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便秘薬~うんちの調子が悪いんですけど、どんな薬がイイですか?- 前編

医療法人社団徳仁会中野病院 青島周一

2018年12月03日 10:00

患者さんに自信を持ってOTCをおすすめしたい!論文情報や患者さん対応など、薬剤師による薬剤師のためのOTC解説です。

薬の無料アイコン9.png今回のお話「どんな便秘薬がいい?」

  • 便秘と便秘"感"?
  • 便秘薬を販売する前に考慮すること
  • 食習慣の改善や運動で便秘は解消するもの?
  • どんな薬が考慮できる?
  • 便秘薬の有効性・安全性
  • 結局のところどうするか

今回出てくるOTCは・・・薬の無料アイコン9.png

錠剤ミルマグLX(エムジーファーマ)、3Aマグネシア(フジックス)、オイルデル(小林製薬)、コーラックファースト(大正製薬)、スルーラックプラス(エスエス製薬)、ウィズワンエル(ゼリア新薬)、ビオフェルミン便秘薬(ビオフェルミン製薬)、コーラック(大正製薬)、コーラック坐薬タイプ(大正製薬)、新レシカルボン坐剤(ゼリア新薬)、ケンエー浣腸(健栄製薬)


 あなたはドラックストアに勤務している薬剤師です。忙しい午前中の調剤業務を終え、一息ついていたところに、常連のお客さんがやってきました。

 「最近、うんちの調子が悪いんだけど、何かイイ便秘薬はない?」

 「便秘薬といっても、いろいろありますねぇ......」と答えたあなた。便秘薬が陳列してある棚に向かう途中、ふと思いました。"うんちの調子が悪い"ってどういうこと??

薬の無料アイコン9 (1).png便秘と便秘"感"?

 「なんとなく便秘気味だなぁ」という経験は、日常生活でも多いと思います。便秘の有病割合に関する、45研究(解析対象26万1,040人)の統合解析1)によれば、成人における便秘の有病割合は14%(95%CI 12~17%)と推定されており、特に女性で多い傾向が示されています。

 図1は平成28年国民生活基礎調査2)における、便秘の有訴者の割合を性別、年齢別で示したものです。便秘の有訴者は加齢とともに増加すること、そして男性よりも女性で多いことが分かります。

図1 性別、年齢別に見た便秘の有訴者の割合(%) 

図1_aoshimaOTC_06_benpi.png

(厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査より筆者作成)

 このように、便秘は、私たちにとって非常に身近な健康問題といえますが、"便秘気味" という言葉に象徴されるように、極めて曖昧な概念です。便秘といっても、「便が全く出ない状態」から「努力すれば出る状態」、「いつもより排便頻度が少ない状態」まで連続的につながっていて、いったいどこからが便秘なのか、その線引きに戸惑ってしまいます。

 実際、毎日排便がある人の9%、週に4~6回排便がある人の30.6%が便秘を訴えていたとの論文3)があり、便秘という言葉は、必ずしも排便がない状態だけを指しているわけではありません。一口に便秘といっても、そこに含まれる意味合いは、人それぞれで大きく異なっているわけです。

 便秘なのか、便秘"感"なのか、その線引きは曖昧ではありますけど、国際的にはRome Ⅳという診断基準4)によって以下のように定義されています。

機能性便秘の診断基準(Rome Ⅳ)

6ヵ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間で以下の基準を満たす

①次の2つ以上の症状を有する

  • a. 排便の25%以上にいきみがある
  • b. 排便の25%以上に兎糞状の便、もしくは硬便がある
  • c. 排便の25%以上に残便感がある
  • d. 排便の25%以上に直腸肛門の閉塞感、あるいは詰まった感じがある
  • e. 排便の25%以上に用手的に排便促進の対応をしている(摘便、骨盤底圧迫など)
  • f. 排便が週に3回未満である

②下剤を使わないのに軟便になることはまれ

③過敏性腸症候群の診断基準を満たさない

 この基準に従えば、排便が毎日あったとしても、便が出しにくく、残便感があり、下剤を使わなければ軟便症状はほとんどないという人では、機能性便秘に該当することになります。よくいわれる「3日以上排便がない」という条件のみで便秘薬の必要性を判断してしまうと、「そう言われても、なんか、すっきりせんのや......」と、お客さんの心情的にはモヤモヤしてしまうかもしれません。

薬の無料アイコン9 (1).png便秘薬を販売する前に考慮すること

 Rome Ⅳの基準を満たすからと言って、必ずしも便秘薬が必要なわけではありません。また、便秘症状の裏には重篤な疾患が隠れていることもあり、そもそも市販薬のみで対応できるケースなのかを慎重に考える必要があります。

 便秘は、大腸機能が異常を来すことで発症する機能性便秘と、消化管の狭窄や物理的通過障害が原因で発症する器質性便秘に分けることができます。Rome Ⅳで定められている便秘は機能性便秘に関するもので、一般的に便秘といった場合はこちらを指すことが多いでしょう。

 他方、器質性便秘は、その原因として大腸がん腸閉塞炎症性腸疾患などが挙げられ、こうしたケースでは、医療機関での精査が必須です。適切な受診勧奨が行えるよう、最低限以下のポイントに留意しておく必要があります(表1)

表1 便秘症状に潜む危険な状態を見分けるポイント

  • 1.急性発症ではないか?
  • 2.発熱、嘔吐、下痢などの症状はないか?
  • 3.体重が減少していないか?
  • 4.貧血や血便(黒色便)、下血はないか?
  • 5.これまで服用していた便秘薬に効果は感じられたか?
  • 6.消化器系のがんの家族歴はないか?
  • 7.便が狭小化(腸内の閉塞を示唆)していないか?
  • 8.進行性の増悪経過をたどっていないか?

