薬剤師」が39.4%と、薬剤師の方が若干多くなっていました。そして「お薬説明会・相談会」を6年間継続した結果、「医師」と回答した方は38.9%、「薬剤師」と回答した方は54.4%と、半数以上が薬のことは薬剤師から説明を聞いた方がわかりやすいとなっていました。つまり、「お薬説明会・相談会」を開催する以前と比較すると、薬剤師に対する住民の意識に大きな変化がみられ、薬剤師が少しは身近な存在になれたのかもしれません。

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お薬相談会を通じて薬剤師が身近な相談相手になってきました

次へのステップ

 これまで紹介させていただいた「お薬説明会・相談会」は、薬剤師に対する認識を高め、意識を変化させるという目的で、薬剤師から二次離島の住民に対する一方向の説明が主となっていました。それが「聞きたかことのあったときには、あんただおらんじゃん」という住民からの訴えや、澤田先生からの説明会のスタイル変更および他の医療者との連携などに関するアドバイスを踏まえ、次の離島調査第4弾に進むことになります。

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お菓子をいただきながら血圧測定

 これは、二次離島の住民に、薬局の緊急時の連絡先を記載した一覧表を配布して、おのおの「かかりつけ薬剤師・薬局」をつくってもらうこと。医薬品などに関して疑問に思ったり、不安に感じたりしたら、すぐにかかりつけの薬剤師に電話してリアルタイムに相談できるという「かかりつけ薬局定着事業」です。

 そして、離島住民の診療を行なっている医師や看護師とも連携して、二次離島住民の相談内容やインシデント事例をフィードバックすることで、医薬品の適正使用に努めていくというものです。

 その内容や、お薬説明会の新たなスタイルについては、またおいおい紹介していくとして、次回からは、また島へ行ってみたいと思います。これから先は、島の住民たちと、さらにディープに付き合っていくことになりますので乞うご期待。

五島曳船詩・福江島 石神神社

大津には人を見守る大きな石が静かに祀られている

 高台にある、住吉神社の境内から大津の町に下りて行くと、鳥居の前に辰ノ口城跡と彫られた小さな石碑が建っている。宇久家が岐宿の城岳から、福江に進出してきて最初に立てた城跡である。

goto15_tatsunokuchi.jpg辰ノ口城跡

 永世4(1507)年正月、辰ノ口城は、島の反対側の玉之浦を支配する玉之浦納の攻撃を受けた。城主の宇久囲は、家臣の大久保日向家次を呼び寄せ、当時3歳の囲公の嫡男三郎君と奥方、そして乳母、神官平田庄右衛門を伴い城を脱出して、奥方の里である平戸の松浦弘定公の庇護を受け、いつか必ずや敵を取ってくれるように命じる。

 5名は、夜ひそかに城を脱出し裏山に潜伏した。幸いそこには5、6人が隠れることができるほどの大岩があった。今、山中から抜け出すのは危険と感じた家次は、大岩に一行の身を守ってくださるよう祈願し、しばらく大岩に身を潜めた。

goto15_ishigamisama.jpg石神様

 やがて玉之浦納の本隊が一挙に城内に乱入するも人影はない。玉之浦納の軍勢は、八方手分けして追跡を行い、一行が身を隠す大岩付近もしきりに行き来するが、誰一人として探し出すものはいなかったという。

 医薬に関係するものであれば、一度訪れ、手を合わせてみてはどうだろう。その時には、辰ノ口城跡から、一行が逃れたであろう道中を訪ね歩くのも悪くない。大津には人を見守る大きな石が静かに祀られている。

goto15_ishigami.jpg石神様を祀る石神神社

【コラムコンセプト】

読者の皆さんは、薬局もなく薬剤師もいない離島があることを、そして、薬剤師とはどんな役割を担う医療者なのかを知らない人がいることをご存じですか。私は長崎県の五島列島にある福江島で、ゆうとく薬局という小さな薬局を経営している薬剤師です。長崎県薬剤師会離島対策委員会の活動として、東京大学の澤田康文教授との共同研究で、離島住民の医薬品適正使用に関する調査研究を行っています。これからしばらく、私の周辺で巻き起こったドタバタ劇を紹介させていただくことになりました。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

平山匡彦ひらやまただひこ氏 プロフィール】

大学では、写真部やハンドボール部など複数のクラブを掛け持ちするなど充実した学生生活を送る。卒業後は、石川県金hirayamatadahiko.jpg沢市の徳久和夫先生、綿谷小作先生に師事し、その後、郷里の長崎県五島市へ戻り、平成10(1998)年よりゆうとく薬局を独立開業。仕事の傍ら、友人たちとNPO団体を設立し、タウン情報誌の発行の他、さまざまな島おこし活動を行う。薬剤師会の活動としては、平成29(2017)年現在、一般社団法人長崎県薬剤師会理事及び一般社団法人五島薬剤師会理事を兼任。長崎県薬剤師会の離島対策委員会に所属し、東京大学の澤田康文教授の指導による離島住民の医薬品適正使用の調査をきっかけとして、現在、薬局がなく薬剤師が存在しないような島々を巡りながら、薬の説明会や相談会を継続開催している。

ゆうとく薬局:http://www.yutoku-ph.jp

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