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大迫研究に携わる薬剤師が予想する今後の高血圧治療

第37回日本社会薬学会 これからを担う若手薬剤師からの発信

2018年12月12日 08:40

 

昭和薬科大学 社会薬学研究室 原梓 氏

 岩手県の一般地域住民を対象に、家庭血圧を用いて高血圧・循環器疾患に関するデータを集積した大迫研究。仮面高血圧など、非診療下での血圧変動の重要性を示したその結果は、2014年の高血圧ガイドラインにおいて家庭血圧測定が重視されるきっかけとなった。大迫研究に携わる昭和薬科大学社会薬学研究室の原梓氏は、第37回日本社会薬学会のシンポジウム「これからを担う若手薬剤師からの発信」に登壇し、大迫研究などから得られた今後の高血圧・循環器疾患管理のキーワードを紹介した。

この記事のポイント

  • 常態を把握するには家庭血圧測定を
  • 仮面高血圧は高血圧性臓器障害のリスクを高める
  • 今後は医療者同士、医療者-患者がパートナーシップを築く医療が主流に

常態を把握するには家庭血圧測定を

 原氏の講演の第一のキーワードは、家庭血圧だ。外来で測定した血圧値が患者の常態を示すとは限らない。病院での血圧測定値は医師などの医療者を前にするプレッシャーが影響して高値を示すが、家庭では正常な測定値である場合、これを白衣高血圧と呼ぶ。一方、日中は降圧薬などによりコントロールできているものの夜間に効果が切れて血圧が上昇する例、一時的に禁煙するために病院で測定した喫煙者の血圧が平常よりも低く示される例など、外来での血圧が正常であっても家庭での計測値が高値を示す仮面高血圧という病態もある。こうした特定条件による影響を受けない、患者の日常の血圧を把握するには、一定の環境で同一の時間帯に同じような姿勢で行う測定が重要だ。すなわち、家庭血圧の測定である。

仮面高血圧は高血圧性臓器障害のリスクを高める

 家庭血圧測定の重要性を示した、代表的な研究がある。原氏が所属する研究室が関わる大迫研究だ。一般地域住民を対象に家庭血圧測定を行い、高血圧・循環器疾患に関するデータを集積した疫学研究である。岩手県大迫町(現:花巻市)で1986年に開始され、現在まで継続している。

 仮面高血圧群および白衣高血圧群の高血圧性臓器障害(無症候性脳血管障害※1)のリスクを、正常血圧群、持続性高血圧群と横断的に比較検討した2009年の研究では持続性高血圧群は、正常血圧群に対して無症候性脳血管障害を有するオッズ比が1.74と有意に高かった。仮面高血圧ではさらにオッズ比が高く2.31。一方で、白衣高血圧では1.03と、正常血圧群とほぼ同等であった(図)。

※1 無症候性脳血管障害は、無症候性の血管障害で、小さなラクナ梗塞が穿通枝領域に認められたり、白質病変を来しているもの。

図 血圧群と無症候性脳血管障害との関連

22464_PT_fig1.png

(Hara A, et al. J Hypertens 2009; 27: 1049-1955.)

 以後、多くの研究が家庭血圧と高血圧性臓器障害の密接な関係を明らかにし、2014年に改定された高血圧治療ガイドラインでは、家庭血圧が重視されることとなった。

今後は医療者同士、医療者-患者がパートナーシップを築く医療が主流に

 第二のキーワードはパートナーシップだ。

「今後の高血圧治療では、医療者同士の連携、さらに患者とのパートナーシップに重きを置かれるようになる」と原氏は指摘する。2019年の高血圧治療ガイドラインの改定では、医療スタッフと患者がパートナーシップを築いてコンコーダンス医療※2を続ける方法など、コメディカルの関わりが重視されるだろうという。既に運営が開始されている「高血圧・循環器病予防療養指導士」は、まさにこの点が期待されている。日本高血圧学会、日本循環器予防学会、日本動脈硬化学会共同のコメディカルの職種を超えた認定制度だ。

 ここまでの講演をまとめ、原氏は「家庭血圧測定などによる非医療環境下における血圧測定が重要であるが、そこでキーポイントとなるのは、患者が主体的に医療に取り組めるよう、医療者間、医療者-患者間のパートナーシップをより強固にすることである」と述べ、今後の高血圧診療に期待を寄せた。

※2 医療者が一方的に示した医療方針を患者が遵守するコンプライアンスに対し、コンコーダンス医療は患者が主体的に関わる姿勢を重視する。

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