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便秘薬~うんちの調子が悪いんですけど、どんな薬がイイですか?- 後編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2018年12月03日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どんな便秘薬がいい?」

  • 便秘と便秘"感"?
  • 便秘薬を販売する前に考慮すること
  • 食習慣の改善や運動で便秘は解消するもの?
  • どんな薬が考慮できる?
  • 便秘薬の有効性・安全性
  • 結局のところどうするか

薬の無料アイコン9.png今回出てくるOTCは・・・

錠剤ミルマグLX(エムジーファーマ)、3Aマグネシア(フジックス)、オイルデル(小林製薬)、コーラックファースト(大正製薬)、スルーラックプラス(エスエス製薬)、ウィズワンエル(ゼリア新薬)、ビオフェルミン便秘薬(ビオフェルミン製薬)、コーラック(大正製薬)、コーラック坐薬タイプ(大正製薬)、新レシカルボン坐剤(ゼリア新薬)、ケンエー浣腸(健栄製薬)


薬の無料アイコン9 (1).pngどんな薬が考慮できる?

 便秘症状に用いられる主な市販薬(表4)をまとめます。

(表4)主なOTC便秘薬

表4_aoshimaOTC_06_benpi.png(筆者作成)

 便秘には機能性便秘と器質性便秘があり、その多くは前者でした。機能性便秘はさらに①弛緩性便秘 ②痙攣性便秘 ③直腸性便秘に分けられます。便秘薬の使い分けも、この分類に準じると整理しやすいと思います(表5)

(表5)機能性便秘の分類と薬物療法

表5_aoshimaOTC_06_benpi.png(筆者作成)

薬の無料アイコン9 (1).png便秘薬の有効性・安全性

 OTC便秘薬は種類が豊富ですが、その有効性・安全性に関して質の高いエビデンスは少ない印象です。以下、主な便秘薬の特徴について簡単に整理します。

■マグネシウム製剤

 マグネシウムは腸管でほとんど吸収されず、浸透圧の高い管腔内環境をつくり出します16)。高浸透圧の腸管内に存在する便に、水分が移行し硬便を軟便化することで、便秘症状を改善するというわけです。比較的安全性の高い薬剤ではありますが、用量依存性に高マグネシウム血症を引き起こすこともあり17, 18)腎機能が低下している人では注意が必要です。

■センノシド

 医療用医薬品としても使用される頻度の高いセンノシドですが、便秘に対する有効性を検討した質の高いランダム化比較試験は報告されていないようです19)。安全性は比較的高いと考えられますが、長期連用による薬剤耐性の問題などもあり、その使用は必要最低限にとどめたいところです。また、センノシドなど、アントラキノン系の刺激性緩下剤の服用を長期に続けることで、大腸壁に色素が沈着(大腸メラノーシス)することもあります。なお、この色素沈着による機能的な影響はないといわれています。

■ピコスルファートナトリウム

 機能性便秘を有する患者367人を対象としたランダム化比較試験20)では、プラセボと比較してピコスルファートナトリウム投与群で自発排便回数が有意に増加するという結果でした。週当たりの自発的排便回数の平均値は、ピコスルファート群で0.9回から3.4回へ増加したのに対して、プラセボ群では1.1回から1.7回の増加にとどまりました。

■ビサコジル

 19~89歳の便秘患者55例を対象としたランダム化比較試験21)では、プラセボと比較して、ビサコジル投与群で、排便頻度が有意に増加するという結果でした。1日当たりの平均排便回数は、ビサコジル10mg1日1回3日間連続投与群で1.8回、プラセボ1日1回3日間連続投与群で0.95回となっています。

 また、機能性便秘患者368人を対象としたランダム化比較試験22)においても、プラセボと比較してビサコジルで排便頻度が有意に増加しました。週当たりの排便回数は、ビサコジル10mg1日1回4週投与で1.1回から5.2回に増加したのに対して、プラセボ1日1回4週投与では1.1回から1.9回でした。

■炭酸水素ナトリウム坐薬

 炭酸水素ナトリウムの坐薬は直腸内で融解して発生した二酸化炭素が直腸粘膜を刺激、拡張することによって、腸の拡張反射を促し、この排便刺激が便秘を改善します。基本的には直腸性便秘に用いることが多く、慢性便秘に対してルーチンで使用される薬剤ではありません。炭酸水素ナトリウム坐薬の有効性については、便秘患者29例を対象としたクロスオーバー研究23)が報告されています。坐薬挿入後30分後の反応性は炭酸水素ナトリウム坐薬で51.7%、プラセボ坐薬で6.9%と、統計学的にも有意に反応性が高いという結果でした。

■プロバイオティクス

 表6に示した通り、プロバイオティクスは便秘症状の改善効果が期待できます24,25)。妊娠女性において、ヨーグルトが便秘症状を改善したという報告26)もあり、医学的な理由から薬剤の服用が難しい患者さんに対して治療選択肢の1つとなります。

(表6)機能性便秘に対するプロバイオティクスの効果

表6_aoshimaOTC_06_benpi.png〔ランダム化比較試験14研究(解析対象1182例)のメタ分析〕

(文献24より筆者作成)

■グリセリン浣腸

 炭酸水素ナトリウム座薬と同様、直腸粘膜を刺激・拡張し、拡張反射による排便刺激を与えることによって便秘を改善します。薬剤自体の安全性は高いと考えられますが、浣腸行為に伴う直腸損傷の症例が報告されており27)注意が必要です。直腸から高濃度グリセリンが吸収されること、溶血を起こすこともあり、場合によっては、腎不全を来すこともあります28)。したがって、浣腸製剤を販売する際は、適切な使用法について、十分な情報提供を行う必要があります29)

薬の無料アイコン9 (1).png結局のところどうするか

 便秘の治療でまず考慮すべきなのが、非薬物療法であり、ドラックストアの現場では、プロバイオティクス含有製品やプルーン製品の販売が考慮できるでしょう。また、腸管運動が最も活発なのは、起床直後と食後30) ですから、モーニングコーヒーもお勧めできます。OTC医薬品の選択も含め、便秘への対応を以下にまとめます。

便秘への対応はこうしよう!