(参考文献5より著者作成)

 また、便秘は薬剤により引き起こされることも少なくありません(表2)。抗うつ薬、抗精神病薬や過活動膀胱治療薬など、抗コリン作用を有する薬剤が代表的なものですが、カルシウム拮抗薬や利尿薬、鎮痛薬などでも注意が必要です。当然ながら、現在服用している薬剤情報の入手は必須です。

表2 便秘の原因となる薬剤

  • ・鎮痛薬:非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、オピオイド
  • ・抗コリン薬:抗精神病薬、過活動膀胱治療薬
  • ・抗パーキンソン病薬:アマンタジン、ブロモクリプチン、プラミペキソール
  • ・抗痙攣薬:ガバペンチン、フェニトイン、プレガバリン
  • ・抗うつ薬:三環系抗うつ薬、パロキセチン
  • ・止瀉薬:ロペラミド
  • ・制吐薬:ジメンヒドリナート、オンダンセトロン、プロクロルペラジン、プロメタジン、スコポラミン
  • ・抗ヒスタミン薬:ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン
  • ・降圧薬:αアドレナリン作動薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬(特にベラパミル)、利尿薬
  • ・鎮痙薬:ジサイクロミン
  • ・カチオン剤:アルミニウム、ビスマス、バリウム、カルシウム、鉄
  • ・化学療法剤:ビンクリスチン、シクロホスファミド
  • ・樹脂製剤:コレスチラミン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム

(参考文献5より一部改変)

 今回のお客さんの状態について、もう少し詳しく聞いてみると、排便は毎日あるとのことでした。ただ、少し硬便気味ということで、なんとなく残便感もあるそうです。軟便になることはほとんどなく、下痢や発熱、嘔吐もないことから、機能性便秘と考えてよいように思います。また、これまで大きな病気をしたことはなく、併用薬もありませんでした。

薬の無料アイコン9 (1).png食習慣の改善や運動で便秘は解消するもの?

 便秘の解消には、多めの水分補給や食物繊維の摂取など、食習慣の改善、あるいは適度な運動が大切とはよく聞きますよね。確かに機能性便秘と生活習慣には関連性があると考えられます。しかし、その有効性について調べてみると、僕らが想像しているほどの効果は期待できない可能性があります。

 高齢者において、水分摂取量が少ないことは、便秘発症の危険因子であることが報告6)されていますが、多めの水分を摂取しても、便秘が改善するかどうかは不明です7)

 また、歩行状態は便秘と関連性があるという報告(表1)8)や、身体活動量が高い女性では便秘が少ない〔オッズ比(OR) 0.76(95%CI 0.65~0.89)〕という報告9) もありますが、適度な運動によって便秘が改善するかどうかは不明確です10)

(表3)歩行状態と便秘のリスク

表3_aoshimaOTC_06_benpi.png(参考文献8より筆者作成)

 便秘に対する食物繊維の有効性について、5研究のメタ解析11)によれば、プラセボに比べて排便頻度をわずかに増加させますが〔平均差1.19回(95%CI 0.58~1.80)〕、便の硬さや治療の成功率、排便時疼痛に明確な差はないことが示されています。バランスの良い食習慣は便秘の改善に重要ですが、食物繊維そのものの有効性はそれほど大きなものではないようです。重度の便秘患者では、食物繊維摂取量を増加させると、逆に症状が悪化するという指摘もあります12)。既に食物繊維を積極的に摂取しているのだけれど、いまいち症状が改善しないという人では、その摂取を一度中止、もしくは減量することで、便秘症状が改善するかもしれません13)

 食事内容と便秘に関する横断調査14)によれば、チョコレート、バナナ、紅茶の摂取で便秘傾向がプルーンやコーヒーの摂取では軟便傾向が見られると報告されています。プルーンの便秘に対する有効性については、クロスオーバーランダム化比較試験15)が報告されています。便秘患者40例(平均年齢38歳)を対象としたこの研究では、乾燥プルーン50gの1日2回摂取と、サイリウム(オオバコの種子)11gの1日2回摂取が比較されました。その結果、週当たりの自発的排便回数はサイリウム摂取群で1.6回から2.8回へ、プルーン摂取群で1.8回から3.5回に増加しました。また、この排便頻度の増加は、サイリウム摂取群と比べて、プルーン摂取群で有意に多いという結果になっています(P=0.006)。

 

次のページでは「種類豊富!便秘に使うOTC薬」を解説。

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