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アフターピルOTC化は世界のスタンダード?

薬剤師こそ知っておきたい避妊最前線

2018年12月12日 15:00

アフターピルOTC化は世界のスタンダード?

 海外では、小さな棒状の避妊器具を腕に埋め込んだり、ホルモン薬を注射したりして、避妊する方法がある。避妊の年間失敗率は前者が0.05%、後者は0.3%1)で、2割程度は失敗するというコンドームより低い。これらは世界保健機関(WHO)が指定する必須医薬品モデルリストにも含まれている。

 しかし、日本では未承認だ。避妊に失敗したときのためのアフターピルも、2017年、厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、スイッチOTC化が見送られた。避妊といえば、失敗率の高いコンドーム以外を選びにくいという状況で、どう対応したらいいのか。

 医療従事者と協力して性教育プログラムの制作やアフターピルのOTC化キャンペーンなどを行うNPO法人ピルコンと、セクシャルヘルス&ライツ(性の健康と権利)の実現を目指すアドボカシー団体#なんでないのによるシンポジウム「THINK OF HININ ! 自分の体・ライフスタイルに合った避妊法を選ばせて!」で、世界の避妊やアフターピルの扱われ方、日本の現状、今後の課題などが発表された。

THINK OF HININ! 自分の体・ライフスタイルに合った避妊法を選ばせて!

日時:2018年10月7日
場所:中央区女性センター ブーケ21
登壇者:早乙女智子氏(産婦人科医・一般社団法人性と健康を考える女性専門家の会)、染矢明日香氏(NPO法人ピルコン代表)、福田和子氏(#なんでないの代表)/IUS体験者

◎この記事のポイント

  • 世界:長期的に高確率で避妊できる方法がスタンダード。アフターピルは入手が容易。正しい避妊に関する情報にアクセスしやすい
  • 日本:長期的に高確率で避妊できる方法が未承認。アフターピルは入手が困難。正しい避妊に関する情報にアクセスしにくい
  • 自分の人生を生きる上で、年齢、性別に関係なく性を考えることは重要
  • 若年からの性教育や、性に関する情報・避妊具などのツールと、アクセスを容易にすることが必要

世界の避妊事情:ピルやコンドームは選ばれなくなっている

 早乙女氏は「避妊について考えることは、自分の人生設計を考えることにつながる。若い女性に限らず、中高年の女性、男性、LGBT全ての人に関わる」と訴えた。ところが日本では、性差別の影響からか避妊法の選択肢が著しく制限されている。

 しかし、世界的に避妊は、“LARC(long acting reversible contraception:ラーク)”の時代だ。子宮内避妊システム(Intra Uterine System; IUS)やパッチ法、注射法など、長期的かつ確実に避妊ができ、妊娠を希望すればすぐにやめられる方法が主流になっている。避妊法としては、皮下埋め込み式であるインプラノン®や、IUSが第一選択で、飲み忘れの可能性があるピルや避妊成功率が低いコンドームは選ばれなくなってきている(1)。

表1. 米国における各避妊法による1年間の失敗率

kenhyaku_181212_hyo.png(%)
※赤字は日本未承認

James Trussell. Contraceptive failure in the United States. Contraception 2011; 83(5): 397-404
浅井宏友 避妊法(contraception)を基に作成〕

 また、日本では思いがけない妊娠をして中絶を選択する場合、一般的に妊娠週数が制限されている、パートナーのサインが必要、処置の費用は自費―である。10代の女性などには、特に費用面でも負担が大きい。また、海外では60カ国以上で中絶ピルが使われているが、日本では認可申請中で使用することができない。

 望まない妊娠をした場合の中絶理由として、20歳代以下では「未婚」が多いが、30歳代以降では、「人数的にこれ以上育てられない」といった理由が増えてくる。避妊は、既に出産経験のある人にとっても大切なことだ。「妊娠、避妊、中絶、出産は1人の女性に何度も起こりうる。妊娠、出産するとおめでとうと言われるが、困る人もいる。避妊や中絶を含め、同じようにフラットに扱われるべき問題」なのである。

 同氏は「ポイントはただ1つ。”my body, my choice”ということだ。避妊成功率が高くても、副作用リスクのある避妊法もある。正しい情報があって、医療機関がそういった情報や方法を提示でき、自分で納得して選べるということが非常に重要だ」と述べた。アフターピルのスイッチOTC化についても、薬剤師が声を上げて実現に尽力してほしいとした。

男性にも子供にも性教育は必要

 染矢氏は、自身の思いがけない妊娠・中絶体験から、避妊についての正しい情報の意義と、それを得られる機会の少なさを指摘。「避妊や中絶、いつ生むかは人生に関わる選択で、その人らしさや生きがいにつながる」と言う。しかし、避妊について語ると、特に男性からの偏見や無関心に直面する。男性にも性教育が重要だと述べた。

 会場からの「保護者に性の知識がなく、子供に教えられないことに危機感がある」という意見に対しては、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)等の調査から幼少期からの包括的な性教育によって子供・若者の性行動を慎重化させると分かっており、ピルコンでは中学生に10代の実態に即した性教育をするための署名活動や、海外の子供向け性教育教材の翻訳を進めていることを報告した。

スウェーデンの薬局ではアフターピルが1,000円

 福田氏は、世界で使われている避妊具とその避妊成功率を紹介した。避妊具の中には、WHOが定める必須医薬品モデルリストに含まれているものがあるが(2)、日本では承認されていないものが多く、費用も基本的に自己負担である。アフターピルも病院で処方箋をもらう必要があり、費用も1万5,000円程度、2万円を超えることもあり、休日だとさらに上乗せされるケースも少なくない。

表2. WHO指定必須医薬品モデルリストに含まれる避妊具

181007_hyo2.jpg※赤枠は日本未承認
(#なんでないの提供)

 一方、海外では避妊具は安価だったり、若年層は無料という政策を取っている国もある。同氏が留学していたスウェーデンでは、病院にピルをもらいに行くと他の避妊法も紹介され、自分の体、ライフスタイルに合ったものを選ぶようにアドバイスされたという。また、スウェーデンや英国、カナダ、フランスなどでは、アフターピルも薬局で1,000円程度で販売されていたり、学校の保健室でもらえたりする。保護者に知られずに、避妊や中絶などの相談に乗ってくれる若い世代向けの施設もあり、普段から性について考える機会が豊富だった。

 こういったことから、世界では避妊する人の8割程度が成功率90%以上の避妊法を選択しているのに対し、日本ではコンドームの比率が非常に高い()。コンドームは避妊成功率が低い上に、男性の協力がないと使えないという問題があり、女性が自分の体に対して主導権を取りにくい。確実な避妊法が選べない日本では、避妊できなかったときの”最後の砦”であるアフターピルでさえ、非常にアクセスしにくいのだ。

図. 避妊している人の中での避妊法選択率の比較

22402_fig.png※永久的な避妊手術や、避妊としては不確実性の高いリズム法、腟外射精などは除く
WHO, Trends in Contraceptive Use Worldwide, 2015を基に#なんでないの作成)

 同氏は、「#なんでないの」でアフターピルを安価に薬局で買えるよう署名活動を行っていることを紹介、「貧困に陥っている若者が少なくない。どれだけの人が高価なアフターピルを買えるのか。知識や情報が得られず、避妊に失敗したら学校を追い出される。そういった状況を変えたい」と熱く訴えた。

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