  1. 1.器質性便秘や重篤な疾患の疑いがないこと、便秘を誘発するような併用薬剤がないことを確認
     
  2. 2.お客さんが希望しているのが薬物治療なのか、非薬物療法なのかを確認。
     
  3. 3.OTC医薬品で対応する場合、浸透圧性下剤あるいは非刺激性下剤を優先的に考慮
     
  4. 4.2 の薬剤を既に使っていて効果がない場合、大腸刺激性下剤を考慮するか、長期連用が疑われるケースでは医療機関受診を奨める。
     

 本症例では、お客さんが便秘薬を希望されていること、そして硬便傾向などを踏まえて、まずは大腸刺激性下剤を含有していないジオクチルソジウムスルホサクシネート製剤(例えばオイデル®)、あるいは酸化マグネシウム製剤を低用量からの開始が選択肢になると思います。ジオクチルソジウムスルホサクシネートは安全性の観点からも推奨できますが、OTC医薬品では大腸刺激下剤が配合されていることが多いので注意が必要です。

 マグネシウム製剤や非刺激性下剤であまり効果がない場合は大腸刺激性下剤を、直腸性便秘が疑われるのであれば炭酸水素ナトリウム含有坐薬を考慮します。ただ、便秘改善薬は短期的な使用が原則です。長期連用は薬剤耐性の観点からもお勧めできません。状態が軽快しない便秘に関しては、医療機関の受診勧奨も考慮した方がよいでしょう。

【参考文献】

1)Am J Gastroenterol. 2011 Sep;106(9):1582-91; PMID: 21606976
2) 厚生労働省. 平成28年国民生活基礎調査の概況
3) Am J Public Health. 1990 Feb;80(2):185-9PMID: 2297063.
4) Gastroenterology. 2016 Feb 18. [Epub ahead of print] PMID: 27144627
5) Can Fam Physician. 2015 Feb;61(2):152-8 PMID: 25676646
6) Dis Colon Rectum. 2000 Jul;43(7):940-3. PMID: 10910239
7) J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2000;55:M361-5 PMID: 10898251
8) Aging 1991;3:161-70 PMID: 1911905
9) Res Q Exerc Sport 2000;71:206-16 PMID: 10999258
10) Dig Dis Sci 1998;43:2379-83. PMID: 9824122
11) World J Gastroenterol. 2012 Dec 28;18(48):7378-83 PMID: 23326148
12) Am J Gastroenterol. 2005 Jan;100(1):232-42. PMID: 15654804
13) World J Gastroenterol. 2012 Sep 7;18(33):4593-6. PMID: 22969234
14) Eur J Gastroenterol Hepatol. 2005 Jan;17(1):109-12. PMID: 15647650
15) Aliment Pharmacol Ther. 2011 Apr;33(7):822-8. PMID: 21323688
16) Magnes Res. 1996 Jun;9(2):133-8 PMID: 8878010
17) Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2011;48(3):263-70. PMID: 21778650
18) 医薬品・医療機器等安全性情報 No.328 酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症について
19) BMJ Clin Evid. 2010 Jul 5;2010. pii: 0413. PMID: 21418672
20) Am J Gastroenterol. 2010 Apr;105(4):897-903. PMID: 20179697 
21) Aliment Pharmacol Ther. 2006 May 15;23(10):1479-88. PMID: 16669963
22) Clin Gastroenterol Hepatol 2011 Jul;9(7):577 PMID: 21440672
23) Clin Drug Investig. 2005;25(8):499-505. PMID: 17532693
24) Am J Clin Nutr. 2014 Oct;100(4):1075-84. PMID: 25099542
25) Arch Gerontol Geriatr. 2017 Jul;71:142-149. PMID: 28467916
26) Iran Red Crescent Med J. 2016 Oct 1;18(11):e39870. PMID: 28203450
27)日本大腸肛門病会誌 2016 年 69 巻 7 号 p. 379-386 DOI: 10.3862/jcoloproctology.69.379
28) 日本臨床外科学会雑誌 2016;77:1171─1176 DOI: 10.3919/jjsa.77.1171
29) 医薬品医療機器総合機構, 医療安全情報 No.34グリセリン浣腸の取扱い時の注意について 
30) Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2001;280:G629-39 PMID: 11254489

【連載コンセプト】
薬剤師、登録販売者のためのOTC連載です。OTC医薬品に対する考え方、使い方について「実践的」に整理します。筆者のドラックストアでのバイト経験と、具体的な薬剤エビデンスに基づき、実際の患者にどうアプローチしていけばよいのか、ピットフォールなどを交えて解説していきます。

【プロフィール】
aoshimashi.jpg

保険薬局勤務を経て、現在は病院薬剤師。NPO法人AHEADMAP共同代表。
普段は論文を読みながら医師に対して処方提案などを行っていますが、薬剤師によるEBMの実践とその普及に関する活動もしています。

公式ブログ:思想的、疫学的、医療について
Twitter:@syuichiao89

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