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死を意識した患者・家族に寄り添う 在宅薬剤師の経験から

2018年12月03日 15:45

死を意識した患者・家族に寄り添う 在宅薬剤師の経験から

つぼみ薬局居宅介護支援事業所(広島市安佐南区) 
角山 美穂

在宅患者さんのお役に立ちたくて,在宅専門薬局を立ち上げたのが2009年11月。1人薬剤師 兼 ケアマネとして,24時間体制で頑張っています!

【PharmaTribune2013年3月号掲載】

死を意識した患者・家族に寄り添う

否認→怒り→取引→抑うつ→受容。この5段階の心理の移り変わりは、エリザベス・キューブラー・ロス氏が示した『死に行く患者の心理』として有名です。私が今まで接してきた患者さんを見ていても、的を射ているな〜という印象です。

◦否認: 自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階
◦怒り:なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階
◦取引:なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階で,何かにすがろうという心理状態
◦抑うつ:なにもできなくなる段階
◦受容:最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階

 がんによる余命宣告や、抗がん剤治療の終了時には、「どうして自分が...。何かの間違えでは」とセカンドオピニオンを受けたり、昨今問題性を痛感している「補完代替医療」にあれこれ多額のお金をつぎ込む患者さんもいます。

 磁気や多量ビタミンC点滴療法、気功やフコイダン…。高麗人参も見せていただいたことがあります。患者さんは、これらの情報をご家族や治療入院中の同室の患者さんなどから聞く場合が多いようです。患者さんから「試してみようかと思う」と相談を受けてインターネットで検索すると、エビデンスがないものの、本当に効き目があるように錯覚するような宣伝があり、ビックリします。薬剤師という職業柄、「ご相談いただいたら科学的根拠の不明なものは辞めましょうとしか言えません」と伝えますが、大抵の方は思いとどまらず、試しているようです。しかし、担当医師に報告、相談される患者さんは少ない印象です。

 特に落ち込みの著しい患者さんへは、「十全大補湯」の処方を医師に相談してみるよう、アドバイスしています。もしも自分がその立場だったら、やはり「何かにすがりたい!」と思うでしょう。それは当然だと思うので、「抗がん剤治療で貧血状態にある患者さんには一番いいのでは」と考えての、拠り所としてのアイテムです。

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 2012年12月6日早朝。つぼみの開局当初に往診医よりご紹介いただいた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんが、自宅で永眠なさいました。昨年5月、突然「家に帰ろうと思うんよ。主治医にはお隣の薬局を利用して欲しいって言われたんだけど、前に1年間お世話になってよく知ってもらっているから、またお願いできない?」とお電話をいただいてから半年...。いろいろと思い出されます。穏やかな笑顔、ノーベル賞で話題になったiPS細胞による治療薬への期待、二酸化炭素の貯留により苦まれていた頭痛、その時に提案した麻薬処方...。最後にお会いした際、顔面のうっ血に「その時」を予感したのは11月末でした...。

 この患者さん、そして主介護者の娘さんには、たくさんのことを教えていただきました。ご本人が表明していた「気管切開はしない」という意思、そして「家で逝きたい」という願い。それを、奥さん、娘さん、息子さんが叶えてあげられました。頭の下がる介護でした。

 隔週で訪問する際には、実習生を同行させていただきました。患者さんやご家族には何でもご相談いただいていましたので、「どうやってこんな信頼関係ができたのか」と学生が驚いていました。「どう寄り添っていたのか?」と自問してみますと思いつくのは、やはりコミュニケーションです。「痛みカレンダー」を介しての痛みの評価や、排便・睡眠などの聞き取り、そして情報交換が良かったのでしょうか。

 たくさんの別れを経験して来ましたが、今回はなかなか...。燃え尽き感が辛いです。

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