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門内薬局がダメなら門前薬局もやめるべきか?

シリーズ ◆ 医薬分業は限界なのか? 岩月進氏インタビュー【2】

2018年11月15日 10:15

 

 院外処方箋料の引き上げにより、医薬分業制度が進展し始めてから44年がたつ。しかし、いまだに公的な議論の場で、医薬分業の意義が問われるのはなぜか。愛知県薬剤師会会長の岩月進氏は、医師・薬剤師の相互のチェック機能により薬物治療の安全性を高めていくことが医薬分業の意義であるとし、薬剤師は国際標準の薬物治療を学び、薬物治療の安全性を高めていく介入を行うことが肝要であると述べた(関連記事)。今回は、薬剤師会の在り方について問う。

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一般社団法人 愛知県薬剤師会 岩月 進 氏


【プロフィール】
愛知県薬剤師会会長。有限会社ファーマケア代表取締役。1978年名城大学薬学部卒。2004年から6年、日本薬剤師会常務理事を務め、主に社会保険を担当。2010年から2年は、日本薬剤師会調剤技術委員会副委員長として「第13改訂調剤指針」の編集に関与した。2011年より愛知県薬剤師会副会長を経て2017年より現職。


岩月氏の主張

  • ●薬剤師会は、どう動いたらよいか分からなくなっている
  • ●門内薬局がだめなら門前薬局もだめなのか?
  • ●薬剤師会はどうやって薬剤師を守れるかを議論すべき!

チェックボックスのフリーアイコン (1).png薬剤師会は、どう動いたらよいか分からなくなっている

――医師と薬剤師は、物理的な業務の流れが上流と下流に位置します。さらには、門前を中心に医薬分業が進められてきたことから、薬剤師が医師に対して強い主張をできないという権威勾配が成り立ってしまったのは、自然な流れかもしれません。この状況を打破するために、薬剤師は世界標準の薬物治療を勉強して、自身が提供する薬物治療の安全性を高めていくべきだということでした。薬剤師会としては、どのような対応が望ましいでしょうか。

岩月 営利を追求する資本主義体制において薬局が経営されている以上、管理薬剤師の権限をどのように担保して、営利のみに流れないような歯止めをつくるかといった議論をしていくべきだと思います。

 議論の場で、医薬分業の費用対効果ばかりが俎上に上がり、本筋と違う議論がなされているのであれば、それを指摘しなければいけませんし、厚労省が出す指針の方向性に異論を抱いたなら、「それはおかしい!」とも言うべきです。

――そういった場で薬剤師会が主張しにくくなっている原因はなんでしょうか。

岩月 分業や薬局・薬剤師の在り方に関して、日本薬剤師会として明確な主張があるのだろうかと感じることはありますね。

 日本薬剤師会の会長協議会に参加すると、私はつい、いろいろな質問をぶつけたりするのですが(笑)、こういうガラの悪い都道府県薬剤師会会長は少なくて、皆さん静かにしています。ところが、休憩時間になると、私に「岩月さんの言う通りだ!」って声をかけられることがあります。「応援してくれるなら会議中に発言して」と思いますけれど。せっかく貴重な時間と予算を使って会議をしているのに、議論が沸騰していかないから、薬剤師会は何が言いたいのか、はっきりと分からなくなってしまっているように見えます。

――分からなくなっているというのは、何を。

岩月 現状で、どう動いたらよいのかが分からない。世の中の流れに敏感でないのが、県薬剤師会も含めた薬剤師会全体の体質のようにも感じます

チェックボックスのフリーアイコン (1).png門内薬局がだめなら門前薬局もだめなのか?

