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ACE阻害薬の使用で肺がんリスクが上昇

約100万例の地域住民ベース大規模コホート研究

2018年11月15日 10:00

ACE阻害薬の使用で肺がんリスクが上昇

© Getty Images ※画像はイメージです

 カナダ・McGill UniversityのBlánaid M. Hicks氏、Laurent Azoulay氏らは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の使用と肺がんリスクの上昇との関連を検討するため、約100万例に及ぶ地域住民ベースのコホート研究を実施。その結果、ACE阻害薬の使用は肺がんリスクの上昇と関連し、特に累積投与期間が5年を超える場合にリスクが高まるとBMJ2018;363:k4209)で報告した。

この記事のポイント

  • ACE阻害薬およびARBの使用と、肺がんリスクの上昇との関連を検討するコホート研究が行われた。
  • 研究には英国の総合診療医データベースが使われ、約100万例が組み入れられた。
  • ACE阻害薬の使用で、肺がんリスクが14%上昇することが示された。投与期間が長いほどリスクは高かった。

英国の地域住民約100万例を組み入れ

 ACE阻害薬は、短期使用は比較的安全であることが示されているが、長期使用はがんのリスク上昇と関連する可能性があることが懸念されている。

 ACE阻害薬を使用すると、肺内にブラジキニンやサブスタンスPが蓄積する。これらの化学物質は肺がん組織で認められ、ブラジキニンは肺がんの増殖を直接刺激し、サブスタンスPは腫瘍の増殖や血管新生と関連することが基礎研究などで示されている。

 しかし、これまでACE阻害薬と肺がんの関連を検討した観察研究はほとんどなく、一貫した結果は得られていない。

 そこでAzoulay氏らは、大規模なコホート研究でACE阻害薬とARBを比較し、肺がんリスクの上昇との関連を検討した。

 英国の総合診療医データベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いて、1988年1月1日~2015年12月31日に新たに降圧薬治療が開始された18歳以上の全患者を特定。降圧薬が初めて処方された患者を確実に組み入れるため、CPRDで既往歴のデータが1年以上得られる患者に限定した。

 次に、これらの患者から1995年1月1日~2015年12月31日に新たに降圧薬治療が開始された全患者を特定し、今回のコホートとした。1995年は英国でACE阻害薬とARBの両薬が使用可能となった年である。過去にがんの診断を受けた患者、がんの治療を受けた患者は除外し、2016年12月31日まで追跡した。

 コホートの組み入れ基準を満たした患者は99万2,061例。平均6.4年の追跡期間中に投与された降圧薬はACE阻害薬が33万5,135例、ARBが2万9,008例、ACE阻害薬とARBの両方が10万1,637例だった。

肺がんリスクが14%上昇、投与期間が長いほど高値に

 延べ追跡期間635万584人・年の追跡で7,952例が新たに肺がんと診断された。粗罹患率は1,000人・年当たり1.3(95%CI 1.2~1.3)。

 1,000人・年当たりの粗罹患率はACE阻害薬で1.6、ARBで1.2。結果に影響する因子(年齢、性、BMI、喫煙状態、アルコール関連疾患、登録前の肺疾患の既往など)を調整した結果、ARBと比べてACE阻害薬では肺がんリスクが14%上昇することが示された(ハザード比1.14、95%CI 1.01~1.29)。

 調整ハザード比は、ACE阻害薬の累積投与期間が5年以下で1.10(95%CI 0.96~1.25)だったが、5.1~10年では1.22(同1.06~1.40)、10年を超えると1.31(同1.08~1.59)に上昇。ACE阻害薬投与による肺がんリスクの上昇は、累積投与期間が5年を超える場合に顕著となった。同様の傾向は、ACE阻害薬の初回投与後の期間でも認められた。

 Azoulay氏らは「今回観察された肺がんリスクは大きくないものの、ACE阻害薬は世界で最も広く処方されている薬剤クラスの1つであることから、そのリスクを有する患者の絶対数が大きくなる可能性がある」と考察。「今後の研究では長期の追跡でACE阻害薬が肺がんの罹患に及ぼす影響を検討し、長期投与患者など他のサブグループでも検討する必要がある」とした。

 今回の報告についてデンマーク・Aarhus UniversityのDeirdre Cronin-Fenton氏は「肺がんの長期のリスク増大に関する懸念は、ACE阻害薬の使用で得られる寿命の利益とのバランスで考える必要がある。ACE阻害薬の長期の安全性に関する科学的エビデンスを増やすため、長期の追跡を行う研究が求められる」とコメントしている。

(Medical Tribune Webより転載)

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