新規登録

その言葉、伝わっていますか?―気付かずに使っている専門用語

2018年11月06日 14:10

獨協医科大学埼玉医療センター こころの診療科
井原 裕

 患者さんと会話をする中で、自分はきちんと伝えたはずなのに、相手は理解していなかったり、こちらの意図とは違った形で受け止めていたりすることがあると思います。それは何気なく使っている「あの言葉」のせいかもしれません。患者さんとスムーズにコミュニケーションを取るための、精神科医・井原裕先生からのメッセージです。

seishinka_1810.jpg

 私どもは、患者さんたちから「医者の話は分かりにくい」と批判されることがあります。その中には、「侵襲」や「予後」のように医療関係者以外はあまり使わない語もあります。でも、それ以上に「全身管理」「栄養血管」といった知っている言葉が組み合わさって特殊な意味を成すものも、非専門家には難しいようです。

 そこで、薬剤師の使う言葉についても、幾つか調べてみました。例えば、「屯用」「頓用」という言葉は、『広辞苑』には載っていません。「頓服」は一応載っていますが、それでも普通の人は知らない言葉かもしれません。「服用」「投与」は『広辞苑』に載っています。でも、その場合、意味①はそれぞれ「衣服などを身につけること」「投げ与えること」であり、意味②において初めて「薬を飲むこと」「薬剤を与えること」が出てきます。

「服用」が分かりにくいのは、名詞の「服」は「衣服」を意味する上、動詞の「服する」も通常は「命令に服する」「喪に服する」のような使い方をするからでしょう。「投与」という言葉も、語感は路上の気の毒な人に小銭を「投げ与える」イメージです。「投薬」といえば、やんちゃな子供なら、「錠剤を放り投げて、それを見事に口の中に入れる」ことを想像するでしょう。

「禁忌」は、一般には「忌むべきもの」という意味です。「ショック」といえば通常は心理的衝撃のことであり、これが「急性末梢循環不全」だとは想像できません。そもそも「循環」だって、バスなどが一回りすることを意味します。バスが着く所を「ターミナル」と言いますから、この言葉も普通は「終末期」としては受け取られません。

 おそらく、薬剤師の皆さんも、投薬窓口で患者さんと話すときに「分かってもらえていない」感覚を味わうことがあるでしょう。言葉の意味をめぐる小さな行き違いがあるのかもしれません。気付かずに使っている専門用語を、もう一度見直してみてもよさそうです。

コメント

コメントの投稿はDISQUSもしくは各種SNSアカウントでログインするで必要があります。DISQUSの登録方法について

似たようなコンテンツ
【インタビュー】門内薬局がダメなら門前薬局もやめるべきか?

【インタビュー】門内薬局がダメなら門前薬局もやめるべきか? New!

インタビュー
2018年11月15日

倍量の抗がん剤を渡してしまった......基本を忘れるとミスが起きる

倍量の抗がん剤を渡してしまった......基本を忘れるとミスが起きる

迷走奔走外来ケモ奮闘記
2018年11月09日

処方権も調剤権もない!権利を持つのは患者だけ

処方権も調剤権もない!権利を持つのは患者だけ

インタビュー
2018年11月08日

【解説】効果がない薬の処方をどうするか?

【解説】効果がない薬の処方をどうするか?

薬剤師の判断力向上講座
2018年11月06日

「この治療だけが望みなんです」

「この治療だけが望みなんです」

薬剤師の判断力向上講座
2018年11月06日

「服薬指導力がないってことでしょ」薬局長のツッコミにリベンジ!

「服薬指導力がないってことでしょ」薬局長のツッコミにリベンジ!

迷走奔走外来ケモ奮闘記
2018年11月02日

シリーズ◆医薬分業は限界なのか!?

シリーズ◆医薬分業は限界なのか!?

インタビュー
2018年11月01日

トップに戻る