――どのような場面でそう感じますか。

岩月 例えば、敷地内薬局が認められるようになりましたが、これに対しての反対意見が上がりました。

 なぜ、門前薬局や門内薬局ができるのでしょう?その理由の大部分は、努力しなくても立地で患者さんが処方箋をお持ちになること、そして、決まった処方箋しか来ないが故に、薬剤師の配置状況や在庫の管理上でも経営効率がいいからでしょう。薬局を立地ではなく機能で評価しようとしている時代に「門前はいいけど、門内はダメ」ってどういうことでしょうか?敷地の内側か外側かで、何が違うのでしょうか。

 私はこれまで、ヨーロッパの薬局をいろいろと視察してきました。スウェーデンのカロリンスカ大学病院では敷地内の別棟薬局が存在するものの、その他に敷地内に孤立して建てられている薬局を見たことはありません。 例えば、スイスのローザンヌ大学病院では、病院の建物内に薬局があります。主に医薬分業における弱者(移動制限や移動困難患者)に対応するために置かれた薬局なので、目立つようには設置されていませんでした。

 ルールで敷地内薬局が許可になったら、募集する医療機関や応募する薬局も出てくるのは当然でしょう。であれば、どういった薬局が敷地内薬局の役割なのか、地域に広がった面分業をまた病院の敷地内に戻すことの是非も含めて議論すべきでしょう。

 敷地内であれば24時間365日開局し、無菌調製や高度在宅医療にも対応した高機能薬局を目指す方法もあります。ゆくゆくは病院内の配薬や、病棟業務を含めて実施できる薬局をつくることも考えられます。むしろ、病院薬剤師が薬局を設立して「うちがやります」と宣言する方法もありませんか。こうすれば、院内の調剤所から脱却して「医」と「薬」の分離した、本当の意味での「医薬分業」になるのではないでしょうか。

 薬局を分けるのは立地ではなく、薬剤師のマインドだということ。立地上の門前薬局であっても、他の医院からの患者さんも受け入れるための勉強や準備をしておき、地域包括ケアへの対応ができれば、機能が評価される薬局になるはずです。地域の患者さんの理解も得られるでしょう。一方で、経営者の視点からは、他の医療機関に対応した在庫の確保や開局時間の延長に伴う薬剤師の手配を考えると、非効率的な薬局運用になることを懸念する向きもあるように思います。

 このように、経営者の論理と薬剤師の倫理に相反が生じた場合にどうするかという議論をするべきですし、それは職能団体としての薬剤師会が担う役割だと思います

チェックボックスのフリーアイコン (1).png薬剤師会はどうやって薬剤師を守れるかを議論すべき!

――経営者と責任者の権限という点では、2017年にハーボニーの偽造品が流通した際に話題になったことがありました。

岩月 ハーボニーの不正流通の事件後の処分では、管理薬剤師に対して3ヵ月の業務停止が言い渡されました。一方で、薬局側には5日間の営業停止。

 なぜ、薬剤師の方が経営者よりも何倍も処分が重いのか。私たちは職能団体ですから職能団体として開設者と管理者双方の事情を聴いた上で、再発防止策を話し合うことが必要だったと思います。万一、不正が経営者側の指示であった場合、薬剤師会はどのようにして当該薬剤師を守れるかを議論すべきでしょう。

 今回の事例は図らずも、薬剤師会が薬剤師のための組織になっていないかのような印象を与えてしまった一件でした。

――薬剤師会が薬剤師の意見を代弁できていない点が問題なのでしょうか。

岩月 そうです。薬剤師会は、世の中の流れを把握し、薬剤師の意見を代弁する。その上で、「薬剤師が、こうしたい」ではなくて、「患者さんのためにより良い薬物治療を提供するために、薬剤師はこうしていこう」というビジョンを組み立てていくべきです


岩月進氏に医薬分業を聞く!全4回シリーズ

第1回 処方権も調剤権もない!権利を持つのは患者だけ

第2回 門内薬局がダメなら門前薬局もやめるべきか?

第3回 日本は薬局業務の先進国と言えるのか!?

第4回 患者が薬剤師を選べるような仕組み作りにまい進
~愛知県薬剤師会の試み

シリーズ◆医薬分業は限界なのか!?

医薬分業のこれからの在り方を識者にインタビューするシリーズ

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