薬剤師が活躍して地域を盛り上げる!:キャリアcafé@日本プライマリ・ケア連合学会秋季セミナー
福井県高浜町と岩手県釜石市の薬剤師が語る職場自慢・地域自慢・自分自慢! JCHO若狭高浜病院薬剤科 野田学×ハロー薬局 町田和敏
2018年11月12日 08:00
日本プライマリ・ケア連合学会は、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会が合併して2010年に設立された学会で、医師、歯科医師、薬剤師、看護師や介護職といったさまざまな医療職や学生が参加しています。同学会の男女共同参画委員会が主催するキャリアcaféは、学術大会やセミナーなどの会期に開催される、誰でも参加可能な交流の場です。その目的は、男女共同参画意識を醸成しつつ、メンターやロールモデルを見出す機会を設け、医療人の職業活動の継続に必要である私生活を含めたキャリア形成を支援することです。
キャリアcaféが行っている活動
- プライマリ・ケア領域で働く医療人を対象とした個別キャリア相談
- メンター、ロールモデルとの出会いの場づくり
- ピアサポートを行うコミュニティ形成
日本プライマリ・ケア連合学会第16回秋季生涯教育セミナー(9月15〜17日、大阪)でもキャリアcaféが催されました。その1つとして開催された「薬剤師のしゃべり場」では、「職場自慢、地域自慢、自分自慢」というテーマで、共に「プライマリ・ケア認定薬剤師」である野田と町田がゲストスピーカーを務めました。今回はその模様を「お互いの発表を紹介しあう」というスタイルで報告します。
日本プライマリ・ケア連合学会キャリアcafé『薬剤師のしゃべり場』
職場自慢、地域自慢、自分自慢
2018年9月16日14:30〜15:30
ゲストスピーカー:
JCHO若狭高浜病院薬剤科 野田学
ハロー薬局 町田和敏
町田→野田:多職種協働で地域住民を巻き込み町全体で盛り上がっている福井県高浜町!
JCHO若狭高浜病院薬剤科の野田学先生は、本年8月6〜8日に湯河原(静岡県)で開催された「学生・研修医のための家庭医療学夏季セミナー」での取り組みを中心に報告しました。このセミナーは、日本プライマリ・ケア連合学会の学生・研修医部会が毎年開催しているもので、参加者が約40の参加型ワークショップの中から5つを選択し、3日間かけて行うという企画です。
野田先生は『総診、連携、地域、ここまでできる「たかはまコミュニティケアコンソーシアム」のトータルケア体験ワークショップ』のスタッフの1人でした。
このワークショップでは、1.総合診療病棟、2.多職種連携、3.地域志向アプローチの3つのブースを設けて、参加者が3つを巡りながら高浜町での実際のケアを疑似体験するというものだったようです(野田先生は総合診療病棟ブースを担当)。
その狙いは「総合的な能力とは何か」「地域にとって理想的な医療者像とは」「地域住民が求めるケアとはどういうものか」を参加者に考えてもらうことだったようです。参加者には薬学生も4人おり「薬剤師として参加し、地域に薬剤師がいることを示せてよかった」とおっしゃっていました。
それに加えて、現在、高浜町で取り組まれている多職種協働参画事業「たかはまコミュニティケアコンソーシアム」の活動についても紹介していただきました。高浜町内の医療介護施設および町役場内にコミュニティケアセンターを設置するとともに、各センターが連合してコミュニティケアに当たるというものです。
その活動内容は、多職種のメンバー内で定期的に相談・検討して行われており、中学校での地域医療介護特別授業の企画・運営や、高浜町のマスコットキャラクターである赤ふん坊やの唄を題材にした介護予防体操の創作・啓蒙など、企画が目白押しのようです。
野田先生は唯一の薬剤師メンバーとのことで、薬剤師の仲間がいないことなどが課題だと語っていました。
高浜町での活動を聞いていて、薬剤師以外の職種と、地域に向けた活動や後進の育成に資する活動を継続していることをうらやましいと感じるとともに、私自身の今後の活動にヒントがもらえました。

野田→町田:薬剤師の能力アップが地域住民の健康と安心につながる!能動的な研修会によって釜石の薬剤師に行動変容の兆し!
ハロー薬局の町田和敏先生は、2015年から釜石市で行っている地域や社内での勉強会について紹介しました。すごく精力的に取り組まれているな!というのが第一印象です。
能動的な研修会とは、いわゆる講義を聴講するだけでなく、グループワークや少人数単位のディスカッション、ロールプレイを組み入れたものを指します。
なぜそのような形式の研修会を推進しようと思ったのか、それは、町田先生自身がさまざまな団体や学会での能動的形式での研修会を体験し、自分自身の薬剤師業務における成功体験につながったからだとのことです。薬剤師が専門性を高めることで、薬を渡しているだけの現状を変え、地域住民の健康に寄与する...そんな薬剤師の成功体験を増やせたらという思いが原動力となって、さまざまな垣根を越えた研修会活動を進めているわけです。
釜石市内の他社の薬剤師と合同で行う研修会では薬物動態、相互作用、論文抄読や、医師や管理栄養士を招いての勉強会を実施、社内では臨床検査値の活用、事例検討、患者さんとのコミュニケーションなどの新人教育、服薬情報提供書の活用などの勉強会を行っているとのことでした。
こうした学びの機会を重ねる中で、少しずつ地域の薬剤師が変わりつつあるようです。例えば、服薬情報提供書が徐々に活用されつつあり、市内の医師から「薬剤師さんからの情報提供、助かっています」といった言葉をかけてもらったとのことでした。
このように、さまざまな分野の話題を取り入れていることは素晴らしいと思いました。町田先生は「気づき」や「きっかけ」を提供したいという思いがあるようです。独学だとどうしても分野が偏りがちですが、さまざまな分野に触れる機会があれば、多くの気づきやきっかけを得ることができるのではないかと感じました。また、こうした研修会では敬遠されがちなグループワークを取り入れられていることにも驚きました。実際に行うとなるとなかなか難しいですからね。
さらに、職種や会社といった垣根を飛び越えて活動されているのも印象に残りました。どうしても、なにか壁を感じてしまいがちですが、このお話を聞いて勇気をもらえた気がしました。
質疑応答では「なんでそんなに精力的に活動できるのか?」という問いが。町田先生の答えは「自分が楽しいから」。やっぱり、それが一番大切ですよね!
町田先生は「薬剤師の能力アップが地域住民の健康と安心につながる」を理念に掲げています。「地域住民」というワードが素敵です。これからもその理念のもと、継続・発展させていただければと願っています。

薬剤師のこれからや働き方...キャリアcaféでユルく気軽にお話ししよう
キャリアcafé参加者からは「さまざまな活動を聞き、刺激になりました」「いろいろな活動をされているのがわかり、参考になりました」といった声が寄せられ、野田、町田両名とも、お話しした甲斐があったなぁというのが感想です。
キャリアcaféはお菓子とお茶をいただきながらユルく気軽にお話しできる、まさにcaféスタイルの場。今後も継続して開催していくそうなので、機会がありましたらふらりとお越しくださいね。
